映画「マグノリア」あらすじと感想【ネタバレあり】ラストがキモくてもう観れない
1999年公開。
トム・クルーズ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジュリアン・ムーアら豪華キャストたちが織りなす群像劇です。
人生の終末期を迎えているふたりの人物を中心に、彼らを取り巻く人々もまたそれぞれのドラマを持っていて、各人の心情を丁寧に綴っていくヒューマンドラマに引き込まれます。
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あらすじ
テレビ番組の制作プロダクション社長だったアールは、死の床に臥せっている。
彼の現在の妻リンダは、処方箋を持って薬局に出かけていった。
弱っていく夫に何もできない上、過去の不貞行為が罪悪感としてのしかかり、彼女自身も精神的にかなり参っている。
介護人のフィルはアールから、前妻との息子・ジャックの行方を探して欲しい、と頼まれた。
ジャックはいま名前を変え、フランク・マーキーという男性向けカリスマ性愛コンサルタントになっていた。
セミナーの昼休憩を利用してテレビ番組のインタビューを受けている。
フィルはフランクに電話がつながるよう八方手を尽くす。
一方、アールが制作した、人気の長寿クイズ番組の司会者ジミーもまた、骨癌で余命いくばくもなかった。
彼に反発して家を出た娘クローディアに会いに行くが、激しく拒絶されて落ち込んでしまう。
クローディアは薬物依存症になっており、ジミーの来訪によりまた情緒不安定になる。
喚き散らし、大音量で音楽をかけながら鼻から薬物を摂取しているところで、アパートの他の住人からの通報を受けた警察官ジムがやってくる。
真面目で信心深いジムは、町で起こるさまざまな現場に顔を出している。
何か悩みを抱えていそうなクローディアに、いつでも相談に乗らせてほしい、と申し出た。
病を抱えながらもジミーは仕事を続ける。
司会を務めるクイズ番組は、小学生の天才児童たちのチームに大人のチームが挑戦するというものだ。
その番組で初代チャンピオンになった天才クイズ少年のドニーは、今はすっかり大人になり、そして凡人になって、勤めていた電器店を職務怠慢によりクビになってしまった。
現在はスタンリーという少年が、新たなチャンピオンの座につこうとしている。
父親をはじめ、同じチームメイトにも期待されていた。
アールやフィル、ジミーの妻ローズ、ドニー、クローディアらが注視するなか生放送は始まり、物語は本格的に動き出す。
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感想
本筋が始まる前の冒頭部分で、世に有名な「嘘のような本当の話」を三つ紹介しています。
直接ストーリーに絡んではいませんが、ラストで起こる出来事に、「こんな奇妙なことだって現実には起こりうるだろう?」とドヤ顔で訊かれているような、そんな説得力を持たせるスパイスになっていました。
でもこのラストの出来事…
イヤアアアーーー!! キモいーーー!!
こんなことが現実で起こったら、ガチで泣き叫びます私 (ノД`)・゜・。
クビになったドニーは、バーのカウンターで周囲の客やバーテンに、自分は初代チャンピオンの天才クイズ少年だったんだ、とグチをこぼします。
しかし周りは「それがどうした」という反応。
今だって知識の豊富さは群を抜いている。
両親が搾取さえしなければ… と悔しさを滲ませ、ドニーは「過去は捨てても、追いかけてくるんだからな!」と周りに警告してバーから去っていきます。
折しもフランクは、自分と母を捨てて家を出た父・アールを憎んでおり、彼と関わりのある過去を捨てたつもりでした。
過去に囚われすぎると前進できない、と言い放つフランクに、インタビュアーは「過去を紐解くことで自分という人間を知るわ」と返します。
インタビュアーは実は事前にフランクの過去を調べ上げていました。
思いがけず素性を暴かれて、フランクは激昂します。
辛かった出来事や、胸が痛むような後悔。
そういったものを全部捨てて心機一転リフレッシュ! と出来ればいいのですが、こうした過去が自分を形成していっている以上、なかなかそうもいきません。
英語には「現在完了形」という時制があります。
「新・英語をもう一度最初から」で英文法やり直しpart2 “完了形と5文型”
過去の出来事が現在に影響している、ということを表せる、日本語にはない感覚なのですが (そのためメチャクチャ苦手です) 今があるのは過去があるから、という概念が英語圏の文法上にも表れているのだと思います。
本人は忘れていたり、大したことない、と思っていた過去の所業が、登場人物たちの肩に重くのしかかってきます。
過去を捨てることは可能です。
しかし忘れた頃にその時のツケを払うタイミングがやってくることが多いです。
逃げるより、向き合ったほうがラクかもしれません。
CM開け直前にトイレに行きたい、と訴えるけれど許されなかったスタンリーは、その後のクイズにまったく答えられなくなります。
モニタールームにいる父親も、一緒に解答席に座るチームメイトもヤキモキしながら「どうしたんだよ」と、スタンリーに怒りを向けます。
チームという形をとっていますが、実際にクイズに答えるのはスタンリーだけでした。
彼らはスタンリーひとりに負担を全部押し付けていたのです。
そして栄光のおこぼれをもらう。父親も同じです。
我慢できずに失禁してしまい、責め立てられて、スタンリーはこれまで溜め込んでいた不満を一気にまくしたてました。
なぜいつも自分ばかりにやらせるんだ、と喚いてスタジオから飛び出していきます。
能力がある人、もしくは気弱な人に面倒ごとを押し付けるズルい人間は結構います。
手伝おうともせず高みの見物を気取る態度は、一生懸命動いている側からするとかなり腹立たしいですね。
面倒に思うことでも、自分より上手くできる人がいても、全面的にひとりに任せるのではなく、サポートを申し出て協力したほうがいいんじゃないかと思います。
情けは人の為ならず。
人を助けることは自分のためになります。
負担は皆で分散したほうがいいでしょう。
この作品は過去の所業についての “許し” がテーマに含まれています。
病気の前妻と息子を捨てたアール。
愛もなくアールと結婚して不貞行為を働いたリンダ。
クローディアを傷つけたジミー。
彼らの過ちは時間を超えて彼らに罰を与えます。
罪悪感を真っ向から受け止めて反省したアールとリンダは、苦悩を乗り越えて許されました。
アールはフランクから。リンダは周囲と自分自身から。
しかし罪悪感から目をそらし、クローディアを傷つけたことを認めないジミーは、妻からもクローディアからも見捨てられます。死を目前にして。
人を許すことは大切、と説かれます。
しかし許される側が何も反省していないのでは、何に対して許せばいいのか分かりません。
また同じ過ちを繰り返すと予想される人物そのものを許すのは、ただの甘やかしです。
許さなくていいと思います。
ただ、相手を許さない自分、というのに罪悪感を持つ場合は、許せないと思える自分を許してやってください。
精神的にラクになるはずです。
視点人物が多いためにわりとゴチャゴチャした印象なのですが、テンポ良く見られます。
そして後半になるにつれてテーマの深淵さが見えてきたところで、不意打ちで起こる摩訶不思議なオカルト現象に翻弄されて、それぞれに見合ったラストへと向かっていく怒涛の展開が待っています。
たった一日で人生が変わった人々の、不思議なようでいて普遍的な物語。
「因果応報」の教訓めいたメッセージが、エンタメ性の中に含まれているので押しつけがましさは感じません。
かなりユニークな作品です。
途中で「これもう一回観ようかな」と思いました。けど…
面白かったのですが… ですが…
あのオチはマジで生理的に無理―――!!
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