映画「異邦人」あらすじと感想【ネタバレあり】本当に太陽が眩しかったからだった
アルベール・カミュの有名小説を、ルキノ・ヴィスコンティ監督で映画化。
マルチェロ・マストロヤンニが主人公を演じ、アンナ・カリーナがヒロインを務めました。
他に「かくも長き不在」のジョルジュ・ウィルソンなどが出演しています。
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あらすじ
第二次大戦前。
アルジェの船舶会社で事務員をしているアルチュール・ムルソーは、80キロ離れた都市の養老院に入所していた母が亡くなったという電報を受け、現地に向かう。
養老院に着き、職員に母の棺が安置されている部屋に案内された。
死に顔を見ることは拒否し、一晩安置室で静かに過ごす。
翌日の葬儀には、母と仲が良かったという老紳士も埋葬についてきた。
母が亡くなったことに特別の感慨を持っていないムルソーは、葬儀後には彼女のマリーとのデートを楽しんだ。
その夜、帰宅途中で同じアパートに住むレイモンと会い、彼の部屋で一緒に夕食をとることに。
つきあっているアラブ人の女にヒモ呼ばわりされて殴ってやった、という話を聞かされた。
そして、その女の兄から殴られたのだそうだ。
会社に行くと、社長に呼ばれた。
フランスにも支店を構える予定であり、その担当者をムルソーに任せるというのだ。
気乗りはしないが積極的に断る気もない。
どこか無気力なムルソーは、マリーからの逆プロポーズにも「どちらでもいい」と曖昧な返事をするばかりである。
マリーを部屋に泊めた朝、レイモンの怒鳴り声と女の泣き声がアパート中に響き渡った。
警察の介入で事なきを得たが、この一件は女の兄の耳にも当然入る。
その日曜日。
レイモンとマリーと共に海岸で休暇を楽しんでいると、アラブ人たちの集団が彼らを見ていた。
そのうちの一人はレイモンの情婦の兄である。
ナイフをちらつかせるアラブ人にレイモンが銃で対抗しようとしたため、ムルソーはレイモンから銃を取り上げた。
そのため腕を切りつけられたレイモンをバンガローに連れていき、再び現場に戻ったムルソーは、アラブ人が持っていたナイフの煌めきで目が見えなくなり、反射的に銃を連射してアラブ人を殺してしまう。
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感想
原作を読んだことがないのですが「太陽が眩しいから人を殺した」という不条理な一節はなぜか知っていました。
カフカの「変身」と並んで不条理な小説、というのが定説になっていると思いますが、はじめてストーリーを見てみると、本当に太陽が眩しかったせいなんですね…
ムルソーの元々の気質が無気力な人な上、うだるような暑さはさらに気力を削ぎました。
母が死んでも涙も出ない。汗は出るけど。
悲しいという気持ちも起こらず、すぐに海水浴に行ってしまったのも、冷淡な性格以上に暑かったから、というのもあったのでは? とも思います。
ムルソーの水着が女子のスクール水着のようだったのが気になりましたが…
うん、昔は男性の水着もああいうのだったんですよね。知ってます。
でもムルソー以外の男性たちは普通の海パンだったので、浮いてました (;^ω^)
それはともかく、同じアパートの老人が犬を虐待していようと、レイモンの情婦が殴られようと、基本無関心。
彼の無関心は、自分自身の生死についてすらそうでした。
う~~~ん、なんだろ…
今流行りの「やれやれ系主人公」ってヤツですか。
時代を先取りしているのか、不変の存在なのか、とりあえず見ていて何の魅力も感じない。
顔はいいけど、こんな態度の人はちょっとね…。
やっぱ表情が豊かなほうがキャラクターとしては面白い。
そんな魅力のないムルソーですが、死刑を前にして司祭から神の赦しについて説かれると、感情をむき出しにして司祭を追い出しました。
やれやれ系はお説教キライそうだもんね。
自分の殻・自分の考えの中に閉じこもって、それでいて達観したつもりになっている。
その末路は悲惨なんだけど、本人は自分の境遇を悲惨に思っていなさそうな感じがドライで、悲壮感は漂いません。
ただ、太陽に反射したナイフの光が眩しくて銃を撃ってしまったムルソーの死刑。
きっかけはそれでも、そのドライな性格からくる行動の積み重ねが彼を処刑台に送ってしまったんだな、と感じました。
自分にも他人にも無関心。そして夏の暑さ。
性格と環境の要因が人生を決定づける、というユニークな視点で、面白いストーリーでした。
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