映画「山猫」あらすじと感想【ネタバレあり】新しい価値観を受け入れられない貴族たち
イタリア統一戦争を背景に、新興貴族の台頭で終焉期を迎える由緒ある貴族の姿を描いたルキノ・ヴィスコンティ監督の代表作になります。
主演はバート・ランカスター。
アラン・ドロンとクラウディア・カルディナーレが若い貴族を演じ、イタリアの国民的英雄ガリバルディを、マカロニウエスタンで人気を博したジュリアーノ・ジェンマが演じました。
音楽は「道」や「太陽がいっぱい」のニーノ・ロータです。
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あらすじ
由緒正しい貴族の一族としてシチリア島に居を構えているサリーナ公爵ファブリツィオの庭でひとりの兵士が死んでいた。
その報告と同時に、ガリバルディ率いる義勇軍の上陸を恐れた友人が家族ともどもイギリスに亡命する、という手紙を受け取る。
ファブリツィオは「臆病者が」と鼻で笑い、その夜はピローネ神父を伴ってパレルモに住む愛人の元に向かった。
翌朝、甥のタンクレディがやってきて、義勇軍に参加するという。
ファブリツィオは反対するが、変革を求める若者の勢いを止めることは出来ず、資金を持たせて送り出した。
タンクレディに思いを寄せているファブリツィオの娘コンチェッタも涙ながらに彼を見送る。
戦地では激しい争いが勃発しており、タンクレディは負傷して戻ってくる。
大変革など起こるはずない、と考えているファブリツィオの気持ちには余裕があった。
コンチェッタの恋心に気づいている彼は、タンクレディとの結婚を打算的な意味で反対している。
内気な彼女には、出世街道を邁進するだろうタンクレディとの生活は合わない。
それにお金の問題もある。
タンクレディは金持ちの娘と結婚するべきだと思っている。
その晩、晩餐会に招待した市長ドン・カロージェロの娘アンジェリカに、タンクレディは一目惚れした。
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感想
3時間の大作ですが、ラスト1時間のほとんどは舞踏会のシーンになっています。
その絢爛豪華さたるや…
ヴィスコンティの「本物志向」が全面に出ていていろんなところに目を奪われます。
だけど時間が経ってくると、そのうち眠気も襲ってきてウトウトしてしまいました (;´∀`)
登場人物たちも同じようで、最初のうちは挨拶を交わしたりダンスに興じたり料理に舌鼓を打ったり (お皿持って歩きながら食べるのにビックリした。当時の貴族社会では食べ歩きってマナー違反じゃないんだ) 活発に動いていましたが、次第に座ったりカップルだけで喋っていたり静かになっていきます。
それでも若い人たちは手繋ぎで踊ったりしてまだまだ元気。
老いた人たちとの対比を見せつけます。
若いけれど保守的なコンチェッタは、化粧直しをしながら週3回も舞踏会があることに不満を持っています。
アンジェリカは逆に舞踏会が大好きでもっと出たい。
ふたりの女性の気質の違いが、古い価値観が廃れ新しい波が来ていることを表わしています。
どんなに革命が激しくなっても自分たちの立場や生活は変わらない。
そう思っていたファブリツィオも、もう自分は古い人間でありこの先は変革を受け入れなければいけないことを悟りました。
老兵はただ消え去るのみ という言葉を思い出します。
新しい価値観を受け入れることと順応することは違うのだと思いました。
それが老いの辛いところです。
望むと望まざるとに関わらず状況が変化する。
柔軟に対応できる自信がないファブリツィオは、この先をタンクレディたち若い人たちに託し、ひとり薄暗い路地に入っていくのでした。
どこに向かったのか観客には分かりません。
ただ自分たち貴族の時代が終わったことを悟り、寂しい背中を向けるだけです。
絢爛さの中に突き刺さる寂しさ。
ヴィスコンティの人間ドラマらしい映画だと思いました。
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