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映画「裁かるるジャンヌ」あらすじと感想【ネタバレあり】普通の人間である聖女の受難

2023/05/11
 
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駆け出しライターのポムりんごと申します。 最近はめったに雪が積もらなくなった雪国在住。 映画や海外ドラマの視聴が趣味で、それが高じて英語学習もやっています。 英検準一級。TOEIC780。 漫画やゲームも好きな完全内向型。 家にこもってわがまま(セルフィッシュ)三昧に日々過ごしてます。

1928年公開のサイレント映画です。

歴史上有名なジャンヌ・ダルク裁判。

実際の裁判記録を元に、捕縛されてから火刑に至るまでのジャンヌの受難を、デンマークの巨匠カール・テオドア・ドライヤー監督が描きだしていきます。

ジャンヌを演じるのは舞台女優のルネ・ファルコネッティ

映画出演は生涯でこれ一作のみだった貴重な作品です。

 

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あらすじ

1431年。

ルーアンにおいてジャンヌ・ダルクの異端審問が行われた。

男装のまま足枷をつけられてぎこちなく連行されてきたジャンヌは、複数人の審問官の前に座らされる。

元が農夫の娘であり、文盲で自分の年齢もはっきりとは分からず「19歳、だと思う」と答えていた。

大天使ミカエルが自分の前に現れて「フランスを救え」と言ったから戦争に身を投じた。

だから自分は神の子である、というジャンヌの主張を、審問官たちは厳しく追及する。

司教の職につき、かつ親イングランドの彼らにとってジャンヌは教会の敵だった。

メンツにかけても彼女を “嘘つき” にしなければいけない。

自分の信仰を頑なに守るジャンヌと審問官側の主張は、どこまで行っても平行線でしかなかった。

このままでは埒が明かないと判断した審問官は、彼女を罠にかけることにする。

シャルル7世の手紙を偽造してジャンヌに心の安寧を与え、彼女に同情的な審問官を傍につけさせたのだ。

そしてその上で彼女に、神を冒涜している罪を認めるように誘導しようとする。

男装していることに対しても責め立てた。

しかしジャンヌは、どれだけ責められようと蔑まれようと、決して屈しなかった。

業を煮やした審問官は、彼女を拷問室に連れてきた。

ズラリと揃った拷問道具の数々にジャンヌは戦慄する。

怯えるジャンヌに、審問官は「お前の前に現れたのは神ではなく悪魔だった」と主張した。

そして、悪魔に唆されていたことを認める宣誓書に署名をするようにとジャンヌに迫る。

自分は悪魔の手先ではない。神に遣わされた選ばれた人間だ。

そう信じるジャンヌだが、これ見よがしに稼働される拷問具への恐怖と心身の衰弱からその場で気絶してしまった。

こんなところでは死なせない。

ジャンヌを処刑するか屈服させるかの二択しか認めない審問官たちは、医者を呼んで瀉血を行なった。

意識を取り戻したジャンヌは、自分が死を怖がっていることを自覚する。

そして火刑台の前に引き出され、再度宣誓書への署名を強要された。

署名しなければ今すぐ処刑される。

死への恐怖からジャンヌは署名してしまった。

彼女は終身禁固刑に減刑された。

しかし髪を刈られ、その切り落とされた髪と一緒に、ジャンヌが作った “光輪に見立てた頭飾り” が塵取りに入れられたのを見て、ジャンヌは信仰を裏切った自分を恥じて審問官たちを呼び戻した。

 

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感想

ほぼ全編、顔のアップで綴られていきます。

だから表情の動きは少し大げさなくらいになっていて、無声映画なこともあってパントマイムのようにも見えました。

怒鳴りつけ、嘲笑し、軽蔑の眼差しをジャンヌに向ける審問官たちの顔・顔・顔…

物理的な距離があるはずなのに、ジャンヌを追い詰める圧がもの凄く感じられます。

対して、ジャンヌはこの老獪たちに一人で対峙しなければならず、その怯えや戸惑い、そして絶望の表情を丹念に観客に訴えます。

演じるファルコネッティの泣く表情の美しさったら…!

泣くときはワンカットにつき涙一筋、という感じで抑制しているんですね。

もしくは流さずに両目に溜めておく。

泣きじゃくらず、鼻もすすらない。決して取り乱さない。

この抑制が、ジャンヌの芯の強さを物語っています。

見事な演出、カメラワークと演技です。

 

演出といえば、審問官側が偽造した「シャルル7世からの手紙」を渡される前。

床に映った窓枠の影が十字架の形になっていて、そこにジャンヌは神が傍にいると感じて安堵したように微笑みます。

自分に同情的な素振りを見せる司祭が、その影を踏むシーン。

それを見たジャンヌは真顔に戻ります。

彼はジャンヌの味方ではない、とジャンヌにも観客にも教えているんですね。

映画的で上手い演出だと思います。

 

ラストは歴史の通りです。

自分の死も神の思し召し、と受け入れつつも死ぬことの恐怖から逃れられたわけではありません。

柱に縛り付けられる前、手渡された十字架を縋りつくように抱きしめます。

重圧に押しつぶされそうになる、普通の人間としてのジャンヌ・ダルクがそこに映し出されます。

彼女は自分の処刑をキリストのように達観していたのではなく、諦観していたのですね。

そこに「生まれながらの神の子」「信仰に目覚めた普通の人間」の違いがあるのでしょう。

柱に縛り付けられ、炎に巻かれながら見る最期の光景。

掲げられた十字架。群れをなして飛ぶ鳥。泣きながら見守る信奉者たち。

そして襲い来る煙と炎に、清濁併せ吞むこの世の姿が縮図として見えたのかもしれません

なんというか、もう観ている途中から「なんかすごい映画だなぁ」という感想しか浮かばないんですよね。

音楽の壮大さから脚本から演技から、何から何まで隙がない

ジャンヌの境遇に胸が潰されそうになりました。

観終わったあと脱力しながら色々考え込んでしまって疲れたので (バカ) 、すぐに気持ちを切り替えられるものを用意してから鑑賞することをオススメします。

(なんだこの締め方)



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