映画「画家と庭師とカンパーニュ」あらすじと感想【ネタバレあり】
「クリクリのいた夏」「ピエロの赤い鼻」など、田舎を舞台にした男同士の友情を得意としているジャン・ベッケル監督の作品です。
今回友情を織りなすのはダニエル・オートゥイユと、「間奏曲はパリで」のジャン=ピエール・ダルッサン。
長いキャリアを持つ壮年の俳優同士だからこそ醸し出せる雰囲気があります。
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あらすじ
パリで画家をしていた男は、子供の頃に両親と暮らしていた田舎の家に戻ってきた。
薬局を営んでいた両親はもうすでに他界している。
これから腰を据えて暮らそうと思い、荒れ果てた庭を整備して菜園を作るために地元に住む庭師を雇った。
やってきた庭師は、偶然にも子供の頃の同級生だった。
先生の誕生日ケーキに爆竹を仕掛けるイタズラを一緒にやった仲だ。
その件で画家は退学となり、その後寄宿学校に入れられて美大に進み現在画家として生計を立てている。
庭師は、元々中学卒業後は働きに出る身だったので退学は免れ、国鉄に定年まで勤務。
退職後に庭師をするようになっていた。
ずっと地元に住んでいた庭師から、同級生たちや近所の人たちの近況を画家は教えてもらう。
互いの結婚生活の話にもなった。
庭師は長年連れ添っている妻とニースに旅行に行ったことや、娘婿たちが少々問題児なことを話して聞かせる。
そして画家は、モデルとの浮気を何度もしていることが原因で、妻から離婚を切り出されて別居中だった。
3日ほど妻との話し合いのためパリに戻る、という。
パリに戻った画家は、妻に離婚を考え直すように頼むが彼女の気持ちは変わらない。
意気消沈しながら盛況の美術展に行くと、愛人のマグダが他の男と親しそうにしていた。
嫉妬した画家は男をやり込めてマグダを連れ出し、彼女を車に乗せたまま田舎に帰ってくる。
ほんの3日で、荒れ果てていた庭は庭師の手によって見違えるように整えられていた。
いくつもの野菜の種が植えられた菜園に、画家の気持ちも昂揚する。
庭師には定期的に来てもらい、庭の手入れの一切をお願いした。
彼の娘婿が無職になってしまったときは、画家が伝手を辿って仕事を紹介して感謝される。
ふたりの友情は深まるが、それでも画家はいま手掛けている絵のことで悩んでいた。
そのため庭師にも当たり散らしてしまう。
そしてマグダと入れ違いに、娘のキャロルがやってくるが、彼女が自分と同年代の男を連れてきて「結婚したい」と言い出したことで大喧嘩になってしまった。
そんな自分を持て余して落ち込む画家だったが、庭師との会話で気持ちを立て直した。
ある日作業中だった庭師が猛烈な腹痛に見舞われて倒れてしまう。
画家は彼をパリの病院に連れていくが、すでに手の施しようがない状態だった。
感想
庭師が倒れたところで…
ちょ、はよ救急車呼びなさいよー! とか
自宅じゃなくて病院つれてけよー! とか
カフェなんか行ってないで病院に行けってばー! とか
画家の手際の悪さにヤキモキしちゃいました。
まあカフェに行っていたのは、病院の予約が取れたのが午後からだから、というのが後で分かって「ああそう」とホッとしたのですが…
でも時間があるからって、その後病人を美術館に連れていくってどうなのよ?
案の定途中で具合悪くなって絵どころじゃない。
あんなにも顔が真っ青になっている人を病院以外の場所に連れていくなんて、怖くて私には出来ん。
とまあ、せっかく旧交を温めて親友同士になったのにひとりが死を迎える、という切ない物語です。
切ないんだけれど、綺麗に整えられた庭や温かみのある家の内装など、フランスの田舎の穏やかな雰囲気が切なさを緩和させます。
観ている方としても、ウルッとはくるんだけれど号泣するような感じではなく、なんというか、すんなりと“死”を受け入れるんですね。
当事者である庭師も自分の死が分かっていて、生を満喫しようとするし。
残される画家も、庭師に頼まれていた「庭師のすきなもの」の絵を描くことでスランプを脱出して個展を成功させました。
有名人でもなく、特に波風のない平凡な人生を実直に歩んできた庭師の死から。
どんな人でも生きていた証があり、誰かに影響を与え、遺したものがあるのだと伝えている映画です。
好きなものがたくさんあることも素敵なことだと教えています。
綺麗な映像と相まって、心が温かくなる良作でした。
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