映画「トリコロール / 赤の愛」あらすじと感想【ネタバレあり】
三部作のラストは「博愛」の赤です。
この作品がキエシロフスキー監督の遺作になりました。
ヒロインは「ふたりのベロニカ」でもキエシロフスキー監督に起用されたイレーヌ・ジャコブ。
彼女と交流を持つ年配男性をジャン ＝ ルイ・トランティニャンが演じます。
その他「趣味の問題」のジャン ＝ ピエール・ロリ、「愛してる、愛してない…」のサミュエル・ル・ビアンなども出ていました。
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あらすじ
モデル業もしている大学生のヴァランティーヌ。
恋人のミシェルとは電話でよく話すが、海外を回っている彼なので滅多に会えずにいた。
アパートの窓からは、この近くに住む法科大生オーギュストが恋人と仲睦まじそうにしている。
その日もヴァランティーヌはポスター用の写真撮影とサロンでのショーを終えて車で帰宅する。
そのとき、一匹の犬を轢いてしまい、首輪に書いてあった住所まで届けに行った。
飼い主は近所に住む偏屈な老人ジョセフだった。
犬はいらないから好きにしろ、と言われ、仕方なく動物病院に運び、ヴァランティーヌが飼うことにした。
名前は首輪に書いてあったリタをそのまま使った。
怪我が治り散歩に連れ出すとリタは駆け出してしまい、ヴァランティーヌが追うとそこはジョセフの家だった。
そして彼の家に入ると、誰かの会話音声が聞こえてくる。
ジョセフは隣の家の電話を盗聴していることを白状した。
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感想
博愛主義者で正義感もあるヴァランティーヌは、この盗聴行為を咎めます。
そしてジョセフに挑発される形で、隣家の男性に彼の盗聴を伝えに行くことにしました。
電話で熱烈な愛の言葉を紡ぐ男性。
しかし彼には妻と娘がいました。
気の良さそうな妻は夫の浮気にまったく気づいていない様子ですが、父の電話を子機で盗聴している娘は気づいているよう。
だけど母には何も言っていないのを察して、ヴァランティーヌは何も伝えずにジョセフの家に戻ります。
元判事であるジョセフは、盗聴が違法行為であることはちゃんと理解していました。
それでも人間不信を拗らせた彼は、盗聴を通して「人は裏切るもの」だというのを確信するためにこの行為を続けているのだと思います。
それを彼女から「卑劣だわ」と言われ、警察に手紙を書きました。
本当は止めたかった行為なのかもしれません。
彼が人間不信になった原因は、まだ法科大生だった頃に付き合っていた彼女に浮気されたことでした。
ジョセフとまったく同じ体験をオーギュストが現在味わっている妙。
しかし、二人とも、犬捨てんなや
傷ついたからってペットに八つ当たりすな！
最後までちゃんと面倒見ろ！
特にオーギュストは、甘えてきたのを振り払ったり、道路の標識にリードを繋げて走り去ったり (#￣皿￣)
……ちゃんと戻ってきたみたいで良かったけど。
ラストでドーバー海峡を渡る船に乗り込むとき、このオーギュストの飼い犬、彼の首にしっかりと腕を巻き付けていて、本当にすごく可愛いんですよ。
よくこんな愛らしい子を捨てようとしたな、だからフラれるんだよ、と思ってしまいました。
この船にはヴァランティーヌも乗っています。
そして前日の嵐の影響で転覆。
彼女を心配したジョセフはテレビにかぶりついて生存者情報を確認しました。
助かった人たちは…
「青の愛」の主人公ジュリーと、オリヴィエ。
「白の愛」のカロル、ドミニク。
そしてヴァランティーヌとオーギュストです。
青と白のみなさん、なんで船に乗ってたんですか (;^ω^)
シリーズ通した共通項は他にもあって、瓶を捨てるリサイクルボックスが街中にあり、全編必ず腰の曲がったお年寄りが利用します。
瓶を入れる穴は高い位置にあり、どの人たちも入れるのが大変そうなのですが…
「青」ではジュリーは見てるだけ (助ける助けないは自由意志)
「白」のカロルは気づかない (老いも若きも人類みな平等。年寄りだからと特に気にかけてはいない)
「赤」になってやっとヴァランティーヌが助けてあげてました (博愛主義者)
それぞれのテーマに沿った人物像と合っている演出です。
ちょっと難しいな、と思うところも多々ありましたが、三部作全部通して観ることを勧めたい作品でした。
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