映画「裏窓」あらすじと感想【ネタバレあり】窓から見えるさまざまな人間模様
1955年公開のサスペンス作品。
サスペンス映画の帝王・ヒッチコック監督がお気に入りの女優グレース・ケリーをヒロインに起用した三作のうちの1篇です。
(これでヒッチコック × ケリーのコンビは全部書いたと思います)
主演はジェームズ・ステュアート。
この作品後も「知りすぎていた男」や「めまい」などでもヒッチコック監督と組むベテラン俳優です。
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あらすじ
片足を骨折して自宅待機になっているカメラマンのジェフは、退屈しのぎに向かいのアパートに住む人たちを窓際で観察して楽しんでいた。
セクシーな姿で踊るバレエダンサーの女性。
毎日地道にピアノに向き合う音楽家。
なぜか非常階段で睡眠をとる夫婦…
いろんな人たちがさまざまな生活を送っている様子を見るのは面白かった。
その中に、いかにも不幸そうな夫婦がいた。
病気がちなのか、滅多にベッドから出ない妻は毎日夫を怒鳴り散らしていた。
世話をする夫も、浮気しているようだし、部屋から逃げ出したりで、かなり問題を抱えている様子が見て取れる。
他の住人同様この夫婦にもジェフは注目していた。
ある土砂降りの夜、窓際でうたた寝をしていたジェフは目を覚まし、アパートに目を向けた。
深夜3時。
ほとんどの部屋はカーテンが閉められ消灯している。
そんな中、件の夫婦の夫がトランクを持って外出。
戻ってきて再び外出、というのを3回繰り返していた。
そして妻がいなくなっている。
不可解な出来事にジェフは、夫が妻を殺害したのだと思い至る。
それ以来ジェフは夫の部屋を注視し、刑事のドイル・恋人のリザ・介護人のステラらを巻き込んで、動けない体のまま真相に近づいていく。
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感想
ジェフの悩みのひとつは恋人のリザにあります。
リザはジェフとの結婚を望んでいるのですが、ジェフにはその気がありません。
ジェフ自身、リザが自分にはもったいないくらい完ぺきな女性であることは分かっているのですが、世界中を駆け巡るカメラマンの仕事を手放す気にはなれないのです。
正直エレガントで上品なリザが自分についてきてくれるとは思えない。
彼女との結婚は刺激的な生活を捨て、退屈な日常を送るのに甘んじること、とジェフは考えているのです。
彼女にはもっと相応しい男性がいるはずだから、きっぱり別れたほうが賢明かも、とステラに相談すると、気が合うのならゴチャゴチャ考えずに一緒になればいいのに、と窘められます。
ステラも結婚では当初から今でも適応できない部分が夫にはあるけれど、それでも愛しているから長続きしているのです。
ジェフは結婚できない理由をいろいろ並び立てますが、「結婚には知性なんてジャマー!」と一刀両断。
直感派のステラと対比すると、慎重すぎて言い訳に走るジェフはどうにも臆病者に見えますね。
そんなジェフにステラからの一言は「結婚しなさい」
ステラがサンドイッチを作りにキッチンに行っている間、向かいのアパートでは新婚夫婦が引っ越してきました。
二人だけの世界に入り込み、イチャつく姿をニヤニヤしながらジェフは見ていましたが、ステラが戻ってきて「見ているだけですか?」
ステラおばさん、なかなか強引でキャラ立ちしてます (≧▽≦)
その夜、仕事を終えたリザはジェフの元にやってきます。
ファッションモデルとして華やかな世界に身を置いているリザは、仕事関係で華やかな場所に出向くことも多いです。
殺風景なアパートのセットに似つかわしくない、超美人のグレース・ケリーが素敵な衣装をオンパレードで披露してくれていて、彼女の出演シーンは、まさに「掃き溜めに鶴」な光景です。
外出できないジェフのために、今日ランチで行った高級レストランの料理をポーターに運ばせて差し入れします。
シャンパンを開けたり、動けないジェフを一生懸命もてなそうと必死。
こんな絶世の美女が自分に惚れこんで健気に尽くしてくれているというのに、なんて贅沢な… と思うのですが、この後の会話で結婚に踏み切れない理由が明らかにされます。
リザはジェフにはもう危険な報道カメラマンの仕事は辞めてほしいと願っているのです。
ジェフがファッション誌やポートレート撮影の仕事に就けるよう口添えするから、と言ってカメラマンとして安泰であるようにも提案します。
しかしジェフはどんなに危険でも現地に行って真実の姿を映したいのです。
ファッション・カメラマンになってコーデュロイのスーツ姿でパーティーや式典に出ることなど現実味がない、と突っぱねます。
二人の意見はどこまでも平行線です。
1カ所に留まることができないジェフと、あちこち飛び回るのはゴメンというリザ。
互いにどうしても妥協できない部分であり、結婚は絶望的です。
さすがに今度ばかりはリザも諦めてジェフに「さよなら」と告げて出ていこうとします。
しかしジェフは「しばらくこのままじゃダメなのか」と言って引き留めるのです。
昼間ステラに、別れたほうがいいんじゃ、とか言っときながらアンタ…
やはり、どんなに価値観が違ってもリザを手放せない卑怯者です。
「価値観の違い」は離婚原因ランキングで上位に食い込むものです。
妥協できるものならば折り合いをつけることができますが、この二人の場合 “仕事” という人生の根幹にかかわるものなので、かなり難しいんじゃないかな、と思いました。
早く別れればいいのに… でもそうなると惜しくなる。
分からないでもないけど時間の無駄感は否めない。
覗かれている住人たちの中に、恋人がいない独身女性、ミス・ロンリネスがいます。
ごくごく普通の女性なのですが、ちょっと夢見がち。
二人分のディナーを準備して、そこから空想の世界に入り込んで一人芝居を始めます。
エア彼氏がドアをノックしたので笑顔で出迎えて、ほっぺにチューしてもらって驚いて、ワインを開けてカンパーイ♪ とまでやったところで、虚しさに突っ伏して泣いてしまいました。
なんというか… イメージトレーニングは悪いことじゃないよ、元気出せ! と励ましたくなりました。
こんなん見ちゃったら可愛い人だとしか思えないじゃないですか (ノゾキだけど)
エア彼氏で虚しくなっちゃったミス・ロンリネス。
後日、念入りにおめかしして外出していきます。
ジェフも興味津々で見るのですが、動けないから表通りに続く狭い路地越しまでしか見られません。
彼女は向かいのレストランに入り誰かを待ちます。
その夜、ミス・ロンリネスは男性を部屋に引き入れました ( ゚Д゚)エー
しかし彼女はどうやら男性を部屋に入れることの意味が分かっていなかったようです。
力づくで押し倒されそうになって、ビンタ連発で応酬して危機を逃れました。
相手がいなくて、でも欲しくて、という気持ちが高じるとヤケクソに近い行動をとってしまいがちになります。
ミス・ロンリネスは普通のデートのつもりだったのでしょうが、焦ってカラダ目当てのカスを見極めることができませんでした。
パートナーがいなくて寂しいときこそ見る目を磨いておいたほうがいいです。
曇っていると、冗談ではすまない出来事が待ち受けていたりします。
自分磨きもいいけれど、見る目磨きも忘れずに。
最後のオチで、ジェフはまだまだ仕事復帰できません。
もしかしたら、治りそう → 骨折、の繰り返しでリザの要望通りジェフはずっとここに留まることになるかも、なんて思いました。
夜な夜なパーティーを開いて男性たちを侍らせていたバレエダンサーの元には入隊していた夫が帰ってきたし、ミス・ロンリネスは音楽家とお付き合いを始めました。
新婚夫婦は夫が失業してケンカが絶えなくなっていました。
窓越しで見つめる恋愛模様も様変わりしていき、サスペンスで盛り上げた後半のドキドキを一気に弛緩させる平和なラストです。
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