映画「太陽がいっぱい」あらすじと感想【ネタバレあり】遊び人さん、気をつけて
ルネ・クレマン監督の名作サスペンス映画です。
主演のアラン・ドロンを世界的スターに押し上げました。
共演には「死刑台のエレベーター」のモーリス・ロネと、この作品がデビュー作となったマリー・ラフォレ。
全編イタリアロケの、太陽が燦燦と輝く明るい風景なのに、人間のどす黒い感情が妙にマッチしている異色の演出がこの映画をさらに面白いものにさせていると思います。
その昔、有名な映画評論家の淀川長治さんが「ホモセクシュアル映画の第1号」とこの作品を評していましたが…
う~ん、何度観ても、どの部分がそう匂わせているのか分からないです(;´・ω・)
あらすじ
貧しいアメリカ人青年トム・リプリーは、お金持ちの放蕩息子フィリップの父親から、息子をサンフランシスコに連れ戻すよう頼まれてローマにやってきた。
この依頼を達成できれば5千ドルの報酬がもらえる。
トムはなんとかフィリップを宥めすかして連れ戻そうとするが、この地に友人や婚約者がいるフィリップに帰国する気持ちはさらさらない。
もう所持金も少なくなっているのに、しびれを切らしたフィリップの父からは契約を打ち切られてしまった。
帰国することも出来ずに仕方なくフィリップについて回る。
フィリップは友人フレディに誘われてタオルミナに自前のヨットで行くことにし、婚約者のマルジュと、おまけでトムも連れて行く。
雑用をさせたり、見下してバカにしたりと、フィリップはトムをぞんざいに扱う。
トムは次第に憎悪を募らせていき、ついにはフィリップがマルジュに、トムだけヨットから降ろそうとしていることを聞いて、腹いせに乱暴な舵切りをしていちゃつく二人の邪魔をした。
怒ったフィリップは小型ボートにトムを乗せて海に落とし、ボートについたロープを舵に括り付けて、笑いながらキャビンに戻った。
今にも転覆しそうなボートで、トムは必死にしがみついてバランスをとるが、照り付ける太陽が彼の体力を奪う。
キャビンから出てきたフィリップは、ロープが途中で切れているのを見つけ、慌ててトムを探しにいく。
見つかったときのトムは、日焼けによる火傷と熱中症で意識を失っていた。
罪悪感を持つフィリップだったが、トムがマルジュから手当てを受けている間、トムのベッドからフィリップ名義の預金口座明細書を何枚か見つけて不審に思う。
翌日いくらか回復したトムは、マルジュとの不仲を誘うため、フィリップのジャケットにイヤリングを仕込んだ。
案の定マルジュはそれを見つけて、フィリップの浮気を疑う。
さらにはケンカの勢いで、マルジュが仕事として書いていた原稿や資料をフィリップは海に投げ捨ててしまう。
マルジュは泣きだし、船を下りてモンジベロに戻った。
海上にはトムとフィリップだけとなり、二人でポーカーをしながら、フィリップはトムに自分に成りすますつもりなのかストレートに訊いてみる。
トムは言葉に含みを持たせ、完全犯罪ができる可能性を示唆してフィリップの不安を煽り、隙を見て心臓にナイフを突き立ててフィリップを殺害した。
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感想
ローマでフィリップに付き従うトムは、フィリップのナンパに付き合わされます。
ナンパなんて慣れているフィリップは、上手いことタクシーを拾おうとしている女性をゲット。
三人で馬車に乗り、女性を間に挟んで乱交に近いことをします。
基本的にこの女性はフィリップのほうばかり向いてイチャイチャして、トムが後ろから愛撫してもトムの方を向きません。
強引に顔を向けさせてキスしても、すぐフィリップのほうに戻ってしまいます。
なぜでしょう?
モーリス・ロネの顔だからフィリップも確かにイケメンですが、トムはアラン・ドロンだけあって、それを上回る超絶イケメンのはずです。
フィリップがお金持ちだからでしょうか?
いいえ、ただナンパされただけの女性は、そんなバックグラウンドは知りません。
しかし分かってしまいました、フィリップのほうがモテる理由。
トムにはどうも小者感が漂うのです。
このナンパにしても、殺人までのフィリップとの過ごし方にしても、常に後ろをついて回り、主体性がなくリーダーシップもない “金魚のフン” タイプなんですね。
だからナンパ女性は男らしいフィリップに魅力を感じ、女々しいトムのことはミソッカスにしてます。
マルジュも、三人で船に乗っていた時、優しい言葉はかけてもトムにまったく惹かれていませんでした。
昔からいますね、常に親分タイプの腰巾着になっている子分タイプの人。
言いたいこともろくに言えず、自分に自信がない人というのが見てとれます。
いつもオドオドしていて、せっかくの顔の良さも宝の持ち腐れになってます。
整った顔を何にも活かしきれない、すごくもったいない人だなって思いました。
フィリップを殺した後、トムはフィリップに成り代わり彼の持ち物や預金をすべて自分のものにするべく行動を起こします。
まずはモンジベロに戻りマルジュに会いにいきました。
フィリップとは喧嘩別れだったマルジュは、反省して自分に謝りに来てくれたのだと思い笑顔で迎え入れようとしますが、トムからフィリップはいないと聞かされて落胆します。
本当はトムの手にかかり海に沈んでいたのですが、普段からマルジュを放っといてローマに遊びにいったり、浮気し放題だったりしていたため、マルジュは涙を流しながら「後を追いかけたりなんかしない」と言ってフィリップに見切りをつけようとしていました。
もしフィリップがもっと誠実な男性だったら、マルジュはフィリップがいなくなったことに不審なものを感じ、必死に探したかもしれません。
また、この後トムは成りすましがバレそうになりフィリップの友人フレディも殺害しますが、こちらは予定にない殺人だったため、遺棄した遺体がすぐ見つかってしまいました。
このとき、殺されているとは思われていなかったフィリップが、行方不明になっているため容疑者にされました。
こちらもまた、フィリップが短気で意地悪な性格ではなかったら、マルジュはフィリップを信じて無実を証明しようと何かしら行動を起こしたかもしれません。
トムがほぼ完全犯罪をやってのけることが出来たのは、他でもないフィリップ自身の普段の行いが手助けしていたからです。
黙ってフラフラ遊びに行ったり浮気したりしているから、行方不明になっても探してもらえませんでした。
殺人の容疑者になっても無実を心から信じてくれる人はいませんでした。
フィリップは死んでいましたが、もし死にかけているような状況だったら…?
普段から誠実な人であったなら、いなくなったとき心配して安否を気遣ってくれる人がいたはずですし、行方を探してくれたはずです。
濡れ衣を着せられても信じてくれる人がいたでしょう。
普段の行いは、大げさに言ってしまうと生死のカギも握るんだな、と感じました。
人から見捨てられるような行動には気をつけたいところですね。
さてこの映画もやはりラストシーンが印象に残る作品です。
ロープが船のスクリューに絡まって引き揚げられたフィリップの遺体を見たマルジュの悲鳴。
完全犯罪をやり遂げたと思って満足気に笑っていたトムは、警察とは気づかず来客の元に行く。
逮捕されるところをあえて見せない演出が余韻を生み、ニーノ・ロータの切ない音楽が耳に残ります。
凄惨な殺人を扱った作品でありながら、美しい映画です。
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