映画「薔薇の名前」あらすじと感想【ネタバレあり】不気味さ漂う宗教ミステリー
イタリアの記号学者ウンベルト・エーコが初めて手掛けた迷宮ミステリーの映画化作品です。
1986年に制作されました。
この前、女子修道院を舞台にしたスリラー作品を書きましたが、
今度は男性ばかりの修道院が舞台の作品です。
主演はショーン・コネリー。
ジェームズ・ボンドとはまた違った佇まいのキャラクターを演じています。
そしてその弟子はクリスチャン・スレーター。
ハリウッドの問題児、と後に言われる彼ですが、この頃は可愛いです。
修道院長のアッボーネ役は、「ジャッカルの日」でルベル警視を演じたミシェル・ロンスダールです。
まさか立て続けに見ることになるとは… (;^ω^)
この映画ではコネリーとのキスシーンがあります。おええーっ!!
あらすじ
1327年末。
北イタリアの雪深い山頂にある修道院に、フランチェスコ会修道士ウィリアムと、その弟子で見習い修道士のアドソがやってきた。
皇帝側のウィリアムと教皇側の話し合いのために選ばれた場所だが、つい最近修道士のひとりが謎の転落死をしたと聞いている。
修道院長のアッボーネは、洞察力が鋭く見識があるウィリアムに、その死の真相を明らかにしてほしい、と願い出た。
ウィリアムは受け入れて、さっそくアドソと共に調査を開始する。
亡くなった修道士は、細密画家のアデルモという若い僧だ。
彼は、この修道院で一際高い塔となっている図書館から飛び降りたのだ。
図書館の1階は厨房。
そして高い位置に、その厨房で出た残り物を投げ捨てる扉があった。
ウィリアムたちが図書館に向かう途中、その扉からちょうど廃棄された食べ物が投げ捨てられた。
斜面になっているため転がっていく。
そこには貧しい村人たちが待ち構えており、食べ物に群がった。
アドソがその光景に目を見張っていると、ひとりの娘と目が合う。
ウィリアムに声をかけられるまで彼女から目が離せなかった。
アデルモの血痕から飛び降りた場所を確認し、当日が嵐だったことも鑑みてウィリアムは自殺と結論付けた。
しかし翌朝、家畜の血を貯めているカメに、ギリシャ語翻訳者のヴェナンツィオの死体が見つかった。
これはさすがに自殺ではない。
薬草係のセヴェリーノと一緒に遺体見分をし、ヴェナンツィオはアデルモと仲が良く、共に写字室で作業をすることが良くあったと聞く。
ついてきていたアドソは気分が悪くなって外に出た。
近くの建物内に入ると、調理係補佐のサルヴァトーレという男に、意味不明の言葉を繰り返されて迫られ困惑する。
ウィリアムが助けに入り事なきを得たが、言葉の意味を聞くと、サルヴァトーレはかつて異端のドルチーノ派に所属していたのだと教えられた。
写字室がある図書館に向かう途中、雪に残された足跡にウィリアムは注目した。
深く、進行方向と逆を向いている。
誰かがヴェナンツィオの遺体を引きずって移動したのだ。
図書館に入り、館長のマラキーアにアデルモの机に案内してもらうと、彼が描いた鳥獣戯画のようなユニークな挿絵の本が開いてあった。
こっそり笑っていると、副司書のベレンガーリオが足元のネズミに驚いて奇声を上げたので、それを見た周りも笑う。
しかし笑いを禁忌としている長老ホルヘが彼らを一喝した。
笑いに対して寛容なウィリアムは、アリストテレスが「詩学」の第二部で “喜劇は真実を伝える” と書いていた、と反論する。
しかしこの第二部は何世紀も前に紛失したまま見つかっていない。
ホルヘは、第二部は初めから書かれていなかったのだ、と言ってウィリアムをやり込めた。
ホルヘが去ってから、今度はヴェナンツィオの机を見ようとしたら、ベレンガーリオに邪魔をされた。
大人しく図書館を出るが、蔵書量が異常に少ないことが気になる。
推理しながら歩いていると、上から岩を落とされた。
アドソがすぐに追いかけて捕まえると、犯人はサルヴァトーレだ。
駆けつけた厨房係のレミージオがサルヴァトーレを殴り、ウィリアムに許しを乞う。
ウィリアムは見返りに、夜中に図書館に忍び込めるように鍵を開けてもらった。
写字室にはベレンガーリオがいたが、ウィリアムたちの気配に身を隠す。
ウィリアムたちがヴェナンツィオの机を調べると、ギリシャ語のメモがあった。
香りで炙り出しと気づいたウィリアムがランプの火に紙をかざすと、暗号がそこに浮き出た。
読み解こうとしたところで、ベレンガーリオが斧を投げてふたりの注意を引き、その隙にヴェナンツィオの机にあった本をウィリアムの眼鏡ごと持ち去った。
ウィリアムとアドソは二手に分かれてベレンガーリオを追う。
そこでアドソは厨房で村の娘と再会し、一夜限りの過ちを犯す。
ウィリアムもベレンガーリオを見失うが、墓地でサルヴァトーレに会い、重要な情報を入手する。
そして翌朝、沐浴室でベレンガーリオの死体が見つかった。
↓難解と言われている原作本
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感想
このあと、ベレンガーリオが持ち去ったのは禁書であることが明かされ、異端審問官のベルナール・ギーという人物が登場します。
昔この映画のパンフレットを持っていたのですが、コンパクトなサイズで厚みがある、という映画パンフレットとは思えない作りになっていました。
そして中身は、なんだか学者とか知識人的な人たちが寄稿していて、ほぼ全員がベルナール・ギーについて書いていたんですね。
今もうその冊子のようなパンフレットは手元にないので確認できないのですが、なんの知識もなかった子供には「後半に出てきたチョイ役の悪役をなんでそんなに称賛してんだ?」と不思議でした。
演じたF・マーリー・エイブラハムの演技力の高さも当時はあまりよく分からず (;^ω^)
実在の人物だったと知ったのはだいぶ後になってからです。
映画で描かれているほど冷酷な人ではなかったようですね。
ギーの登場で物語の風向きが変わります。
横溝正史的なおどろおどろしい雰囲気のミステリーだった世界に、 “権力” が入り込みました。
ギーは、皇帝側のウィリアムと対立する、教皇側の立場を取っています。
自分が優位に立つために、この連続怪死事件の解決を宣言しますが、それを「悪魔によるもの」と決めつけて、犯人をでっち上げます。
見事な悪役ぶりです。
そもそもギーは、黒馬が引く黒い馬車で登場という、いかにも悪の華っぽい感じなんですよね。
彼の登場で話は面白くなったか、と言えばそういうわけではなく、最初から面白いんですが、内容をすでに知っている人が「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」と待ちわびる気持ちも分かる気がします。
何しろ華があるキャラですから。
でも私はやっぱりクリスチャン・スレーター演じるアドソが好きすぎて目が離せない……
顔立ちから実際にはかなりヤンチャな人なの分かるんだけど、このアドソのときの気弱そうな表情や仕草がたまらん! 可愛い!
そしてラストシーンの美しさときたら…
娘の顔に手を添えて涙を流す。言葉は一言も交わさない。
この静かな別れの場面、感無量な気持ちになってこっちも言葉が出てこない
(ノД`)・゜・。
この不気味な雰囲気の中で一服の清涼剤的な存在です♡
ミステリー的なロジック部分も面白いですが、作品全体に漂う重い雰囲気や奇妙な登場人物たちなども楽しめます。
そして死体がスケキヨだったりオフィーリアだったり、パロディか? と思える部分で笑えます。
↓スケキヨ
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↓オフィーリア
おっと、笑うとホルヘ爺さんに怒られる (;´∀`)ガ、ガマン…
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