映画「すべてをあなたに」あらすじと感想【ネタバレあり】60年代ビートに乗せた青春と別れの一瞬

名優トム・ハンクスが初めて監督した青春映画です。
出演も兼ねており、妻のリタ・ウィルソン、息子のコリンも少しだけ出ています。
主演はオーディションで選ばれたトム・エヴェレット・スコット。
ヒロイン役をリヴ・タイラーが演じ、まだ駆け出しで注目されていなかったシャーリーズ・セロンが前半だけ出演しています。
製作には「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミも入っており、こちらもチョロッと顔見せしています。
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あらすじ
1964年 ペンシルベニア州エリー。
父親が営む小さな電気店を手伝っているガイは、閉店後にドラムを叩くのが楽しみだった。
カフェに行くと、今夜のミュージック・コンテストに出ようと相談している、バンドを組んでいる友人たちが集まっていた。
作詞作曲兼ボーカルのジミー、ギターのレニー、ドラムのチャド、それにジミーの彼女フェイだ。
しかしチャドが腕を骨折し、彼らはガイに代役を頼んでくる。
ガイは承諾し、音合わせで腕前を見せつけた。
バンド名はガイの提案でThe Oneders (ザ・ワンダーズ) に決まったが、概ね不評である。
そしてコンテスト本番は、ガイのリードでアップテンポな演奏となり、会場を沸かせて見事優勝した。
他のライブハウスからも声がかかり、ワンダーズはあちこち演奏して地元で顔が売れるようになる。
だが、音楽に興味がないガイの彼女ティナは、だんだん彼から気持ちが離れていっていた。
やがて、ワンダーズはある音楽関係者の目に留まり、大手レコード会社のスカウトマンであるミスター・ホワイトを紹介される。
彼は彼らの才能を見抜き、プロデュースを申し出た。
バンド名も「The Wonders(ザ・ワンダーズ)」と綴りを変更され、彼らは正式に全国デビューのチャンスを得る。
彼らのオリジナル曲「That Thing You Do!」はラジオで流れ始め、瞬く間に人気を集め、チャートを駆け上がっていく。
ツアーが始まり、彼らは全米各地をまわるようになり、テレビ番組にも出演。順風満帆に見えたバンドだったが、次第にメンバーの間に溝が生まれ始める。
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感想
映画全体に流れる60年代風の軽快なポップスが心地よく、特にタイトル曲「That Thing You Do!」のキャッチーさは圧倒的。
あの曲を中心に物語が回っていく構成がとても自然で、観ているこちらもつい手拍子を打ちたくなるような一体感があります。
60年代アメリカの明るい空気感とポップカルチャーのきらめきが、ファッションや街並み、バンドの衣装からも伝わってきて、まるでその時代にタイムスリップしたかのようです。
ストーリーとしては、典型的なバンド成功物語をなぞりながらも、その裏にある人間関係の変化や、若者たちの夢と現実のギャップを丁寧に描いています。
とりわけジミーの自己中心的な言動と、それに振り回されるフェイの姿が印象的でした。
フェイは最初からヒロイン然とした存在でしたが、ガイとの関係が深まっていく過程には少し唐突さも感じます。
ジミーと別れた翌日に、すぐにガイと恋愛関係に進むという展開には、もう少し感情の揺れや余白が描かれていたらより自然だったかもしれません。
とはいえ、ガイの誠実さや、音楽へのまっすぐな情熱には心打たれるものがあり、この作品のトーンには合っていたように思います。
フェイを演じた当時18歳のリヴ・タイラーも可憐で、特に瞳の表情に惹きつけられました。
彼女が涙を流しながらジミーに別れを告げるシーンは、感情の重みがあり、忘れがたいシーンです。
また、個人的に惜しいと思ったのは、ティナ役で登場するシャーリーズ・セロン。
ほんのチョイ役ながら、その美しさと存在感は際立っており、もっと出番があっても良かったのでは…と感じてしまいました。
のちに大スターになる彼女を、こうしてフレッシュな姿で観られるのも、この映画の隠れた楽しみのひとつかもしれません。
トム・ハンクスの初監督作とは思えないほど完成度が高く、音楽映画としても青春ドラマとしても心に残る一本。
成功の光とその影、そして何より音楽への愛が全編にあふれている爽やかな作品です。
オールディーズ好きなので、サントラも欲しくなりました。
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