映画「8 1/2」あらすじと感想【ネタバレあり】フェデリコ・フェリーニの自己投影
「道」「カリビアの夜」などですでに名声を得ていたフェデリコ・フェリーニ監督が、名声ゆえにプレッシャーで苦しむ映画監督、という自身を投影したかのようなキャラクターの姿を映し出した作品です。
前作「甘い生活」からコンビを組み始めたマルチェロ・マストロヤンニを主役に、「男と女」のアヌーク・エーメ、イタリアのセックス・シンボルCCことクラウディア・カルディナーレなどが華を添えます。
あらすじ
過去に撮った作品が高い評価を受け、周囲から次回作も期待されている映画監督のグイド。
撮影のため温泉保有地に来ているが、撮影は大幅に遅れていた。
プロデューサーやパトロン、友人たちからいろいろせっつかれて焦る気持ちはあるがアイディアが固まらない。
愛人の主演女優がやってきても撮影に取り掛かることができなかった。
周囲からのプレッシャーで、グイドは構想を練っているのかただ妄想をしているだけなのか、わからない状態になってくる。
精神の安定のため妻のルイゼを呼び寄せるが、彼女はグイドの浮気を見抜き激しく彼を責め立てる。
さらなるプレッシャーから逃げるようにグイドの妄想はさらに炸裂するのだった。
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感想
難しい作品でした……
グイドの苦悩を深く深く掘り下げるとそこに映画がある。
その内面の映画を外側から観ている、とでも言うか、うまく言語化できないけど、なんかそんな印象を受けました。
偉そうにあらすじなんて書きましたが、グイドの内面と外側で起きているエピソードを連ねているだけで、一本のストーリーの流れになっている、とは言い難いんですね。
タイトルの8 1/2は、この作品がフェリーニ監督の単独8本目で、共同監督作品を1/2と数えた、完成作の本数を表しています。
このことから、グイドを主役にしているけれど、フェリーニ監督自身が“見えない主人公”として存在しているような、そんな感じに思った不思議な作品です。
特に、出演者たち全員が手を繋いで踊るシーンは、舞台のカーテンコールを思わせます。
お辞儀をしているわけじゃないけど、観客に“ありがとうございました”と言っているようで、そこには登場していない監督もまた画面に出てきて挨拶をしているみたいに思えたんです。
このシーンのナレーションが「人生はお祭りだ。共に歩もう」という名ゼリフで、これが観客への呼びかけにもなっているためにそう感じたのかもしれません。
面白かったか?と訊かれると、う~ん、と唸ってしまうのですが、印象的なシーンも多いし、映像美術としても優れているので楽しめる作品ではあります。
まず冒頭で、グイドが落ちていくシーンがあるのですが、人物が見切れてコートの裾が翻るだけの描写ってカッコいいんだ、と思いましたもん。
そんな感じで、ナイスショットに見惚れるのも映画の醍醐味ですし、観てみるのも一興かと。
でも最初のフェリーニ体験にはしないほうがいいかも…
ストーリーがわかりやすい名作「道」が個人的にすごく好きでオススメなので、先に「8 1/2」観て「フェリーニ合わない」と判断されて「道」も避けられたら、ちょっともったいないなぁ、と思ってしまいまして(偉そう)
未見の方は、よければ「道」を先に見てみてください。
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