映画「大人は判ってくれない」あらすじと感想【ネタバレあり】

フランソワ・トリュフォーが自身の体験を元にした青春映画です。
主演はジャン = ピエール・レオー。
1978年の5作目まで同役を演じました。
レオーの両親役は「ピアニストを撃て」でもトリュフォーに起用されたアルベール・レミーと「アメリ」で主人公が勤めるカフェのオーナー役だったクレール・モーリエです。
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あらすじ
13歳のアントワーヌ・ドワネルは、教師に目を付けられて頻繁に叱られている。
家庭でも、いつも怒っている母親にキツく当たられ、父も週末はいつも出掛けていてコミュニケーション不足である。
ある朝、親友のルネに誘われて学校をサボり、映画を観て町を歩いていると、母親が父とは違う男と親密になっているところを目撃する。
母もアントワーヌに気づいたが、彼を呼び止めることはしなかった。
帰宅すると、母は帰りが遅くなるという。
母の浮気を、父には黙っていた。
翌朝、昨日欠席したことを先生に咎められ、咄嗟に「母が死んだ」と嘘をつく。
しかし両親が学校にやってきて嘘はバレ、父にはその場で引っ叩かれた。
もう家には帰らない、と言うアントワーヌに、ルネは叔父の印刷工場で寝泊まりするように勧めた。
一晩そこで過ごして学校に行くと、母が迎えに来てくれた。
アントワーヌは家に帰ることが出来たが、火事を起こしてしまい、また父に怒られる。
そして学校では、作文を丸写ししたことでルネともども停学処分になってしまった。
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感想
アントワーヌは、彼の同級生たちと同じでちょっとイタズラっ子な、普通の男の子です。
母親が怖いから、という理由もありますが、ちゃんと食卓にお皿を並べるし、ゴミ捨ても文句言わずに出してきます。
共働きなのに不思議なほど貧乏なんですが、狭い家も、穴の開いた寝間着にも不満を言うことはありませんでした。
普通にいい子なんだけど、ただタイミングがいつも悪くて、テスト中に回っていたグラビアが、アントワーヌのところに来たところで先生に見つかるとか、サボッているところを、仲の良くない同級生に見られて親や先生に告げ口されるとか、とにかく運が悪い。
運が悪いところに、ドジで小火を起こしてしまったり、怠惰だから宿題もしなかったりと、しょうがない子だけど、非行というほどのことはしていませんでした。
しかし彼に対して愛情が希薄な両親はアントワーヌを「とんでもない非行少年で手がつけられない」と言って学校や警察になんとかしてもらおうとします。
アントワーヌは非行少年ではなく、何かと彼を目の敵のようにしている両親や先生たちが「非行少年に仕立て上げた」が本当のところじゃないかと思いました。
少なくとも停学に続く二度目の家出までは、アントワーヌは悪事というほどのことはしていません。
ルネに誘われて彼の家に隠れ住むことにしましたが、お金がなく、犯罪に手を染めてしまいました。
やったのは窃盗。
父の会社からタイプライターを盗みます。
ブローカーに渡しましたが、質屋が買い取ってくれなかったというので「返せ」と詰め寄って取り戻しましたが、重いし嵩張るし…
それで返しに行ったら警察に連れていかれ、そのまま感化院送りになります。
護送されるアントワーヌの静かな泣き顔が印象的です。
学校を欠席した理由で「母が死んだから」と答えていましたが、見知らぬ男とキスしている母を見たとき、彼の心の中の母親が死んだから、だと思いました。
物理的に死んだわけではないので「嘘」になってしまったわけですが、心情的には彼女は「母親」ではなく「女」になったのだろう、と。
それでも親としての愛情を諦めていたわけではありません。
だけど見送りにもきてくれなかった絶望。
終盤で判明しますが、父も実の父ではありませんでした。
だから無償の愛を向けてくれるはず、と思えていた母からも見捨てられたアントワーヌの孤独は計り知れません。
面会での母の言葉が決定的となり、アントワーヌは感化院を脱走して海まで走りました。
クルリとカメラに向けた顔の表情。
痛々しさがダイレクトに表れています。
だけど、この痛みを乗り越えた彼は…
アホの子のまま大人になり、この先の「アントワーヌ・ドワネルの冒険」シリーズは、三作目の「夜霧の恋人たち」あたりから楽しいコメディになっていきました。
運の悪さ、タイミングの悪さ、ドジ、飽きっぽい、ついでに寂しがり屋のかまってちゃんな性格は、コメディで生き生きと輝きました。
「夜霧の恋人たち」と四作目の「家庭」が、私は特に好きです♡
よかったら、精神的には成長していないアントワーヌの成長を、未見の方は観てみてください
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