映画「突然炎のごとく」あらすじと感想【ネタバレあり】セーヌ川には飛び込むな

フランソワ・トリュフォー監督の長編映画三作目の作品です。
原題になっている二人の青年を演じるのは、「華氏451」などでもトリュフォーに起用されたオスカー・ウェルナーと、この作品が代表作のアンリ・セール。
彼らを翻弄するヒロインをジャンヌ・モローが演じました。
脇役にマリー・デュボワも登場しています。
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あらすじ
1912年 パリ。
オーストリア人青年のジュールは、パリジャンのジムと親友になった。
ふたりはいつも一緒に行動し、ジムがジュールに女性を紹介するが、いつも上手くいかない。
ある日ジュールの知り合いのオーストリア人女性が主催するお茶会に参加。
そこでフランス人女性のカトリーヌという魅惑的な女性と知り合った。
三人で行動するようになり、ジュールはカトリーヌを本気で愛してプロポーズを考えるようになった。
ジムもカトリーヌの魅力を分かっているが、結婚には向かない女性だと認識している。
しかし気持ちを納められないジュールはカトリーヌにプロポーズして、OKの返事をもらえた。
ジュールが彼女を連れてオーストリアに戻った数日後、戦争が勃発。
ふたりは敵国になるが、幸い戦場で相まみえることなく終戦を迎えた。
終戦からしばらくして、ジムはジュールの招待でオーストリアの彼らの家に行く。
ジュールとカトリーヌには、サビーヌという娘が生まれていたが、夫婦仲は冷え切っていた。
それでもジュールはカトリーヌを愛しており、浮気を繰り返す彼女でも、去って行ってほしくないと切望する。
ジムもまた、パリにジルベルトという恋人がいるけれど、カトリーヌに惹かれており、彼女のほうもジムに愛を伝えてきた。
ジュールは、ジムがカトリーヌと結婚してくれたら彼女と離れることはない、とジムに彼女の再婚相手になってくれるように頼んでくる。
ジムがカトリーヌとの結婚を前向きに考え始めた矢先、ジムはパリに戻らなければならなくなる。
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感想
1912年という年代を考えると、カトリーヌは確かに自由な振る舞いの人です。
上流階級の女性たちは首までしっかり隠したドレスを着ています。
カトリーヌももちろんそういう服を着てお茶会に出席していますが、時に男装して男の子のように振舞ってふたりと出かけたり、野山を駆け回って大きな口を開けて笑います。
溌溂としていて、少女のような魅力があります。
二人が会話の中で女性をバカにしたような話をしていると、抗議のようにセーヌ川に飛び込んで、二人をギョッとさせました。
うん、これはまあ、私も別の意味でギョッとしました…
あの悪名高い2024年パリ・オリンピック、トライアスロンでセーヌ川を泳がされた選手たちが次々と体調不良を起こしてましたからね~ (;´Д`)
それにキャサリン・ヘップバーンが映画「旅情」で運河に飛び込んだことで感染症に罹ったことも有名だし
映画「旅情」あらすじと感想【ネタバレあり】せつない旅先ロマンス
安易に川に飛び込んじゃダメだって。
しかしこの飛び込みがジムの心にも火をつけます。
衝動的で突飛な行動をとるカトリーヌに、お坊ちゃまなふたりはメロメロでした。
で、カトリーヌのほうはどうかというと…
激情に駆られる傾向のある人だけど、本当にふたりのうち、どちらかを愛していたとはちょっと考えにくい人なんですよね、私から見ると。
誰かを愛するというより、愛してくれる人にチヤホヤされたい、みたいな。
手の届きそうな人の気持ちを自分に向けさせたい気持ちもあるのかな?
そんな風に思えました。
だからジムが振り向いても、ジュールとの戯れや、近くに住むギター弾きのアルベールとの関係を断ちません。
だけどパリに戻ったジムがカトリーヌとの別れを決意し、ジルベルトとの結婚を決めると、持ち前の激情で追い回します。
やっぱり、逃すのは誰も彼も惜しい、と。
逃げていくジムを本当に愛していたかは分かりません。
彼女はその激情のままにメンヘラをこじらせて無理心中をしました。
相手の幸せを願うより、去って行くなら殺してしまえ、というのは、相手を愛していると言えないような気がします。
しかもジュールの目の前です。
ふたりの棺が燃やされるのを見て悲し気な表情を浮かべるジュールですが、肩の荷が下りた、という心情を伝えてきました。
炎のような激しい情熱を帯びた愛は、若いうちはともかく、何年も続くと疲れてしまいます。
ジュールも、愛に陶酔しながらも疲れていたのでしょう。
ジムとの友情の板挟みにも。
娘の存在があるため、ジュールは彼らの後を追いません。
若かりし頃は過ぎ去り、これからは穏やかに日々を過ごしていくことを示唆しているラストに、ヒューマンドラマ的なペーソスを感じました。
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