映画「犬神家の一族」(1976年版) あらすじと感想【ネタバレあり】
監督・市川崑&主演・石坂浩二のコンビによる金田一耕助シリーズの第一弾です。
ショッキングな死体や不気味さが漂う演出により、事件の凄惨さを際立たせています。
角川映画第一弾として評判になり、後の角川を牽引した作品です。
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あらすじ
昭和22年・那須。
製薬会社を興し、一代で財を築いた犬神佐兵衛が死んだ。
彼の遺言により、相続に関する遺言状の公開は一族すべてが集まった席で行なわれる。
生涯正妻を持たなかった佐兵衛は、腹違いの三姉妹を認知して自分の屋敷に住まわせていた。
長女・松子には佐清 (すけきよ) という一人息子がいるが、兵役にとられてから未だ帰ってこない。
次女・竹子には息子・佐武 (すけたけ) と娘・小夜子がおり、ふたりとも一緒に犬神家本宅で暮らしている。
そして三女・梅子にも一人息子・佐智 (すけとも) がおり、遺産の増額狙いで小夜子と婚約していた。
この三姉妹の夫たちはすべて婿養子で、松子の夫はすでに亡くなっている。
ここに加えて、佐兵衛が若い頃に世話になった恩人の孫娘・野々宮珠世という女性も犬神家に住まわせてもらっていた。
珠世には猿蔵という下男がついている。
犬神家の顧問弁護士・古館の元に勤務している若林という弁護士は、この遺産相続を巡って良くないことが起きる予感があり、探偵の金田一耕助に調査を依頼した。
那須に到着した金田一は、若林が取っておいてくれていた那須ホテルに滞在する。
部屋に通されて窓を開けると、一面に湖が広がっており、その向こうに犬神家の屋敷が見えた。
しばらく眺めていると、一人で手漕ぎボートに乗っていた女性・珠世がピンチに陥っているのが見えた。
金田一はすぐさま走り出てボートに乗り込み彼女を助けに行く。
同時に向こう岸からも猿蔵が飛び込んで珠世の元まで泳いできた。
ふたりで珠世を助け、調べてみると珠世が乗っていたボートには作為的な穴が空いていた。
珠世が狙われるのは、もうこれで3度目だという。
ホテルに戻ると、今度は女中のはるの悲鳴が聞こえてきた。
そちらに駆けつけると、金田一を那須に呼び寄せた本人・若林が死んでいる。
警察や鑑識が呼ばれて毒殺と判明した。
いきなり依頼主が亡くなって途方に暮れる金田一に、若林の雇い主・古館が引き続き調査を依頼した。
ある晩松子は、顔全体をスッポリとマスクで覆った男を犬神の屋敷に招き入れた。
その男は復員してきた長男・佐清だという。
竹子や梅子は懐疑的だが、これで一族揃ったことになり、遺言状が読み上げられる。
場を仕切る古館の後ろで金田一も同席した。
そして遺言状の中身は、全相続権を示す家宝「斧 (よき)・琴・菊」(黄金で作ったミニチュアのモチーフ) を、三人の孫息子の中から婿を選ぶことを条件に野々宮珠世に相続する、という内容だった。
この相続を巡って珠世争奪戦となり、そして斧・琴・菊にまつわる見立て殺人が連続で起こることになる。
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感想
この古めかしさとおどろおどろしい雰囲気… 大好物です ( *´艸`)
やっぱ金田一シリーズはこうでなくちゃね。
時代背景に合わせているのかもしれないですが、衣装や家具・調度品なども色味を抑えて基本は白黒のコントラストになっています。
それが静謐で不気味な雰囲気に合っていますが、ここぞというところでは派手な色の菊人形に紛れさせて(ちいちいの)首を晒したり、犯人の顔に鮮血が散ったり、バランスが取れています。
ただ、佐武が珠世を襲うところや若い頃の佐兵衛の情事、佐兵衛の若い愛人・青沼菊乃が三姉妹に襲撃される、などモラル上で問題ありそうなシーンではわざと白黒のコントラストを強くしていて状況が分かりにくい画になっているんですよね。
それが見づらくて、ちょっとイヤでした。
しかもそういう場面、結構時間とってあるんで「もうチャチャッと流して早く普通の画面に戻して」と思いましたもん。
難点はそのくらいかな?
俳優たちの演技は声の張り・聞き取りやすさも含めてすごくいいですし。
女優陣の所作の美しさも見どころですね。
特に三姉妹を演じている高峰三枝子さん・三条美紀さん・草笛光子さんは、いずれも性格が悪い役柄なんですが、品がありますもん。
序盤で三条さん演じる竹子が琴を弾くシーンがありますが、実際に三条さんが弾いています。
琴であんなに躍動感のある曲が弾けるなんて、和楽器も奥が深い、と改めて思いました。
事件がグロテスクだからこそ人物たちの佇まいに“美”も必要。
そして全体的に怪奇が漂っているからこそトボけたキャラも必要。
仕事でさんざん凄惨な死体を見てきているはずなのに、佐武の首を見て思いっきり悲鳴を上げる金田一に笑ってしまう。
飄々としていて、はるちゃん (坂口良子さんカワイイ♡) との会話も和みます。
そして加藤武さん演じる警察署長の「よしっ!わかった!」も、この1作目から早速連発で出てきます。もうコレほんと好き(≧▽≦)
これらのバランスと、画面の切り取りで繋げるテンポの良さで本当に完成度の高い作品です。
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