映画「暗殺のオペラ」あらすじと感想【ネタバレあり】呪われた町のミステリー
ベルナルド・ベルトルッチ監督のキャリア初期の作品です。
この作品が代表作のイタリア人俳優ジュリオ・ブロージが、若くして死んだ父親と現在の息子の一人二役を熱演。
アリダ・ヴァリが助演に回って上手くサポートしています。
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あらすじ
イタリアの田舎町タラで電車を下りたアトス・マニャーニ。
通りの名前や文化会館の名前にも彼と同じ名前がついている。
彼と瓜二つの胸像も町の広場に置いてあり、その名前も同じだった。
反ファシストの闘士として、英雄と称えられていたアトスの父である。
アトスは、父と同じ名前をつけられていた。
この小さな町で父のことを知らない人はいない。
ホテルの経営者も、アトスが父と生き写しなことに感嘆していた。
アトスはさっそく、彼をここに呼び寄せた女性ドライファに会いに行く。
そしてアトスは、父が20年前、この町の劇場でオペラの観劇中に殺害されたと教えられる。
懐には、封が切られていない手紙があり、中には「劇場に入れば死ぬ」という脅迫文が書かれていた。
そして亡くなる前、父はジプシーの占い師に死の予言を受けていたことをドライファに言っていた。
未だ犯人が見つかっていないことが悔しいドライファは、アトスに真相を突き止めるよう頼んでくる。
ドライファは、犯人は父を敵視していた地元の大地主と睨んでおり、父の味方だった三人の男たちからも協力してもらうよう進言する。
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感想
映像もロケ地も素敵です (∩☆∀☆)∩
イタリアの田舎町… 塗装が剥げていたり木造部分に年季が入ってたり、寂れている感じがまた情趣があって、青々とした自然の緑と晴れ渡った空に太陽光が眩しく映えていて、いいですわ~この雰囲気♡
こんな明るく美しい風景に反するように、アトスを通して見る町の雰囲気は次第に歪な姿をしていると感じてきます。
青年がおらず老人ばかり。
馬小屋に閉じ込められたり、ドアを開けた途端に殴られたり、アトスは歓迎されていないことを感じます。
ドライファから教えられた三人には順番に会いますが、全員示し合せていたかのような態度に違和感を覚えるアトスです。
反ファシストで父と仲間だった彼らは、20年前に父と一緒にこの町に観劇にやってくるムッソリーニ暗殺を企てていました。
しかしその情報は、誰かの密告によって失敗に終わります。
観劇中に殺されたのはムッソリーニではなく父でした。
アトスは、三人が父を裏切り殺害したのだと考えます。
父が殺された桟敷席に座るアトス。
真向いの桟敷には三人が座っていました。
そしてカメラがアトスや他のものを映してから三人の桟敷席に戻るたびに一人ずついなくなっています。
この演出、怖かったー!
シンプルなのに、アトスに危険が迫っていることを観客に教える、なかなかの手法です。
密告者は父だったと分かり、「裏切り者」として死ぬより「英雄」として死にたい、という父自身の頼みで三人は彼を殺していた、という真相に辿り着いてアトスは帰ることにします。
アトスがこの町に来たとき、水兵姿の青年も同じ駅で列車を下りていました。
途中まで、彼はアトスのことをなんとなく気にしながら同じ方角を歩いていました。
しかし途中のベンチに座って別れ、それ以来会っていませんでした。
この日、帰ろうと駅に向かうアトスの前に、彼は再び現れます。
「チャオ!アトス」とだけ言って、彼も駅に走っていきます。
だけどアトスが駅に着くと、彼はもういません。
アトスは気にしませんでしたが、列車は一向にやってきません。
新聞を買おうとしても、この町には新聞は来ない、と言われます。
まるで忘れられた町のように、と売店の女性は付け加えます。
そして線路の上には雑草が生い茂っていました。
もう何年も列車が来ていないことを物語っています。
ホラー寄りのおとぎ話のような、不思議な結末です。
英雄である父を殺したからなのでしょうか。
それとも裏切り者を英雄として讃えているからなのでしょうか。
いずれにしても、見えない超自然的な存在の怒りを買って、この町は呪われているのかもしれません。
回想シーンにも関わらず全員現在と同じ姿のままだった演出は、この呪われた町だけ時が止まっていることを観客に教えるためだったのかも、と観終わってみて思います。
そしてアトスももうここから出ることは出来ない。
水兵はアトスをここに閉じ込める役割を持った案内人で、呼び寄せたドライファも、三人も、地主も、そして町の人間全員がこの世の人たちではないのではないか? とまで思わせます。
ごく普通のミステリーかと思わせておいて、いろんな解釈を要求する、不思議な世界観の映画でした。
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