映画「ソフィーの選択」あらすじと感想【ネタバレあり】サバイバーズ・ギルトについて考える衝撃作
メリル・ストリープがアカデミー主演女優賞を獲得した、アラン・J・パクラ監督作品です。
エキセントリックな相手役をケヴィン・クラインが、語り部となる視点人物を人気ドラマ「アリー my love」のピーター・マクニコルがそれぞれ演じます。
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あらすじ
作家を目指して南部からブルックリンにやってきた青年スティンゴ。
ピンクが特徴的な可愛らしいアパートの1階に入居する。
引っ越し当日に、2階の住人から歓迎会の招待状が届いた。
ソフィー&ネイサンと署名されている。
それを読んだ直後、2階に続く階段で男女が争う声が聞こえてきた。
ドアから顔を覗かせると、男性が一方的に女性を怒鳴りつけ出ていこうとするのを、女性が泣きながら引き留めようとしているのだった。
彼女を辛辣に罵倒して男性は出ていき、残って泣きじゃくる女性にスティンゴは話しかける。
名乗ったが、女性は顔を伏せて自室に戻ってしまった。
しかし、彼女はすぐにスティンゴの部屋にやってきた。
トレイに乗せた食事を差し出し、歓迎会が出来なくなった代わりに、と言い添える。
彼女が差出人のソフィーで、出ていった男性がネイサンだったのだと合点がいった。
そしてネイサンはすぐに戻ってきた。
翌朝は、まるで別人のように陽気で気さくなネイサンが、ソフィーと一緒にスティンゴを朝食に誘いに来る。
スティンゴは招きに応じ、三人はいろんな話をして親友と呼べる関係になった。
ポーランド人のソフィーの父は反ナチの大学教授だったが、ナチスに連行されて亡くなったという。
ソフィー自身もアウシュビッツに送られたが、連合軍勝利により解放されてアメリカにやってきたのだ。
語学学校に通い、先生に勧められた詩集を探して図書館に来ていたときに、体調不良で倒れたところを生物学者のネイサンに助けられたのが出会いだった、とスティンゴは聞かされる。
良好な関係が続き、スティンゴの執筆活動も順調だった。
ある日、大発見をしたと大喜びするネイサンをお祝いしようと、ソフィーと一緒に準備していたが、帰宅したネイサンはまたも粗野で不機嫌で凶暴になっていた。
ユダヤ人のネイサンはソフィーに、お前たちは俺たちを迫害した、と責め立てる。
スティンゴの小説にも難癖をつけ、挙句にふたりは自分を裏切っている、と言い募って手が付けられなかった。
翌朝、ネイサンとソフィーが、別々の方向に出ていった、と大家から聞き、ソフィーを心配したスティンゴは彼女の知り合いに電話をかけて探し回る。
そしてブルックリン大学の教授に行きついて話を聞きに行くと、ソフィーの父は反ナチどころかナチ信奉者だった、と教えられた。
彼女の話は嘘で固められたものだった、とスティンゴは知る。
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感想
結構な衝撃作でした…
おかげでジャンルが定まらない。
三角関係になった彼らの恋愛もしくは青春映画かな~、と思いきやヒューマンドラマの要素を出し、しかしサスペンス風味も加わった、と思えば後半にはホラーも入ってきます。
全要素てんこ盛りでありながら破綻していない、すごい作品 (;・∀・)
おまけにメリル・ストリープの演技力がエグい。
ドイツ語もポーランド訛りの英語も駆使していて語学面でも超人なんだけど、この複雑なソフィーという人の多面性と過酷な人生を、演技に見えない自然な演技で巧みに表現していて引き込まれました。
最初、普段のストリープより高い声でお花畑っぽい人に思えましたもの。
タイトルの「ソフィーの選択」で、最初はネイサンとスティンゴのどちらかを恋人に選ぶっていう恋愛映画だと思ってました。
最終的にはそうなんだけど、実はその前に大きな選択があり、スティンゴに話すその話の衝撃度が強烈です。
ユダヤ人男性と付き合った罪でアウシュビッツに連れてこられた彼女には、ふたりの幼い子供がいました。
息子のヤンと娘のエヴァ。
彼女に目を付けたゲシュタポが意地悪く言います。
「どちらか一人だけ残してやる」
選ばれなかったほうは殺されます。
当然首を振って「選べない」とソフィーは拒絶しますが、ゲシュタポは「選べないならふたりとも連れていく」と彼女にすがりつく子供たちを引き離そうとしました。
咄嗟にソフィーは「娘を連れていって!」と叫び、まだよちよち歩きしかできないような幼いエヴァが、焼却炉に送られる人たちの方に連れていかれます。
連れていかれる娘同様に、ソフィーも泣き叫びますが、どうすることもできません。
助けを求める我が子を見殺しにしなければならなかった絶望感。
そして残されたヤンも、ソフィーとは別に未成年者収容所に連れていかれ、それ以来 生死も分からずじまいとなってしまいました。
生き延びた人が罪悪感を持つ「サバイバーズ・ギルト」という心理を表す言葉があり、それには他者の死に対して責任がなくても持ってしまうものだと聞きます。
ソフィーの場合は… 強要されたものだけど、彼女自身が子供たちを死に追いやった、という罪悪感を持ったであろうことは想像に難くありません。
どんなに罵倒されても髪や腕を掴まれたりしてもネイサンと別れられなかったのは、自分への罰だったのでは? と思いました。
自分は幸せになってはいけない、という気持ちだったのではないかと。
そしてネイサンもまた、生物学者を名乗っていましたが実は精神分裂症で、図書館の閑職についている人でした。
互いに生きづらさや、生きることに負い目を感じているふたりの共依存関係。
ネイサンを選び、心中を選択したソフィーは、やっと安らぎを得たのかもしれません。
自殺は良くないと思いつつ、ここまで生きるのが苦しい人たちは、「死」以外ではどう救われることができるんだろう、と複雑で切ない気持ちになりました。
余談ですが、生物学者と名乗るネイサンは罵倒の言葉も難しい単語を使い、それで「お前といるより感染症に罹るほうがマシだ」とか言います。
冒頭のほうのシーンなので精神分裂症とは知らなかった私は「アンタみたいな人、いざコロナにでも罹ったら彼女に泣きついて身の回りのことやらせるんでしょ」とか思ってたら、後で「ファイザー製薬で働いてるんだ (エッヘン)」と言ってて鼻からコーヒー吹きました。
なんちゅうタイムリー……
一週間後にこちらのワクチンを接種予定です。
副反応、出るのかな~と不安だけど、老舗の力を信じます。
たのんます、ファイザーさん。
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