チャップリン「殺人狂時代」あらすじと感想【ネタバレあり】
長年親しまれた「放浪者チャーリー」のスタイルを捨てて挑んだチャップリン作品です。
原案はオーソン・ウェルズですが、ストーリーに肉付けし、脚本を練り上げたのはチャップリンになります。
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あらすじ
30年間、真面目に銀行勤めをしてきて、経済恐慌で解雇された男アンリ・ヴェルデュ。
自分が “青髭” になった話を、墓の中から語りかける。
北フランスのワイン商家に、彼らの家族セルマが銀行預金をすべて下ろした、という手紙が届く。
彼女は出会ってから2週間しか経っていない男といきなり結婚し、それから家族は会っていなかった。
その夫がアンリだ。
彼はすでにセルマを殺害し、その遺体を庭の焼却炉で燃やして彼女の家を売りに出す。
そして内覧にやってきたグロネー夫人を次のターゲットに定めた。
アンリは、金持ちで独身の中年女性と結婚しては殺害し、その財産を奪って自分の本当の妻子を養っているのだ。
グロネー夫人は条件にピッタリあてはまる。
しかし強引に迫りすぎてグロネー夫人は仲介業者ともども逃げ帰ってしまった。
仕方なくアンリは、現在婚姻関係継続中のリディアの元に行く。
その夜のうちにリディアを殺害。
翌朝はまた別のターゲット・アナベラのところに行った。
彼女の前では「ボヌール船長」という名前で、身分を偽っている。
殺害のチャンスを虎視眈々と狙うが、豪快なアナベラの悪運は強烈で、結局何もできずスゴスゴと退散した。
友人から、遺体から検出されない毒がある話を聞いたアンリは、さっそく調合し、ワインの中に仕込んでみる。
そして雨宿り中に知り合った若い女性を家に呼び、彼女に食事と毒入りワインを振舞った。
早く毒の成果を見てみたいのに、彼女はなかなか手を付けない。
彼女の身の上話に耳を傾けるうちにアンリは気が変わり、毒入りワインを下げて彼女を無事に帰らせた。
しかしまた新たなターゲットが必要である。
アンリはグロネー夫人の電話番号と住所を調べ上げ、彼女の家に近い花屋に、定期的に花を贈るように頼んだ。
その手続きをしている最中、アンリを怪しいと睨んでいるモロー刑事が窓越しから彼を凝視していた。
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感想
他のチャップリン作品に比べて喜劇色が少ない、なんて聞きましたが、そんなことないと思いました。
ドジっ子なところはチャーリーと変わらない。
お金を数えるのがベテラン事務員なみに早かったり、歩き方もチャーリーのように不格好です。
花屋から借りた電話でグロネー夫人を口説くセリフは完全に「ロミ男」だし。
聞いてしまった花屋さん、複雑そうな顔してたけど、よく笑わずにいられたな~。
私なら「オエエエ」とか思いながら口元がムズムズしちゃいそう。
そしてアナベラが強烈なキャラ!
彼女に振り回されるアンリのドタバタぶりは、かなり愉快です。
特にボートの上で殺そうとするたび「何してんのよ」と凄まれて「エヘッ エヘッ」と愛想笑いする姿は、元祖ぶりっ子。
てゆうか、アナベラがこの映画のヒロインと聞いて、お茶吹きました。
本当の奥さんでもなく、雨宿りで知り合った若い女性でもなく、アナベラ!?
これまで私が持っていたヒロインの定義が根底から覆されましたw
ラストが処刑場に連行されていく姿なので、たしかにコメディっぽくはないのかもしれません。
でもやっぱり悲愴感がない感じがチャップリン作品ですね。
最後のほうで大切なメッセージを残すところなんかも「独裁者」と通じるものがあります。
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