映画「女優 須磨子の恋」あらすじと感想【ネタバレあり】恋は人を弱くする?
新劇の演出家と専属女優の、実際にあった不倫スキャンダルを何度もコンビを組んでいる溝口健二監督と田中絹代さんで映画化した作品です。
相手役に抜擢された山村聡さんはこの作品で本格的なキャリアを築いていきます。
ベテラン東野英治郎さんと小沢栄太郎さんらが脇を固めます。
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あらすじ
学校で教鞭をとりながら、坪内逍遥と共に設立した文芸協会で新劇運動に関わっている島村抱月。
世間の風は古い価値観から脱却しようとする機運に満ちており、この機にイプセンの戯曲「人形の家」を上演しようと提案する。
当然、抱月が演出することになった。
ずっとやりたかった演目に抱月は興奮するが、悩みは主人公ノラを演じきれる女優が思い当たらないことである。
帰宅しようと建物を出たところ、演劇研究所の研究生・松井須磨子が元夫相手に激しい夫婦喧嘩を繰り広げていた。
仲裁に入った抱月だが、須磨子のその激しい気性にノラ役が出来るのは彼女しかいない、と確信する。
抱月の稽古は厳しかったが、須磨子は必死についていった。
時に全体稽古の後に二人だけで居残りをするくらい、二人ともこの芝居に情熱を傾ける。
そしてその情熱は互いの恋愛感情も高ぶらせた。
抱月には妻子がおり、不倫である。
「人形の家」は成功したが、この不倫スキャンダルにより二人は文芸協会を辞め、家族を捨てた抱月は坪内からも見限られる。
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感想
激しい性格の須磨子に、自由を求める文学青年・抱月。
二人の不倫はナルシスト的な、自分たちの境遇に酔ってる感があります。
何もかもを捨てて再出発。
夢物語としては美しいのでしょうけれど、現実は厳しく、新しく立ち上げた劇団もあっという間に経営難&内紛で解散ピンチ。
このシーン、新聞記事を長々と映しているのですが、音もないのでプレイヤーが壊れたのかと不安になりました。
しかも全文が映ってない。
この演出は酷いですよ、監督… 全部読ませろやゴルァ ヽ(☆`Д´メ)ノ
そして、この二人の純愛にスポットを当てているため、正妻のいち子が悪役のポジションになっているのが気になりました。
もうすぐ長女・春子のお見合いがあるということで、演劇にそんなに力を入れずに本職である教師の仕事のほうを優先してほしい。
そんなお願い事なのですが、坪内が口うるさく反論してくるんですよ、なぜか。
人ん家の問題になぜお前が口出しする? と、かなり坪内にドン引きしました。
婿養子の抱月が反論できないからって、人様の家にやってきてウッザー。
抱月の芸術家としての芽を潰すな、ということなんでしょうけれど、これが結局須磨子との仲を進展させてしまいます。
そのせいで春子はお見合い相手に断られてしまい、一生独身でいる、と決意してしまうまでに傷ついてしまいました。
不倫の恋を貫いたふたりには苦難が待ち受けます。
覚悟はしていたようですが、想像以上だったのでしょう。
ドサ回りに嫌気が差した須磨子は文句を言うようになりました。
困難や貧困に、婿養子先の島村家でヌクヌク暮らしていた抱月の身体は悲鳴を上げます。
須磨子から移った風邪が原因で死去。
抱月を失った須磨子は、周囲の説得で舞台に上がり続けましたが結局心折れて、自ら命を絶ちました。
映画では描かれませんでしたが、この知らせを聞いた時いち子は「死ねる人はいい」と呟いたそうです。
この言葉、すごくいち子の立場と須磨子への気持ちが凝縮されている、と思います。
気は強いけど心は弱い。
女優になりたくてなりたくて家族を捨ててまで限界まで努力した須磨子は、いつから抱月がいないと自力で立ち上がれない人になってしまったのかな、と思いました。
恋は人を弱くする、ということでしょうか。
それまで築き上げてきたものすら「もったいない」と思うこともなく、たった一人の人に縋る情熱的な恋愛。
うん、憧れないな。
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