映画「イノセント」あらすじと感想【ネタバレあり】不倫の報いを受ける貴族たち
20世紀初頭のローマの上流社会を舞台にしたルキノ・ヴィスコンティ監督の遺作です。
主演は「ハンニバル」などハリウッドでも活躍するジャンカルロ・ジャンニーニ。
セクシー系女優のラウラ・アントネッリが貞淑な妻の役を違和感なく演じています。
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あらすじ
貞淑な妻ジュリアーナへの愛情が薄れ、魅惑的な伯爵夫人テレーザとの不倫に耽溺する伯爵トゥリオ。
妻を伴って出向いた演奏会でも、途中で退席するテレーザの後を追い、スネる彼女をなだめて旅行に行く約束をする。
ジュリアーナはトゥリオにはっきりと、妹のような感情しか持っていない、と言われて傷つくが、夫をキツく責めることができなかった。
旅行当日、トゥリオが出かける直前に弟のフェデリコが休暇で戻ってきた。
義姉の面倒を頼む、と言い残してトゥリオは出発していった。
その夜、フェデリコは友人たちを招いてディナーを楽しんでいたところ、ジュリアーナが体調不良を訴えた。
友人のひとりである作家のフィリッポが彼女を支え、献身的に面倒を見る。
そのとき互いに好意を持った。
トゥリオが帰宅すると、ジュリアーナは出かけるところだった。
チェストの上にはフィリッポの本がサイン入りで置いてある。
そのサインに馴れ馴れしさを感じてトゥリオは不愉快な気持ちになった。
辛辣なことを言って、ジュリアーナを怒らせてしまい、険悪な空気のなか彼女は出かけていった。
ジュリアーナが向かった先はオークション会場だと聞いたトゥリオは、彼女に会うため自分もそこへ行く。
会場にはテレーザがおり、結局彼女とのデートになってしまった。
そしてテレーザから、ジュリアーナは来ていないことを教えられる。
嘘の外出。
テレーザに「ジュリアーナはいま浮気相手と会っているに違いない」とからかわれ、トゥリオは真顔になる。
帰宅したトゥリオが妻の居所を執事に聞くと、一度戻ってきたが実家に帰省した、と聞かされる。
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感想
動く絵画ですわ…… (∩☆∀☆)∩
この絢爛豪華さ。
どのショットも何かタイトルつけて額縁に入れて鑑賞したくなる。
「夏の嵐」でも書いたけど、セット、配置、衣装、立ち位置、すべてが「美」を意識していて、芸術作品として完璧なんですよね。
ヴィスコンティの美意識、ほんとに好みです。
申し分のない映像芸術であり、ストーリーのほうも面白かった。
原作を読んでいないのでラストがどうなるのか気になって、グイグイ引っ張られました。
上流階級のドロドロ… たまらん!
自分勝手で二人の女を手玉に取っている気になっているトゥリオが、妻の浮気に嫉妬し、自分の子ではない赤ちゃんに憎悪する醜い姿が痛快です。
赤ちゃんを殺したことで妻の辛辣な本音をぶつけられ、さらにはテレーザからも「愛してない」と言われる情けなさたるや、ざ・ま・あ・み・ろっ♪
溜飲が下がります ( ̄▽ ̄)
(何の罪もない赤ちゃんが殺されたのは可哀想だけど)
このたった二人からの愛を失っただけで自死する弱っちいヘタレ。
トゥリオ、いいとこなしですが、ほとんどのヴィスコンティ作品に描かれる男って、大抵身勝手でありながらヘタレなんですよね。
女性のほうが強いイメージです。
…そんなに多く観てるわけじゃないけど。
と、トゥリオは絶望の中で自死しましたが、みんな不倫の報いを受けたと思います。
フィリッポは若くして病死。
ジュリアーナは愛しい我が子を亡くす。
そしてテレーザは、目の前で自死したトゥリオを捨て置いて、急いで逃げ出しました。
もしかしたら彼女には殺人の容疑がかかるのかもしれません。
それか、トゥリオの死体が何度も出てくる悪夢に苛まれるのか…
追われるように急ぎ足で去る彼女の姿で映画は終了。
この余韻を残すラストも完ぺきでした。
好みの映画です。
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