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映画「天井桟敷の人々」あらすじと感想【ネタバレあり】美女をめぐる恋のから騒ぎ

2024/03/13
 
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駆け出しライターのポムりんごと申します。 最近はめったに雪が積もらなくなった雪国在住。 映画や海外ドラマの視聴が趣味で、それが高じて英語学習もやっています。 英検準一級。TOEIC780。 漫画やゲームも好きな完全内向型。 家にこもってわがまま(セルフィッシュ)三昧に日々過ごしてます。

フランス映画史上最高の呼び名が高いマルセル・カルネ監督の大作映画です。

ナチス占領下で制限が多い中、3年以上の月日をかけて製作されました。

3時間越えの長尺作品ゆえ、二部作の構成をとっています。

第一部を「犯罪大通り」、第二部は「白い男」という副題がつけられました。

主演のジャン=ルイ・バローアルレッティの、共に代表作に挙げられる作品です。

「ラ・ブーム」などに出演したクロード・ブラッスールのお父さん、ピエール・ブラッスールが主要キャストのひとりに含まれています。

息子の出演作↓

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同様に、印象派の巨匠ピエール・オーギュスト・ルノワールの長男で、映画監督ジャン・ルノワールの兄であるピエール・ルノワールも、狂言回し的な役割でチョコチョコ出てきました。

弟の監督作↓

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あらすじ

19世紀・パリ

多くの大道芸人が集まっている大通りは、いつも大勢の人たちで賑わっている。

その一角に、パントマイム劇を売り物にしている劇団「フュナンビュル座」の芝居小屋があった。

その裏口で、俳優志望の青年ルメートルが入団希望の交渉をするが上手くいかない。

そのとき、彼の目を惹く美女が通りを歩いており、ルメートルはすぐに彼女を追いかけて声をかける。

その女性は見世物小屋で働くガランスだった。

彼女はこれから悪党のラスネールと約束があり、ルメートルとはすぐに別れた。

ガランスはラスネールと一緒にフュナンビュル座の客引きパフォーマンスを見学するが、彼女とラスネールの間に入った男性の懐中時計をラスネールがスッて逃げたため、ガランスが疑われた。

警察もやってきて大ごとになったとき、パフォーマーのバチストが目撃したことをパントマイムで表現してガランスの疑いを晴らす。

感謝したガランスは、バチストに薔薇を一輪プレゼントした。

座長の娘ナタリーに恋い慕われているバチストだが、ガランスを愛してしまう。

新団員になったルメートルに自分のアパートを紹介し、バチストは夜にひとりで散歩に出かけた。

道に座りこむ盲目の物乞いと知り合い、彼の行きつけの酒場に行く。

そこでバチストは、ラスネールに同伴しているガランスと再会した。

子分を使ってケンカを吹っかけてきたラスネールをやり込め、バチストはガランスを一緒に酒場を出る。

見世物小屋を辞め、住む場所にも困っているガランスを、バチストはルメートル同様にアパートを紹介し、フュナンビュル座に入れるよう口利きした。

バチストは有頂天だったが、隣の部屋同士になったガランスとルメートルが急接近し、上演中の舞台袖で仲睦まじくしている姿をバチストは見てしまう。

さらに、舞台上のガランスに一目ぼれしたモントレー伯爵が彼女を口説く。

そしてある日、強盗傷害事件を起こして逃亡したラスネールの共犯と疑われたガランスは、モントレー伯爵を頼ってふたりは結婚した。

数年後、バチストはナタリーと結婚し、息子をもうけていた。

劇団の花形役者となっていたが、ガランスが毎晩自分の芝居を見に来ている、とルメートルから教えられ、居ても立っても居られなくなる。

 

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感想

天井桟敷は、舞台から一番遠くて見えにくい、格安の観覧席のことです。

そこで観劇する人たちは、マナーがなってなくて笑ったり怒ったり大声をあげて騒々しくしています。

なのでセリフがないパントマイム劇のほうが、この犯罪大通りの劇場では合っているのでしょう。

そしてこの映画の中でフィーチャーされている人たちも、この天井桟敷の観客たちと変わらず、恋のから騒ぎに翻弄されて賑やかです。

美女ガランスを巡って、男たちは直球で来たり駆け引きをしたり、なんとも騒々しく動き回ります。

ガランスもまた、真っ直ぐなバチストに惹かれているかと思うと、気が合うルメートルと付き合ったり、挙句には伯爵と打算で結婚したり、と安定しません。

この不安定さがファム・ファタールたる所以ですが…

視点人物の中心になっているバチストは、パフォーマーとしての技量が高いにも関わらず父親からダメ人間扱いされ、内気で優しい、応援したくなる人物です。

だけど、妻と息子を捨てる勢いでガランスを追う姿にドン引きしました。

こんなにヤなヤツだったのか、傷ついてヤなヤツになったのか…

わからないけど、もみくちゃにされて彼女に辿り着けないラストは「これでいい」と思わせます。

ナタリーの責めから逃げるように飛び出したガランスは、実は伯爵はすでにラスネールに殺されている、と知ってもバチストの元には帰ってこないでしょう。

謝肉祭で湧いている犯罪大通りの人ごみの中で埋もれていくバチストも、馬車に乗って去っていくガランスも、この群像劇の役割のひとつに過ぎず、天井桟敷で観劇する人たちと変わらないのだと感じます。

 

この作品、衣装やセットなどの芸術性も評価されています。

犯罪大通りの街並みはセットだったというのだから驚きです。

舞台のシーンで、女神像を模したガランスのローブに目が行きました。

足元の、地面に付いている部分のドレープが、本当に大理石の彫刻のように形作られているんです。

白黒だから余計にそう見えたんでしょうね。

この女神像の下で眠る演技をするバチストもまた絵画のよう。

カルネ監督の「占領下だから、なんじゃい」とばかりに、芸術性を妥協なく追及したこの作品、一見の価値ありです。

 

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