映画「真実の瞬間 <とき> 」あらすじと感想【ネタバレあり】密告は偽りでもOK、の恐怖
1950年代ごろを中心にハリウッドでも吹き荒れた「赤狩り」の実態に迫る作品です。
主人公をロバート・デ・ニーロ、その妻をアネット・ベニングが演じます。
デ・ニーロの盟友マーティン・スコセッシが、赤狩りから逃げる映画監督役で出演しています。
あらすじ
ベテラン映画監督デヴィッド・メリルが、新作映画の下見のために行っていたフランスから2ヵ月ぶりに戻ってきた。
出迎えに来たバニーと一緒に自宅に戻ると、女優のドロシーの呼びかけでサプライズパーティーが用意されていた。
しかしドロシーの夫ラリーのせいでサプライズは失敗。
空気を悪くして先に帰ったラリーを追ってドロシーも帰るというので、心配したデヴィッドは彼女を自宅まで送る。
そこでラリーが何冊もの本を焼いているのを目にした。
共産党員だった彼は非米活動委員会の尋問を受けて、精神的に追い詰められていた。
翌日、デヴィッドは息子ポーリーに会うために元妻のルースに家にやってくる。
デヴィッドが忙しすぎたことが離婚原因だったため、仲は悪くない。
ふたりの息災に安心したデヴィッドは、その足で20世紀フォックス社長ダリル・ザナックを訪れる。
そこで自分が共産党員の疑いをもたれていると知る。
弁護士のグラフを紹介され、安ホテルの一室で待ち合わせると非米活動委員会のメンバーも同席。
デヴィッドは10年前に興味本位で出席した共産党の集会のことを突っつかれ、バニーが共産主義者だと言えば見逃す、と言われて激しく抗議する。
憤慨し、証言を拒否してホテルを後にしたデヴィッドは、仕事を干され、FBIの監視をつけられてしまう。
感想
赤狩りの影響でチャップリンはスイスに移住し、エリア・カザンは密告でダシール・ハメットとリリアン・ヘルマンに恨まれた、というハリウッド裏話を聞いたことがあります。
保身のために友人を裏切ったカザンは悪者のように思えましたが、この映画を観ると、まず「○○は共産党員である」という結論ありきで、どんなに違うと言っても聞き入れてもらえないのだと知りました。
たった1回でも反米的な発言をしたり、集会に参加しただけでブラックリスト入り。
仕事もさせてもらえず家族まで巻き込まれるとなると、密告せざるを得なかったカザンに同情する気持ちになります。
そのくらいデヴィッドが受けた仕打ちは酷いものです。
決して友人を裏切らない、と強い信念を持った彼は撮影所に入ることすら禁じられ、途中参加した作品すらもたった1日で降ろされます。
今までの豪邸には住めなくなってルースの家の居候になりました。
ルースが教師に復職しますが、元々仕事人間のデヴィッドは職を求めてニューヨークに向かいます。
しかしそこでもFBIの監視がつき、フィルム店の仕事すら辞めざるを得なくなりました。
…ブラックリストに何人の名前が載っているのか知りませんが、一人一人にいちいち監視をつけるなんて… ヒマなんか?
人員が余ってるんでしょうか?
監視のためにロスからニューヨークにまでやってきちゃうなんて、家族いないのか? 大丈夫か?
デヴィッドよりもFBIのほうが気になってしまいました (;^ω^)
結局ニューヨークに来ても何の解決にもならず、デヴィッドは疲れ果ててロスに戻ります。
ドロシーやバニーの状況も悪化していました。
息子を取り上げられて精神的におかしくなってしまったドロシーは、デヴィッドとルースの目の前で自殺。
バニーからは、委員会にデヴィッドを売ることを許してほしい、と懇願されます。
友人関係も仕事関係も粉々に壊す赤狩りの圧力に、デヴィッドも憔悴していきました。
そして審問会。
諦めの表情を浮かべていたデヴィッドでしたが、それでも最後には抵抗。
怒り狂う裁判長がガンガン打ち付ける木槌の音に負けじと声を張り上げます。
この激しいシーンが、赤狩りの過酷さをより際立たせていました。
個人的に共産主義の考え方には同意しませんが、権力を振りかざして弾圧するのは違うと思います。
それもほとんど濡れ衣と言える程度のことで…
いろいろ考えてはしまいましたが、重いテーマのわりには時間が短いためアッサリとした印象がある映画です。
赤狩りが行われたときのハリウッドの状況を知りたい時の参照にもなると思いました。
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