映画「街の灯」あらすじと感想【ネタバレあり】手のぬくもりが覚えている
1931年公開。
喜劇王チャールズ・チャップリンが、毎度のごとく監督・主演・脚本・音楽を担当した、笑いの中にペーソスがある長編作品です。
お馴染みのキャラクター・放浪者チャーリーが盲目の花売り娘に恋をして、彼女のために奮闘する姿を、相変わらずキレッキレの動きで笑わせながら、泣かせるストーリー展開に持って行っています。
あらすじ
とある街の公園に「平和と繁栄の記念碑」という銅像が建てられ、その除幕式が行われた。
三位一体になっている銅像を被せていた布が外されると、中央の人物像の膝に、ひとりの男が眠っており、観衆は驚きの声を上げる。
市長や警備隊は慌ててこの男・放浪者チャーリーを捕まえようとし、チャーリーも銅像から下りて逃げようとするが、右側の銅像の剣にズボンが突き刺さってしまったり、銅像の顔の上に座ってしまったり、さんざん無礼なドジを披露した後、這う這うの体で逃げ出した。
おかしな行動ばかりするチャーリーは、道を横切るのに、通りに止まっている車の後部座席を通り抜けて反対側の道に出る。
そこには街角で花を売っている娘が座っていた。
車のドアが閉まる音に反応した娘は、チャーリーを車の持ち主=お金持ち、と思い、花を買ってくれないか、と声をかける。
一輪の花を差し出す彼女に一目惚れしたチャーリーは、なけなしのコインを手渡すが、それを取り落としてしまった。
拾おうとする娘の仕草で、彼女が盲目だと知る。
もっと話そうとするが、チャーリーが通り抜けた車の持ち主が戻ってきて、車に乗って走り去ってしまう。
その音を聞いた娘は、彼がおつりも受け取らずに去ってしまったと思い込んだので、チャーリーは真実を言えなくなってしまった。
宿無しのチャーリーは、その夜は川沿いのベンチで過ごすことにする。
娘から買った花を愛でていると、先ほどから川のほとりで何かしている男性が、実は自殺する準備をしていたことに気づいて、急いで彼を助けようとした。
誤ってチャーリーのほうが沈んでしまったり、それを助けようとした自殺志願者もチャーリーに引っ張られて川に突っ込む羽目になったりしながら、彼は自殺を思いとどまった。
自殺志願者はかなり酔っていた。
彼はチャーリーを友達として自宅に招待する。
信じられないほど目を見張る豪邸で、執事もいる。
まだ飲み足りない金持ちの彼は、チャーリーを連れて夜の街に繰り出し、翌朝また戻ってきた。
するとこの豪邸の前を、昨日の花売り娘が歩いている。
チャーリーは金持ちからお金をもらい、花売り娘から駕籠に入った花を全部買い取った。
花をすべて金持ちの執事に預け、自分は金持ちが「くれる」と言ったロールスロイスに彼女を乗せて自宅に送り届けることに。
放浪者とはいえ精神的には紳士のチャーリーは、家に上がりこむことはしないが、覗き見はする。
彼女は、粗末なアパートの一室で祖母とふたりで暮らしていた。
もっと彼女の力になりたいと思ったチャーリーは、働くことを決意。
街の清掃員として働き始めた。
一方、金持ちは酔いが醒めるとそのときの記憶をすっかり無くしており、チャーリーのことも覚えていない。
それでも清掃員の給料で金持ちのフリを娘の前ですることはできた。
しかしある日、ウイーンの医師が盲目を治す手術に成功したニュースと、彼女と祖母が家賃の滞納により明朝までに支払わなければ立ち退きを余儀なくされることを知る。
助けることを請け負うが、運悪く、遅刻によりチャーリーは清掃員を解雇されてしまう。
そこで彼は賭けボクシングの試合に出て、賞金を彼女にあげようと決める。
感想
物語の最後、花売り娘の目は見えるようになっており、余ったお金でお店も持っていました。
かたや、いろいろあって警察に捕まり、ようやく出所したチャーリーは一段とみすぼらしくなっています。
花売り娘が花を売っていた街角にできた大きな花屋さん。
その場所にやってきたチャーリーは、窓ガラス越しに彼女を見つけて瞠目します。
だけど彼女は初めて見るチャーリーを、自分を助けてくれた紳士だとは気づきません。
はにかむ彼に声をかけ、店の外に出てふと彼の手に触れたとき、盲目だったときの感覚が蘇ります。
「あなただったの?」
自分の恩人にようやく気づきました。
人間には五感が備わっていて、そのいずれも記憶を呼び起こす手助けをします。
視覚がなかった彼女は、その他の感覚が非常に優れていたのでしょう。
触覚で恩人に辿り着けました。
当たり前にあるものとして普段はあまり重要視していることではないかもしれませんが、感覚の力というのは物凄いものだと思います。
いわゆる「頭で考えるより体で覚える」は、感覚をフルに活用して能力を引き出すものなんですよね。
エラリー・クイーンの推理小説「Yの悲劇」では、目撃者は聾唖で盲目、そして口もきけない女性だったのですが、彼女の嗅覚と触覚が事件解決に大きく貢献しました。
感覚と思考は対を為しているようですが、両方をバランスよく使っていきたいところです。
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完璧主義者で知られるチャップリンは、この作品を撮るのに一年以上かけました。
そのほとんどはチャーリーと花売り娘の出会いのシーンです。
どうやったら目が見えない彼女が、彼をお金持ちだと思い込むか。
何度も取り直しては悩み、現場が停滞することもしばしば。
この苦悩ぶりはチャップリンの自伝や、死後の特集番組などでも語られています。
遊びたい盛りだった花売り娘役のヴァージニア・チェリルも一度は解雇されました。
そんな苦節を経ての成功に、チャップリンは心から安堵したそうです。
映画そのものも感動する作品ですが、こうして裏で苦労が報われるというドラマがあったことも感動的に拍車をかけていると思いました。
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