映画「女殺油地獄」 (1992年) あらすじと感想【ネタバレあり】
近松門左衛門の歌舞伎浄瑠璃を原作にした、五社英雄監督の遺作です。
主演は樋口可南子さんと堤真一さん。
藤谷美和子さんも加わり、日本アカデミー賞助演女優賞を受賞。
他に岸部一徳さんや長門裕之さんなどのベテランが配されています。
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あらすじ
油問屋の大店・河内屋は、先代が亡くなった後、丁稚奉公人の徳兵衛が先代の妻おさわと結婚して主人になっている。
先代の息子与兵衛はそのことに反発して放蕩三昧の日々を送っていた。
河内屋から暖簾分けしてもらった豊島屋の女将お吉は、赤子の頃から知っている与兵衛のことをいつも気にかけている。
与兵衛もそんなお吉を頼って豊島屋に入り浸っており、徳兵衛や父親違いの妹おかちから贈られる金品は、いつもお吉を通して渡されていた。
ある日お吉は、与兵衛が悪友たちと一緒に、晒し刑にされている受刑者たちを囃し立てているところを目撃。
先導しているのは、油問屋の元締めをしている小倉屋の一人娘小菊だった。
与兵衛と小菊が待合茶屋で密会していることを知ったお吉は、二人に別れるように進言する。
与兵衛は小菊と心中することすら考えるほど彼女を愛しているが、小菊は、与兵衛に脅されてイヤイヤ付き合っている、とお吉にこぼすのだった。
そしてお吉が黙っていたにも関わらず、二人の仲は周囲の知れるところとなり、与兵衛は小倉屋の主人から折檻を受け、徳兵衛たちから河内屋の納戸に監禁される。
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感想
わがままで甘ったれで乱暴者。
そんなジャイアンみたいな与兵衛は、恋愛面も自分勝手です。
小菊が自分のことを「女たらし」だと言っていたと聞けば、納戸から抜け出して彼女の元へ行き心中しようとしますし、お吉に迫られて一回寝たら「駆け落ちしよう」と持ち掛けます。
刹那の愛にロマンを感じていたのでしょうか?
いつも匕首を褌に忍ばせて、やれ殺すのなんのと物騒だったらありゃしない。
とはいえ危険な与兵衛の傍にいる女たち… お吉も小菊も危険な魔性の女です。
与兵衛との仲がバレた後、小菊は良家に嫁入りさせられますが、与兵衛と逢引きするのみならず、彼の悪友たちともねんごろになるアバズレでした。
そしてそれを窘めたお吉の足を踏みつけて、立場が上のことを知らしめる悪女。
五社映画らしい女同士の戦い!
お吉の小菊ヘイトが高まります。
お吉は小菊の悪行を与兵衛にバラし、演じている人の色気全開で与兵衛に迫りました。
そのときのセリフが「あんな小娘に鼻毛読まれて…」と、聞いたことのない表現に ん? と思って調べてみると
【鼻毛を読む】
女が自分に惚れている男をいいように操ること
へーーー………
「鼻づらを引き回す」 (他人を自分の思うままに操ること) は聞いたことあったけど、こんな言葉もあるんですね。
鼻毛が、読めるほど外に出ているのか… なるほど。
飛び出た鼻毛 (出とらんわ!) を小菊に読まれて、お吉に鼻づらを引き回される与兵衛。
鼻が災難。
しかし災難は鼻だけに留まらず、お吉の夫に刃物を向けられてビビリ倒します。
お吉のことも小菊のことも諦めて、油屋修行として大阪の大店に奉公に出ることを決めた矢先、急に与兵衛のことが惜しくなったお吉にまた迫られてしまいました。
一時の激情でお吉に執着したけれど、与兵衛は結局お吉のことを恋愛対象として見ていたわけではなく、お吉のほうも多分そうだったと思います。
でも去っていかれるのも惜しく、縋り付いてしまう。
そのしつこさに、与兵衛の匕首がお吉を襲いました。
油樽を倒しながら逃げ回るお吉… のはずですがツルツル滑ってなかなか逃げられません。
与兵衛のほうはもっと豪快で、何度も大股おっぴろげてすっころぴ、すごい角度の映像が何度も目に飛び込んできて… 笑ってしまいました (≧▽≦)
お吉が殺されるというシリアスシーンだけど、いやでもこれ絶対笑いどころだよなぁ。
ツルツル状態でのたうち回る姿って、バラエティー番組とかでも爆笑を誘う鉄板ネタだし。
それでも狂気のシーンです。
お吉は殺され、与兵衛はその亡骸の傍に佇み映画終了。
原作では与兵衛は捕まるそうですが、この映画では与兵衛がどうなったかは知らされないまま終わります。
捕まったか、何食わぬ顔で大阪に行ったか… 想像の余地を残していました。
去り行く与兵衛に縋り付かなければお吉は殺されなかったでしょう。
赤ん坊の頃から知っているから、と何かと世話を焼いて、彼の巣立ちを邪魔してしまっていたのかもしれません。
そんな執着というか、息子のような存在に向ける愛情と恋情を同化した悲劇の果ての惨状。
原作からかけ離れているそうですが、人間の内面を上手く描いていると思います。
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