映画「英国王のスピーチ」あらすじと感想【ネタバレあり】英国王室ド根性物語
現エリザベス女王の父王・ジョージ6世と、その妻エリザベス妃、そしてオーストラリア出身の言語療法士が、二度目の戦争へと向かう困難な時代を背景に、国王の吃音を矯正して国民を鼓舞するスピーチをやり遂げる、史実を元にしたヒューマンドラマです。
アカデミー賞主要4部門を受賞し、日本でも舞台化がされました。
あらすじ
英国王ジョージ5世の次男・ヨーク公は、幼少期から吃音に悩んでいた。
王族であれば国民の前でのスピーチは避けられない。
しかし彼は家族との会話でですら、どもってしまう。
さまざまな療法が試されるが何一つ功を奏したものはない。
短気なヨーク公は癇癪を起し、もう吃音矯正はやらない、と妻のエリザベス妃に伝える。
しかし妃は公に内緒で、言語療法協会から紹介された人物の元に、お忍びで赴く。
ライオネル・ローグというオーストラリア出身の男性だった。
ドクターという肩書はなく、ドアには「言語療法専門」と書いてある。
彼は、本人が直接くること、そして矯正レッスンはこの家で行なうことが絶対だと主張した。
しぶしぶ連れてこられたヨーク公は懐疑的だった。
呼び方にしてもローグが自分のことを “ライオネル” と呼んでくれ、と言っても頑なに “ドクター” と言って一線を引こうとする。
公自身のことも、家族以外から “バーティ” と呼ばれることを拒む。
何が原因で吃音になったのか定かではないけれど、子供の頃の話などをしてその原因を探られるのを嫌がった。
いよいよレッスンが始まり、ローグはシェイクスピアを朗読させた。
出だしからなかなか声が出ず、ほんの一節を読むだけでも時間がかかり、公は「無理だ」と言って帰ろうとする。
ローグは引き留め、クラシック音楽をかけたヘッドフォンを装着させて、もう一度読むように促す。
今度は録音するというのだ。
自分の声がまったく聞こえない状態で朗読したが、上手く読めた気がせず、公は癇癪を起して帰ることにした。
帰り際にローグは、たった今録音した円盤を公に渡した。
父王ジョージ5世のクリスマス恒例ラジオ・スピーチを傍で聞いていたヨーク公は、その淀みなく流麗なスピーチに気後れを感じる。
放送を終えた国王はヨーク公に、今や王族は国民に自身の声を届けなければならない、と説く。
後継者である長兄デイヴィッド皇太子が、離婚歴のある既婚アメリカ人女性シンプソン夫人との恋愛に現を抜かしていることを危惧し、ヨーク公に次期国王になってほしいと願っているのだ。
公にとってプレッシャーだった。
思い悩んでイラついた公は、先日ローグからもらった円盤をレコードにかけた。
どもりがほとんどなかった。
一緒に聞いたエリザベス妃も驚きを隠せない。
翌日夫婦そろってローグの元に行き、3人でレッスンを開始した。
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感想
ジョージ5世が崩御され、その場でデイヴィッド皇太子が新国王エドワード8世となりました。
母メアリー妃、弟ヨーク公に祝福されるも、エドワード8世は戸惑い、母に縋りついて泣きだします。
部屋を出てからヨーク公は王に「今のみっともない態度は何だ」と詰め寄りました。
エドワード8世は泣きながら、これでもうシンプソン夫人と結婚できなくなった、と呟きます。
そっちか―――い!( ゚Д゚)
てっきり国王として統治する自信がなくて泣いたのかと思ったのですが…
あ、でもそっちもあるかもしれないですね。
後継者として帝王学を学んできているとはいえ、ナチス・ドイツがヨーロッパに台頭してきて世界が一触即発の危機的状況になっている時期でした。
後世を生きているこちらは、どういう成り行き・選択・結末となったか分かっていますが、当時を生きていた人たちはきっと先行きが不安だったことと思います。
絵空事ではない実際の戦争が迫っている…
王として難しい決断が迫られる場面が多々あることは予測されます。
議会とも揉めたエドワード8世は、シンプソン夫人との結婚を選び王位を捨てます。
そして王位についたヨーク公はジョージ6世となりますが、やはりこちらも泣いてしまいました。
ガチガチに帝王学を学んだわけでもなく、吃音も治っていない。
エドワード8世より分が悪いです。
どれほどのプレッシャーに耐えなければならなかったか、想像すらつきません。
吃音になった原因を知ることを拒んでいたヨーク公ですが、徐々にローグに心を開いていき、彼に投げかけられた質問に答えていきます。
そこで幼少期に乳母から虐待をうけていたこと、そして末弟の死がトラウマになっていたことがわかり、それが吃音の原因でした。
辛い記憶に蓋をして忘れようとしていた心に無理がかかり、それが吃音という形で心のSOSが出ていたのです。
原因が分かったことは矯正の第一歩になりました。
歌や罵る言葉などはどもることなく言えるので、そういった部分も取り入れて、ローグのレッスンでどんどん滑らかに話せるようになってきます。
トラウマとなっていることの弊害が思いがけないところで現れる。
意外とあることだと思います。
ストレスが原因で帯状疱疹が現れたり、冷え性が腰痛の原因になったり…
原因と症状の因果関係がよく分からん!っと、なってみてびっくりすること結構ありますよね。
何かを克服したい以上、その原因を探らなければ対処法が見つかりません。。
それが思い出したくないトラウマだった場合、とても痛みを伴う作業であることは想像に難くありません。
だけど、どうしても乗り越えたいのなら向き合う勇気が大切に思えます。
ただ、本当に想像を絶するほどの辛い記憶をもっている方もいるので、ゆっくり時間をかけていきたいものですね。
焦りは禁物です。
この映画が公開されるまで、兄エドワード8世の「王冠を捨てた世紀の恋愛」のほうが有名すぎて、弟ジョージ6世にはスポットが当たっていなかったように思えます。
“身分違いの恋”
“国王という地位すら捨てて貫いた純愛”
一見ロマンティックな響きがありますが、身内からしたらたまったものではなかったと思います。
やはりおとぎ話ではないのですから…
エドワード8世とシンプソン夫人の恋愛は、歴史関連・王室関連の、軽い読み物も含む文献に数多く言及されています。
しかしいざ映画になってみると、このお二方のスキャンダラスな恋愛より、ジョージ6世のド根性物語のほうが遥かに見ごたえがあって面白かったという事実。
なんというのだろうか…
エドワード8世のロマンティック一直線な行動は、その後の夫妻の行動から見ても、ちょっと大人になり切れていない人たちの、自分たちの世界に酔っちゃったイタさを感じてしまうせいかもしれません。
反面ジョージ6世の物語は、自分の欠点を克服するために、すぐに癇癪を起す性格を改めて、気が合わないと思っていた平民であり移民のローグを信頼してついていく、という精神的な成長がみられます。
そしてエリザベス妃もまた一途にジョージ6世を愛し支える賢夫人として描かれているところも「ああ、こんな夫婦いいなあ」と思わせるからでしょうね。
申し訳ないけれど、エドワード8世とシンプソン夫人には憧れません。
燃えるような恋もいいかもしれませんが、周囲の迷惑を考えていない子供っぽい人たちには付き合いきれないよな、と思いました。
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