「イヴ・サンローラン」あらすじと感想【ネタバレあり】映画とファッションの蜜月
ココ・シャネル、クリスチャン・ディオールらが巻き起こした新しいファッション革命に新たな才能として席巻した「モードの帝王」イヴ・サンローランの伝記映画です。
この作品でも語り部として重要な役割を果たしている、恋人兼ビジネスパートナーのピエール・ベルジェとイヴ・サンローラン財団の協力により、実際のアーカイブ衣装で撮影されました。
主役のイヴを演じたピエール・ニネがセザール賞主演男優賞を獲得しています。
あらすじ
子供の頃からファッションに関して、家族や親族にもアドバイスをしていたイヴ・サンローランは、それから成長し、一流デザイナーのクリスチャン・ディオールのメゾンで働いていた。
イヴの才能に目をかけていたディオールは、彼にも意見を活発に出させて信頼を置いている。
ディオールが亡くなると、イヴは後継者としてディオールの看板デザイナーとなった。
初めて全て自分でデザインしたコレクションでのファッションショーで、ディオールの特徴を踏襲した、シンプルかつエレガントなカクテルドレスやトラペーズラインが好評を博し、トップデザイナーとしてもてはやされる。
ショーの成功に一安心して休暇を過ごしているとき、実業家のピエール・ベルジェと知り合って二人はたちまち恋に落ちた。
それまでピエールはファッションには興味がなく、文学や絵画に目を向けていたのだが、イヴと同棲すると同時に彼の支えとなり、ファッションについても理解を深めていく。
ピエールはイヴがデザインに打ち込めるよう心を配るが、アルジェリア独立戦争による兵役をイヴから遠ざけることはできなかった。
徴兵されたイヴは数か月後、精神病院に入院させられる。
躁うつ病という診断が下り、そのためにディオールを解雇されてしまった。
それを機にイヴは、ピエールに協力をお願いして自分のメゾンを持つことに決めた。
まだ弱っているイヴをピエールは心配するが、いよいよ自分の好きなようにデザインができる、とイヴはやる気にみなぎっている。
ピエールはメゾン開業のための資金繰りに奔走することになった。
イヴを解雇したディオール側に賠償金も払わせる。
晴れて自分のメゾンを持つことが出来たイヴは意欲的にデザインを制作し、ファッションショーも開催する。
ショーは好評を博したが、新聞の批評からは痛烈に酷評された。
しかしイヴはその評価をものともせず、次々と革新的なデザインの服を発案し作り上げていく。
特に抽象絵画の巨匠ピエト・モンドリアンの作品から着想を得た「モンドリアン」のラインは世界中にイヴ・サンローランの名を知らしめた。
一躍時代の寵児となり、生活は派手になる。
アルコールとドラッグに溺れ、お気に入りのモデル・ヴィクトワールと性を匂わせるような戯れをピエールに見られても平然とするようになった。
営業をかけたり秘書的な業務も担うピエールだが、イヴとの恋人関係は徐々にギクシャクしてきた。
嫉妬心から、ピエールは自分もヴィクトワールと関係を持ってイヴに仕返しする。
新品価格 |
感想
ディオールから解雇されたイヴは、これをチャンスに変えて自分のブランドを立ち上げることにしました。。
精神のダメージがまだ大きい、と考えているピエールは異を唱えますが、イヴは「ぼくが弱くても君は強いだろう?」と言ってビジネスパートナーに据えます。
そして「自分のやりたいようにデザインできないのなら死んだ方がマシだ」と言って、自分の中からディオール色を拭い去ろうとするのです。
これまでは専属デザイナーの立場から「クリスチャン・ディオールのクチュール」という枠組みから外れないデザインを作ってきました。
しかし自分のメゾンを持てば、その殻を破って自分の好きなデザインができるようになります。
そのことにイヴは興奮するのです。
解雇というマイナスの出来事が降りかかったとき、「この先どうしよう…」と不安で落ち込むと思いますが、逆に考えると「先が見えないからこそ好きなように人生を塗り替えられる」とプラスに捉えることもできます。
これまで時間的な関係で思い切りやることができなかったことを、ちょっとやってみるチャンスかもしれません。
きっと意外な発見があったりリフレッシュ出来たりして、次の仕事につなげる意欲がこれまで以上に湧いてくると思います。
ピエールとも関係を持ったヴィクトワールに見切りをつけ、イヴはベティとルルという新たなミューズに自分のコレクションモデルを頼みます。
新ファッションライン「スモーキング」のショーは、この二人を中心にモデルたちが男性を性的に挑発するような演出にして物議を醸しました。
このショーと同様に、紫煙が漂うナイトクラブのような雰囲気の狂乱じみたパーティーに毎夜身を置くイヴにピエールは我慢できなくなります。
ついに彼はイヴに「すべてを手に入れたのに酒浸りになって。いったい何が欲しいんだ」と怒鳴りました。
するとイヴは「欲しいのは…君との時間だ」と切なく叫んでピエールを驚かせます。
自分で決めたこととはいえ、年に4回もコレクションを開催し制作に追われ、ピエールもまたそれに伴って事務方として忙しいため、恋人同士の蜜のような時間がなくなっていたことが辛かったのです。
加えて次々と新作を発表して名声は得たけれど、期待されるプレッシャーとデザインする意欲が無くなってきていることも原因でした。
イヴの本音を知り、ピエールもまた嫉妬するくらいイヴを愛しています。
淋しい時、忙しい時、本音をきちんと伝えることは大切ですね。
カール・ラガーフェルドの彼氏・ジャックと、ふとしたことから恋仲になったイヴ。
イヴは彼との恋愛にのめり込み、ついにピエールに「ジャックを愛している。でも生涯の恋人は君だけだ」と涙ながらに告げました。
ちょっと身勝手な言い分に聞こえますが、分かる気がします。
いま心を奪われている相手とはまた別に、恋人という関係ではなくなっても生涯を通じて付き合う人、とか、生涯で一番愛した人、という存在がいる。
こういうことって、普通にあることなのではないでしょうか。
そういう相手が “ソウルメイト” と呼ばれるものなのかもしれないですね。
寂しさを感じる瞬間もあるだろうけれど、出会えたら素敵だと思います。
イヴ・サンローランの “YSL” のロゴを見て「ヤクルトスワローズ」なんてお茶目なマジボケをかまさない程度には知識がありますが、自分の生活にとんと縁がない華やかな世界なので、そのファッションの歴史を垣間見れて興味深かったです。
以前書いた映画「昼顔」でのドヌーヴの衣装も実はサンローランのデザインでした。
ミリタリーライン、という有名なコレクションでしたが、ドヌーヴの美しさを際立たせる上品なデザインでしたね。
ドヌーヴとサンローランは、オードリー・ヘップバーンとジバンシィのように信頼し合っている関係だったそうです。
女優とデザイナーがいい関係を結んでいると、美しい画が出来て印象的な映画作品になるのかもしれないですね。
ルル役ローラ・スメット他出演作品
「ゼロ時間の謎」あらすじと感想【ネタバレあり】現代のフランスに移したクリスティー作品
ヴィクトワール役シャルロット・ルボン他出演作品
「ムード・インディゴ~うたかたの日々」あらすじと感想【ネタバレあり】
こちらもよろしくお願いします
「昼顔」あらすじと感想【ネタバレあり】妄想を現実にしてみたら…
新品価格 |