映画「それでも恋するバルセロナ」あらすじと感想【ネタバレあり】から騒ぎな恋に虚脱感
ウディ・アレン監督が描く恋のから騒ぎです。
ペネロペ・クルスとハビエル・バルデムの夫婦共演。
クルスがアカデミー助演女優賞を獲り、同じく主人公を演じたレベッカ・ホールもゴールデングローブ主演女優賞にノミネートされました。
アレン作品常連になりつつあるスカーレット・ヨハンソンも登場します。
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あらすじ
堅実派で申し分のない婚約者がいるヴィッキーと、彼と別れたばかりで自分探しをしている夢想家のクリスティーナは、なぜか気が合う親友同士。
たいていの意見は合うのだけれど、恋愛に関してはまったく正反対の考えを持っている。
そんな二人がスペイン・バルセロナに一緒にやってきた。
宿泊先は現地に住むヴィッキーの親戚宅。
ある日叔母のジョディの誘いで画廊に行くと、セクシーな雰囲気を持つ男性がクリスティーナの目を惹いた。
ジョディに聞くと、彼は画家のフアン・アントニオといい、妻を殴って離婚された人だという。
帰りにヴィッキーとクリスティーナだけでレストランで食事をしていると、別のテーブルにフアン・アントニオがいることに気が付いた。
しかも大勢の女性たちを侍らせている。
ヴィッキーは興味を持たないが、クリスティーナは彼に魅力を感じて視線を送る。
狙い通りフアン・アントニオは彼女たちのテーブルにやってきて、これから1時間後に出発するオビエドでの週末に誘ってきた。
その誘い文句が露骨に3Pを狙ったもので、ヴィッキーは怒って辛辣な口調で断る。
しかしクリスティーナはその誘いに乗りたくてたまらない。
結局押し切られる形で、三人でオビエドに向かった。
フアン・アントニオもあんな誘い方はしたが弁えており、ホテルでは彼だけ個室をとり、彼女たちは相部屋となるように手配する。
しかし翌日、三人で仲良く観光をしてホテルに戻った後、クリスティーナはフアン・アントニオの部屋に行き、彼を誘惑。
彼も受け入れようと、いい雰囲気になった矢先、クリスティーナは体調不良を訴え出る。
胃潰瘍だった。
翌日、クリスティーナはホテルのベッドで一日中寝ている羽目になり、ヴィッキーとフアン・アントニオは二人で出かけることになった。
フアン・アントニオの提案で、彼の父が住む実家へ遊びに行くことにする。
そこで作品を見せてもらったり、元妻の話などを聞いているうちに二人は親密な関係になり一線を越えた。
オビエドからバルセロナに戻るヘリの中で、何も知らないクリスティーナだけが饒舌だった。
それ以来ヴィッキーはフアン・アントニオのことが頭から離れず苦悩するが、彼はすでに彼女に興味を失っており、クリスティーナと同棲を始める。
ヴィッキーはモヤモヤした気持ちを抱えたまま婚約者のダグと結婚する。
そしてフアン・アントニオと一緒に暮らしているクリスティーナだったが、彼が前妻のマリア・エレーナを一緒に住まわせることにしたため、関係に変化が生じる。
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感想
ヴィッキーの夫・ダグは非常に現実派で地に足のついた考え方を持ち、しっかりした人です。
ヴィッキー自身もまた堅実的で、精神的に大人な女性であり、そこが魅力となっている人です。
だからダグはクリスティーナにあまり好感を持っていませんが、ヴィッキーの友達だから仕方なく一緒に行動しています。
ダグから見るとクリスティーナは「簡単に手に入る女性」なので興味すら湧きません。
その点ヴィッキーは手に入れるのに苦労したから大切に想っています。
ダグのクリスティーナ評は結構辛辣で、「夢想家で将来のこともろくに考えず、いつまでも “自分探し” ばかりやっていて、そのくせ世の中をバカにしている」と吐き捨てます。
えーと… 実は私もクリスティーナ寄りの人間で、正直耳が痛いですが、当たってる… (;・∀・) と認めざるを得ませんでした、
ダグのようにケーベツの眼差しで見られたことも何度もあります。
なかなか会社勤めのような堅実な道に進むのが難しく、なんとかフリーランスとかで生きていけないかと模索する姿が “自分探し” に映ってしまうようです。
「世の中をバカにしている」というのも、クリスティーナの年齢くらいの頃はそうだったかも。
自意識が肥大しやすいお年頃だから。
自分のことをバカにする人たちを、逆に心の中でバカにしてやらないと自分が潰れてしまいそうな気がして必要以上にツッパっていた気がします。
さてそんな時期を経て、いま現在「人は人」という気持ちでいたら、バカにする人たちがあまり気にならなくなり、だいぶ精神的にラクにはなりました。
しかし彼らから見た “自分探し” とやらはまだ終わっておらず、いまだ生き方を模索している最中です。
これはもしかしたら終わりがないかもしれないな、と思っています。
成功した芸術家の人なども、生き方を見つけて自分探しは終わったのでしょうが、次の作品の構想やテーマを決めるときは、やはり夢想家の側面が出てくると思うのです。
そう考えると、夢想家・空想家というのはずっと変わらない性質だと思います。
「いい年をしてるのに、いいかげん現実を見ろ」と言われそうですが、多分治ることはないです。
でも治す必要もないし、ダグのようなタイプとは相容れない、というだけで、自分の人生なのだから好きなだけ “自分探し” をしていいのではないでしょうか。
まあ “自分探し” という言葉、アイデンティティーがない人っぽくて、あまり好きじゃないですが…
結婚してからもフアン・アントニオへの気持ちが収まらないヴィッキーは、不倫をしているジュディにその話をしてしまいました。
ヴィッキーが不幸な結婚生活をしていることを気の毒に思ったジュディは、友人を介してパーティーにフアン・アントニオを呼びます。
クリスティーナもマリア・エレーナも彼の元を去った今、寂しさを抱えているフアン・アントニオは、ジュディの思惑通りヴィッキーを誘ってきました。
そしてヴィッキーも拒もうとしつつも抗えず、彼の家に行きます。
情熱の国スペインにふさわしい男性像のフアン・アントニオです。
いい! と見たら直球で口説いてきます。
行動力と決断力があるリーダーシップタイプで、こういうオスの魅力にあふれた男性にコロリと参る女性は多いと思います。
ただ、駆け引きがない分スマートさに欠け、別れようとするときの言葉のデリカシーのなさは致命的。
オビエドから戻ってヴィッキーに興味をなくしてクリスティーナに気持ちが行ったとき、オブラートに包まず、はっきりとそう言い切って「婚約者と結婚しろよ」と突き放しましたからね。
そして周囲から誰もいなくなると、それまで存在を忘れていたヴィッキーに言い寄ります。
彼を忘れられなかったヴィッキーは有頂天になりますが、彼がただ自分の寂しさを埋めるために近寄っていることに気づかないのは…
申し訳ないけれど、可哀想なアタマだな、と思いました (;´・ω・)
しかし寂しくなると思い出して連絡してくる、というのは男女問わず結構ある気がします。
孤独を埋めてくれる存在を欲し、相手の優しさに甘えさせてもらう。
これで結婚までいくカップルもいますが、何年も依存関係の状態のまま何も進展しない人生になる危険もあります。
テンポはいいのですがナレーションが多すぎて、映画というより紙芝居みたい、と感じました。
ここのナレーションは俳優のセリフとして持ってきてもいいはず、と思った箇所がかなり多くて、せっかくの俳優たちの演技がもったいないことになっています。
そして女性にモテモテだけど恋愛に本気にならない外道な男性が大好きマンの私でも、フアン・アントニオのようなオラオラ系はまったく刺さらなかったです。
結局から騒ぎで終わった結末に、ヒロイン二人と同様、こちらの顔も「あ~あ」というような虚脱感を隠せない真顔になってしまいました。
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