映画「アラバマ物語」あらすじと感想【ネタバレあり】高潔さは一日にしてならず
原作者ハーパー・リーの幼少期の体験を映画化したロバート・マリガン監督の名作です。
後に映画監督になるアラン・J・パクラが製作を務めています。
主演のグレゴリー・ペックはこの作品でアカデミー賞主演男優賞を受賞。
そしてロバート・デュバルのデビュー作でもあります。
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あらすじ
1932年。
のどかな町アラバマ州メイカムで暮らす6歳の少女スカウト。
弁護士の父アティカスと、4歳上の兄ジェムと暮らすお転婆な娘である。
この夏はお隣のおばさんの家にディルという男の子が遊びに来ており、兄妹は彼と友達になった。
近所には、家族以外には誰にも姿を見せたことがないブーという男が住んでいることをディルに教える。
父親を殺そうとした、などの恐ろしい噂があり、その家は化け物屋敷のような目で近所では見られている。
ある日、アティカスの元に市長がやってきて、白人女性に暴行を加えた黒人男性の弁護をお願いしてきた。
人種差別が激しい南部であり、どう考えても被告には不利な状況の中、アティカスは即座に引き受けた。
スカウトがなぜ引き受けたのか父に聞いてみると「子供たちに誇れる信念を持ちたいからだ」という答えが返ってきた。
そんな父をスカウトも誇りに思う。
スカウトはジェムとディルと遊んで過ごすが、やはり目につくのは化け物屋敷。
うっかり敷地内に入り込んでしまったとき、後ろからの気配に恐怖して逃げ帰った。
しかし怖がってばかりでは埒が明かない。
三人は夜遅くに化け物屋敷に行き、ブーの姿を見てやろうとする。
それでもやっぱり怖くなって慌てて逃げ出し、フェンスの破れ目から抜け出そうとしたが、ジェムのズボンが引っ掛かってしまった。
ズボンを脱ぎ捨てていくが、ジェムがその後ひとりで取りに戻ると綺麗に畳んで置いてあった、と聞いてスカウトは驚いた。
ひと夏が過ぎ、スカウトは学校に入学。
父が黒人の弁護を引き受けたことで同級生の男子とよくケンカするようになっていた。
そしてまた夏がやってきてディルと再会した頃、アティカスが引き受けた裁判が始まる。
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感想
ディルのモデルは作家のトルーマン・カポーティなのだそうです。
共通の体験をした幼なじみが後に二人とも大成するとか、子供時代から「類は友を呼ぶ」ってあるんですね~。
ふたりはジェムと共にアティカスの裁判を傍聴します。
この裁判所が、1階は白人だけで椅子もありますが、2階は黒人だけで立ち見です。
子どもたちは2階の最前列から裁判を見学。
おそらくアティカスの立場から「黒人の味方」と見られたためでしょう。
そして陪審員も全員白人でした。
このシーンだけで南部の人種差別の激しさが如実に表れています。
被告の黒人トムは、顔なじみの白人女性メイエラに暴力をふるったとして逮捕されました。
目撃証言は保安官とメイエラの父ユーエルのみ。
保安官の証言は曖昧なもので、ユーエルも攻撃的な態度で嘘をついていることが明らかです。
そしてメイエラの証言の矛盾をアティカスが突くと、彼女は錯乱状態で泣き叫びました。
隣に凶暴な父親がいて「犯人は父親です」とは言えないわよね… と同情しつつも勇気をもって欲しかった。
真相はメイエラのほうからトムに迫ったのを父親に見つかり、トムは逃げだして… というものでした。
ユーエルが娘を殴りつけたとハッキリとは出しませんが、思いっきり匂わせたため町民たちの父娘への視線は冷たいものになります。
それでも有罪。
………陪審員制度も良し悪しだな、と思いました。
冤罪だと分かっていながらも黒人を無罪にしたら自分たちも鼻つまみ者になってしまう、という陪審員たちの保身が働いたのでしょう。
そういう意味では白人も気の毒に感じます。
本当は差別なんてしたくない人たちもいたと思いますが、信念を通して近所や公的な場所などで白い目で見られたり嫌がらせをされたりするのを怖がる気持ちも分かります。
この時代の風潮は多くの不幸を生みだしたアメリカの黒歴史かもしれません。
今ですらある、この人種差別は誰も幸せにしないものですが、それでも無くなることがない。
人種に関わらず「誰かを・何かを下に見る、差別する」というのは人間が永遠に背負う業なのかもしれない、とも思います。
白人ですがブーもそういう存在でした。
精神面か知能面のどちらなのかは分かりませんが少し人とは違う状態だったため、噂だけが独り歩きをして近所中から恐れられていたのを、兄妹を助けたことで和解します。
黒人だから。普通とは違うから。
ただそれだけで無害な人を迫害してはいけない、という教訓が原題「マネシツグミを殺すこと」になっています。
久しぶりに真面目に考え込んでしまいました。
それなのに…
トム役の俳優さんの顔を見て、というか、鼻の穴を見て
(童謡「こいのぼり」のメロディで)
♪目より~も~デ~カ~い 鼻のあ~な~♪
なんて替え歌が浮かんでしまって…
ごめんなさいごめんなさい!
差別問題について考えながら容姿ディスりをするなんて、私というヤツはー!
このブログではなるべくそういうのは止めようと思ってるのに、根が品性下劣だとすぐにこういうことを… トホホ
アティカスさんの爪の垢を煎じて飲んだら少しは高潔な人間になれるかしら
って、もうグレゴリー・ペックおらんやないけー!
もう救いようがない… orz
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