映画「愛を読むひと」あらすじと感想【ネタバレあり】恥を隠すために罪を被る哀しさ
ベストセラー小説「朗読者」を映画化したヒューマンドラマです。
出会いと別れ、そして再会から彼女の死までの30年間に渡る恋愛が、過酷な時代と場所、それに繋がる “彼女の罪” という背景によって苦みと深みを醸し出しています。
数奇な人生を歩んだ女性を、ケイト・ウィンスレットがメリハリのついた安定した演技で惹き込んでアカデミー主演女優賞に輝きました。
中年期の主人公をレイフ・ファインズが演じています。
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あらすじ
1958年。西ドイツ・ノイシュタット。
15歳のマイケルは、通学のバスの中で体調不良を覚え、途中下車して街角で座り込む。
そこへ通りかかった中年女性が彼を心配し、家まで送ってくれた。
医者に診てもらうと猩紅熱と診断され、三週間も隔離された状態で寝込むことになった。
体調が回復してすぐにマイケルは女性にお礼を言いにいく。
彼女の住むアパートの部屋を探し当て、そっけない彼女に、はにかみながら一生懸命に話しかけた。
仕事に行く時間だから一緒に出よう、という彼女に頷き、部屋の外で待つ。
しかし着替えをしている彼女から目を離せずにいたら、覗き見に気づかれてしまい、居たたまれなくなってマイケルは逃げ出した。
でももっと近づきたいという気持ちが勝り、彼女が働いている電車内に入った後、彼女が戻るまでアパートの階段で待ち伏せする。
仕事で疲れて帰宅した彼女はマイケルに、石炭をバケツ二杯分持ってくるように頼んだ。
言われた通りにしたマイケルの煤だらけの顔を見て彼女は笑い、お風呂に入るように促した。
部屋の片隅にバスタブが置いてあるだけの簡素なお風呂にためらっていると、彼女はカーテンを引いて配慮するが、実はこっそり覗き見されている。
タオルを持ってきてくれた彼女は裸で、ふたりはそのまま関係を持った。
それ以来マイケルは学校が終わるとすぐに彼女の家に直行し、二人きりの甘い時間を過ごす。
三度目の逢瀬でようやく彼女の名前がハンナだと聞いた。
猩紅熱で寝込んでいた間、読書もできなかったというマイケルに、ハンナはどんな本を読んでいるのか興味を持つ。
マイケルはいま授業で習っているホメロスの「オデュッセイア」をハンナに渡そうとしたが、「読んで」と頼まれて朗読した。
その日以来、それが習慣になった。
マイケルは時に力強く、時に繊細に、強弱をつけて朗読し、ハンナは物語の世界にどっぷりと浸って楽しんだ。
21歳も年上のハンナだが、マイケルは夢中になった。
普通の恋人同士のようにしたくなり、マイケルはハンナを旅行に誘う。
ハンナは戸惑うが、一緒に田舎町のほうにサイクリングに出かけることにした。
マイケルはハンナがますます愛おしくなるが、ハンナは周囲の目が気になっていた。
数日後、ハンナは勤務実績が良好のため昇進する。
折しもマイケルは誕生日で、友人たちが準備してくれたパーティーをキャンセルしてハンナの元にやってきた。
しかし昇進を嬉しいと思っていないハンナは浮かない顔をしているし、しまいには口げんかに発展する。
言い争いの流れで刹那的に抱き合ったあと、ハンナはマイケルにパーティーに行くように送り出した。
翌日ハンナのアパートに行くと、もぬけの殻になっていた。
ハンナは去ってしまったのだ。
時は流れて1966年。
マイケルはハイデルベルク大学の法科に通っていた。
ゼミの研究で、実際の裁判の傍聴に行く。
その裁判の被告席にハンナの姿があり、マイケルは動揺する。
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感想
36歳の女性が15歳の少年と恋愛関係になる。
今の日本では犯罪になる、ということは置いといて…(;・∀・)
密室で二人きりのときは、こういうのってあまり気にならないと思います。
女性のほうが大人として余裕あるふうに振舞って、少年もまた甘えながらも大人ぶって余裕あるふうに見せたり、という駆け引きにもならないやりとりぐらいはするでしょうが、年の差を深刻に受け止める環境ではないです。
だけどいざ外に出てしまうと、あまり考えていなかった年齢差を思い知らされて、恥ずかしいという気持ちが出てくるようです。
旅行中にハンナが見せる戸惑いの表情はそう物語っています。
このときのハンナのファッションは、ノースリーブの小花柄のワンピース。
時代設定を考えると、デート用として新調したものだったかもしれません。
どちらかというと (当時の) 若い女性向けのファッションのようなので、15歳の恋人相手と少しでも釣り合うように若く見せようと頑張っている感じでした。
そして実際に一緒に出掛けて野外レストランに行くと、ボーイスカウトらしき少年たちの集団と同じテーブルで、なんとなく気まずい。
どんなに若く見せようとしても、本物の若さを目の前にして、身の置き所のなさをハンナは感じます。
普段も「坊や」と呼んでいたし、彼の若さゆえの余裕のなさも知ってはいたけれど、実際に同年代の子たちと一緒の空間にいる姿を目の当たりにすると、やはり子供だと実感が湧いてしまったのかもしれません。
そしてその子供と並んでいる自分が恥ずかしい、という気持ちになったのでしょうね。
店員からはやはり親子だと見られました。
ハンナは溌溂さもないし裕福ではない生活に少しくたびれていますが、背筋が伸びてキビキビと動く若々しさがある人です。
だけど若作りをすると、やはり年齢を感じさせます。
このときこそが、ハンナが「自分と彼は釣り合わない」とハッキリ自覚して彼の前から消えることを決意させたんだと思いました。
もしかしたら昇進の話は、渡りに船だったのかもしれません。
被告席に立つハンナに息を呑んだマイケルですが、彼女の罪状にさらに驚きました。
マイケルと再会する前、彼女はナチ親衛隊に入っており、看守としてアウシュビッツ近くの収容所でユダヤ人たちを監視していたのです。
彼女の仕事は、誰をアウシュビッツに送るか、の選別も含まれていました。
そして300人のユダヤ人を収容していた教会で火災が起きたとき、外側からかけられた鍵を開錠せず彼らを逃がさないようにし、そのまま見殺しにした罪も問われます。
残忍さが信じられません。
マイケルと会っていたときの彼女は、影はあるけれど優しくて感受性が強く、大人としての包容力がある女性だったからです。
付き合っている人の過去に後ろ暗いものがあったり、思いがけない裏の顔が見えたとき、言葉を失うほどショックを受けますよね。
自分と接しているときの姿からは想像もつかない。
でも人は多面性があるから、こちらが知っている面も知らない面も、どちらも真実の姿なのだと思います。
許容できるかどうか、ですよね。こちらに委ねられるのは。
後悔しないためには、慎重に考え抜いた上で結論を出すしかありませんね。
まあ、そういう裏の顔がある人とは巡り合わずに済むのが一番ですけど… 近づいてこられたらヤバい(;´・ω・)
ハンナには大きな秘密があります。
そしてそれが彼女の人生に大きな影響を及ぼし、運命を決定づけました。
文盲。
このことを他人に知られたくなかったのです。
実は他の映画でも、文盲であることを隠すために冤罪を背負う道を選ぶ、という作品がありました。
文字が読めない。
それだけで周囲からは頭が悪いと思われる。
それが怖い。
だから隠し通す。
そのためなら罪人の汚名を着てもいい。
本当に恥ずかしいと思っている気持ちが痛いほど伝わって切ないです。
日本の識字率は高いですが、それでも100%ではありません。
いろんな事情を抱えている人がいて、文字が読めないまま大人に成長した方もいます。
いくつか夜間学校などが開かれているそうですが、そういった方たちをバックアップできるシステムがもっと広まるといいな、と本気で思います。
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