バイリンガル版「金田一少年の事件簿」を読む 【1】オペラ座館殺人事件
※ネタバレあります。
20年くらい前から人気漫画の英訳本はかなり出版されていますね。
英語学習者向けなので日本語のセリフも欄外にちゃんとそのまま載っているので、英訳するとどんな言い回しになるのか確認出来て楽しく読むことができます。
でも普通の単行本より割高なので、本当に面白くて何度も読み返したくなるものしか購入したくない、と思って選んだのは「金田一少年の事件簿」でした。
これもまた数年ぶりの読み返しです。
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概要
バイリンガル版の「金田一少年の事件簿」は、File・Caseごとに区切られていない初期の単行本4冊分と、「天草財宝伝説殺人事件」2冊分の合計6冊だけです。
※後にFileごとに区切られたようです
最初は全部読んでからまとめて一つの記事にしようと考えていましたが、どの事件も長いので、事件ごとに書くことにしました。
そんなわけで今回は最初の事件「オペラ座館殺人事件」を読んだ感想を書きます。
あらすじ
私立不動高校に通う金田一耕助の孫・金田一一は、幼馴染の七瀬美雪に頼まれて演劇部のクラブ合宿の手伝いに駆り出される。
数日前、女優としての才能あふれる部員・月島冬子が自殺したことで複数人の部員が一気に退部してしまい人手が足りないのだ。
しかも演劇コンクールまで後2週間もない。
美雪自身が企画したこの合宿は、離島にあるホテル「オペラ座館」に泊りがけで行なわれる。
このホテルには本格的な劇場があり、設備も好きに使わせてもらえる許可が下りていた。
コンクールで行なう演目は「オペラ座の怪人」。
さっそく舞台を使った稽古が行われるが、月島の名前を出した途端、端役の日高織江が怯えだす。
夕食の時間になりダイニングルームに行くと、休暇中の警視庁警部・剣持勇と一は初対面で険悪な雰囲気になってしまった。
そして日高だけまだ姿を現さない。
心配する美雪が探しに行こうと席を立つと、女性の悲鳴が響き渡った。
急いで全員で日高を探すと、彼女は舞台の上で落ちてきた照明の下敷きになって死んでいた。
「オペラ座の怪人」を模した連続殺人の幕が上がった。
感想
「歌島」というこの離島の名称は出てきません。
バイリンガル版が作られていない、この後もやってくる惨劇のときにようやく名前が出るようです。
(小説のほうかもしれない)
で、この歌島、「オペラ座館」が一軒ポツーンとあるだけで、住民もオーナーの黒沢さんと他2人の従業員だけ。
観光名所も土産物屋もなーんも無し。
それどころか食料や日用品すら本土と船で行き来して… という孤島オブ孤島。
道路が舗装されているかさえも怪しい。
美雪がここを選んだのは分かる。
劇場もあるし、稽古に集中できる環境ですからね。
でも剣持のおっさんと横浜の開業医は、なんで休暇先にここを選んだのかマジで謎。
秘湯でもあるのだろうか…？
従来のセリフの枠の中に英訳が入り、コマの外に日本語のセリフが載っています。
そのためコマが小さくなり、またセリフ枠の中の英語も少々読みづらいです。
綴じの部分に近い上に小さいセリフがあったとき、かなり思いっきりむぎゅ～～～っと開かないと読めない場合があって、ちょっと大変でした。
気になった英語
さすがに全部は書けないですが、面白いと思った英語をピックアップします。
Miyuki and that bum? Chalk and cheese, cake and crap.
こちら冒頭で美雪と一緒にお弁当を食べているクラスメイトの女の子のセリフです。
名前すらなく、この後の出番もないモブ of the モブで、しかもすごくセリフ枠が小さくて読み取るのに苦労した一品です。
しかし苦労の甲斐がありました。
元のセリフは「美雪とあいつ (はじめちゃん) じゃウンコとケーキくらい差があるもんね」です。
後ろに cake and crap がついているので、じゃあ直前の chalk and cheese って何じゃらほい？ と思って調べました。
「見た目は似ているけれど、本質が全然違う」ことを喩えた慣用表現なのだそうです。
見た目が似ている…？ 似ている？
Hajime’s no campus hero. But when it comes to crunch, he’s solid as a rock.
月島さんの自殺の原因を作った傲慢女子部員・早乙女さんが「次は自分が殺される」と怯えて一＆美雪に助けを求めてきました。
ブルブル震える彼女を励ます美雪のセリフです。
学校でのはじめちゃんがヘタレなことは学校中に知れ渡っているので、後半を見てみましょう。
when it comes to「～に関しては」は本当によく出てくる表現ですね。
その後のcrunchは「バリバリ、ボリボリ」以外に「ピンチ、重要な局面」の意味があります。
そしてsolid as a rockは「(人が) 困難などに動じない、頼りがいがある」になります。
「いざとなったら、とっても頼もしいんですよ」という元セリフに上手くハマッた英語表現です。
She wants to be a goody-two-shoes right to the end.
月島さん自殺の引き金になった早乙女さんのセリフです。
彼女は殺された日高さんと桐生さんと一緒に月島さんを化学実験室に呼び出し、そのせいで月島さんは硫酸を頭から被る羽目になりました。
月島さんは呼び出した三人のことを誰にも言わなかったことで、彼女たちは誰からもお咎めを受けずに済んでます。
でも感謝もせず「あの子、あくまでいい子ぶる気なんだから」と陰口。
それを聞いてしまった月島さんと犯人・有森くんはショックを受けます。
goody-two-shoesは「いい子ぶりっこ」のことで、主に女の子に使われます。
そしてright to the endは「最後まで」です。
この最初の事件では有名決めゼリフ「ジッチャンの名にかけて」は出てきていません。
でももう一つの決めゼリフは出ました。
I have solved all the mysteries.
「謎はすべて解けた」
せっかくだから覚えたいですね (・∀・)
ちなみに「犯人視点」
数年前に犯人たちを主人公にしたパロディ漫画「金田一少年の事件簿外伝 / 犯人たちの事件簿」が連載され話題になりましたね。
こちらも最初の主人公は「オペラ座館」の犯人・有森裕二から始まります。
まずは本編が始まる前にホテルにチェックインするところから。
怪しさ爆発で黒沢オーナーに白い目で見られ、バスルームに書いた文字が怖くなくて練習したり、10万円のゴムボート購入で懐の痛さにションボリしたり…
声出して笑うほど犯人の悲愴感が漂っています。
そして有森の不幸なところは名探偵の孫がメンバー入りし、警視庁の殺人課警部が居合わせてしまったところ。
本編を読みながら、裏で有森はこんなことやっていた・考えていた、と思い出すと爆笑です。
全10巻で終了しましたが、明日3/2から「金田一少年の事件簿R」の犯人たちをフィーチャーした新連載がマガポケで始まるそうです。
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まとめ
連載30周年を記念して、また新たな連載が始まり、ドラマも始まるそうですね。
このタイミングでバイリンガル版を読み直したのはまったくの偶然でしたが、改めて読んでもやっぱり面白い。
犯人やトリックが分かってもまた読みたくなる魅力がある作品なんですよね。
バイリンガル版が少ないのが残念です。
続きもバイリンガル版で読みたかった… 講談社さん、出してくれませんか？ﾁﾗｯ
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