バイリンガル版「金田一少年の事件簿」を読む 【2】異人館村殺人事件
※ネタバレ含みます
ドラマ版は欠番になるわ、アニメ化もされないわ、犯人視点はないわ。
シリーズの中でも異色・異端扱いされている金田一少年第2の事件「異人館村殺人事件」です。
幸いバイリンガル版は無事に出版されました。
メイントリックがオリジナルではなかったことで物議を醸しましたが、他の事件と比べても一際猟奇的なことでも異彩を放っていますね。
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あらすじ
クラスメイトの時田若葉が、冴えない教師・小田切進とホテルから出てくる写真が学校掲示板に貼り出された。
美雪の抗議と金田一の尽力で若葉は退学を免れたが、彼女の父親は青森にある実家に戻らせる。
若葉は卒業後に幼少期から決まっていた婚約者と結婚する予定だったが、今回のスキャンダルにより結婚が前倒しとなった。
招待状を受け取った金田一と美雪、そして若葉への未練を残す小田切とで僻地にある若葉の実家に向かった。
そこは六角村という名称で、村全体がダビデの星の形になっていた。
中心には焼け落ちた教会。
周りには六軒の館が、六角形を成す形で等間隔に配置されている。
若葉の家を探しながら、それぞれの館の特徴を捉えていく金田一。
若葉の実家「時計の館」に辿り着くが、別人のように冷たい雰囲気になっている彼女に不穏なものを感じた。
結婚式は夜にこの館で行なわれる。
仕度前にこの家の地下室で「首のないミイラ」を見てしまい動揺するが、この村の館および教会にはそれぞれ1体ずつ、体の一部が欠損したミイラが “守り神” として保管されているのだと教えられた。
そして結婚式が執り行われ、各館の主人たち、そして若葉の婚約者の連城久彦の姿を確認した。
村の風習儀式として、花嫁である若葉は教会でひとり夜を過ごすことになる。
その扉前には付添人を務めている「鎧の館」主人の娘・兜霧子が一晩中見張りとして立つことも習わしである。
しかしその夜、鳴るはずのない教会の鐘が鳴り響き、胸騒ぎがした金田一たちが駆けつけるが、霧子の姿はなく、鍵がかかっていて開けられない。
小田切の車のウィンチで扉を壊すと、祭壇前には首が無くなった若葉の死体が横たわっていた。
ドレスには「7人目のミイラ」と名乗る犯人からのメッセージが書かれてあった。
感想
村全体が変人・奇人の集まりで、全体的に不気味な雰囲気が漂っています。
まださとう先生の絵柄や描線も少年漫画らしい泥臭さがあるので、どこか画面全体から重いドロッと感があるのも、本家金田一耕助に負けない気味悪い迫力になっていますね。
ミイラといい次々と殺害されていく死体の状態といい、まだ2番目の事件にしてフルスロットルで本家に食い込んでいく猟奇ぶりに瞠目しました。
被害者の人数も前回「オペラ座館」をはるかに凌駕していて、もう数えるのも面倒なくらい (;´Д`)
しかも今回の犯人は、謎を解かれてからの抵抗が半端じゃない。
複数の警察官に肉弾戦で大怪我を負わせ、猟銃ぶっ放して復讐は完遂。
美雪を人質にするわ金田一の腹に銃弾撃ち込むわ、やりたい放題超無双。
強烈なキャラクターです、六星竜一さん。
これは犯人視点も書きづらいでしょうね~ (;^ω^) あれギャグだから。
描いてほしいリクエストでは高遠さんに続いて第2位だったのに…
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気になる英語表現
I’m sure Wakaba seduced that lily-livered Odagiri.
掲示板に貼りだされた写真が問題となってPTA会長が乗り込んできました。
退学にする気マンマンの会長は、美雪の抗議も一笑し、若葉の方から小田切を誘惑したのだと決めつけます。
lily-liveredは「臆病な」という言葉になります。
百合の肝臓…?
ちょっと不思議な言葉ですね。
It makes me green with envy.
若くて可愛い美雪に妖しい視線を送る「塔の館」主人の五塔夫人。
ビアンかと思ったら、美雪を拉致ってエリザベート・バートリのように生き血を浴びようとしていたようです。
green with envyで「すごく羨ましい、妬ましい」です。
Load of bunk!
本当は頭にAがつきますが、セリフではこうなっていました。
27年前の罪を言い当てられて憤慨する兜さんのセリフ。
「ナンセンス、デタラメ」を表わすフレーズです。
今回は mummy「ミイラ」、weathercock「風見鶏」、skylight「天窓」、taxidermy「剝製」など、日常ではまず出てこない単語が何度も出てきました。
余裕があったら覚えておきたいところです。
まとめ
「いわくつき」みたいな扱いになっている今作ですが、一と美雪の「相手を思い合う気持ち」が初めてハッキリ描かれているんですよね。
美雪を助けるために駆けつけて犯人と格闘する一。
一が撃たれたショックに、丸腰にも拘らず泣きながら犯人にポコポコパンチで立ち向かう美雪。
かなり好きなシーンだし、ふたりのことも好きになります。
せっかくこんなにいい場面もあるんだから、この作品自体をあまり腫れ物扱いしないでほしいな、と思っています。
他シリーズはこちら
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バイリンガル版「金田一少年の事件簿」を読む 【3】雪夜叉伝説殺人事件
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