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映画「アクトレス 女たちの舞台」あらすじと感想【ネタバレあり】最も哀れな女

2023/12/01
 
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駆け出しライターのポムりんごと申します。 最近はめったに雪が積もらなくなった雪国在住。 映画や海外ドラマの視聴が趣味で、それが高じて英語学習もやっています。 英検準一級。TOEIC780。 漫画やゲームも好きな完全内向型。 家にこもってわがまま(セルフィッシュ)三昧に日々過ごしてます。

「夏時間の庭」でもタッグを組んだオリヴィエ・アサイヤス監督とジュリエット・ビノシュ主演の作品です。

共演のクリステン・スチュワートが、アメリカ人で初のセザール賞 (助演女優賞) を受賞しました。

他にクロエ・グレース・モレッツや、フランスやドイツの作品で活躍しているハンス・ツイシュラーらが出演しています。

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あらすじ

ベテラン女優マリア・エンダースと個人秘書のヴァレンティンは、チューリッヒ行きの列車に乗っている。

劇作家で映画監督のヴィルヘルム・メルヒオールの代理で授賞式に出席するためだ。

マリアは無名時代、彼の劇作「マローヤのヘビ」の映画化の際、彼自身から主人公シグリッド役に抜擢され、そこからキャリアが始まった恩義がある。

まだ完成していないスピーチ原稿に悩んでいる最中、ヴィルヘルムの訃報が入った。

翌日は本人と、出世作の舞台となった場所シルス・マリアで会う約束だった。

ヴィルヘルムから「マローヤのヘビ」の続編の構想があることを聞いていたマリアだったが、結局詳しい話は聞けずじまいになる。

授賞式は追悼式の色合いになり、ヴィルヘルム作品の常連だったヘンリク・ヴァルトも呼ばれた。

二度共演経験があるが、マリアは彼が大嫌いである。

授賞式が終わると、舞台監督のクラウスがマリアを待っていた。

「マローヤのヘビ」のリメイクを手掛けるつもりの彼はマリアに、かつて演じたシグリッドに恋して破滅する年配女性ヘレナ役を要望している。

しかしシグリッドこそが自分自身であり、真逆のヘレナに共感できない、とマリアは断るのだが、シグリッドとヘレナは真逆どころか “同じ” であり、それを描いている、とクラウスは説得する。

シグリッドを演じるのは、まだ19歳のお騒がせ女優ジョアン・エリスだと聞かされる。

結局ヘレナ役を引き受けることにしたマリアは、ヴァレンティンと共にシルス・マリアに行き、ヴィルヘルムの妻ローザに会う。

ローザはこの家を出ることにし、役作りのため好きなだけ滞在していい、とマリアに告げる。

別れる前に一緒にヴィルヘルムが命を落とした山に登り、そこで「マローヤのヘビ」とは雲の形状のことをいい、ごく稀にしか見られない自然現象だと教えられた。

翌日からマリアはヴァレンティンと共にシルス・マリアでセリフ合わせを開始するが、ヘレナに入り込めず苦戦する。

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感想

自分自身をシグリッドそのものだとマリアは思っています。

30年前の役柄でありながらも、今でも自分がシグリッド役にふさわしいと思っているためにヘレナを演じること自体に嫌悪感を持っている、と見て取れました。

クラウスが言う「シグリッドとヘレナは同じ」という言葉を「どこが…」と疑ってかかっていますが、ヴァレンティンはヘレナの人格をより詳しく分析しており、マリアに自分の解釈を聞かせます。

しかしマリアは、ヴァレンティンの意見や解釈は一笑に付して相手にしないのです。

それはヘレナのことだけではなく、ジョアンや彼女が出演したスーパーヒーロー映画などに関してもそうでした。

自分の意見を悉く流され、それでいて役をうまく掴めないことに愚痴をこぼすマリアに、ヴァレンティンは次第にマリアとの距離を感じ、疎ましく思うようになります。

私から見ると、マリアはシグリッド役に固執しているために、ヘレナの役を無意識的に掴まないようにしているようにも思えました。

マリアは自分の年齢を認識してはいるけれど、実感はしていないというか…

若い頃に演じたシグリッドが彼女の中で定着してしまっていて、40歳のヘレナを演じることに抵抗があったのかな、と。

つまるところマリアは、自分の老いを自覚したくない、というミッドライフ・クライシスに近い心理が働いたのではないかと考えました。

シグリッドは若くて行動力があって魅力的。

ヘレナは、そんなシグリッドに恋心を抱き、かなりみっともない姿を晒して最後には自殺する役どころです。

それがマリアには受け入れがたかった。

40歳になったシグリッドなら上手く演じられるのに、という気持ちもあったようです。

そして「マローヤのヘビ」という文芸的な作品が好みのマリアにとって、ブルースクリーンやワイヤーを駆使したアクション作品は、つい鼻で笑ってしまうような低俗なもの、という意識があります。

鷹揚にいろんなものや人をポジティブに解釈するヴァレンティンは、この斜に構えた態度のマリアから離れる決意を徐々に固めていきました。

いつものように山に登り… マリアが気づかないうちに去っていきます。

その直後、山岳地帯全土を覆う「マローヤのヘビ」。

すごい雲海! 幻想的な風景に目を奪われました。

ヴァレンティンが去り、上演前日にロンドンで最後のリハーサルを行うマリア。

そこでマリアは、ヘレナを活かすためにシグリッド役のジョアンに「もう少し間をおいて」と頼みます。

顔合わせのときマリアに好意的だったジョアンは、残酷な笑みを浮かべて「ヘレナなんか誰も気にしない。忘れられた女よ」と言って背を向けてしまいました。

立ち尽くすマリア。

自分をシグリッドだと思いヘレナを馬鹿にしていたマリアは、気づくと自分はヘレナと同じように気にされない存在になっていたのだと気づきます。

このシーンで、画家で詩人のマリー・ローランサンの詩「鎮静剤」を思い出しました。

○○よりも哀れなのは○○な女です、という言葉で綴られているのですが、最後に来る最も哀れな女が「忘れられた女」なんですよね、この詩。

ジョアンのこのセリフで、ヘレナ = マリアの哀れさを際立たせています。

 

基本的に会話劇で進めている映画ですが、そこから「老いること」についての本質を突きつけている作品で、面白かったです。

派手な見せ場があるわけではないですが、女優の目を通して業界の裏側を見せたり役作りの大変さを伝えているところも興味深い。

シャネルが協力したファッションや、スイスの風景なども見どころです。

 

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