映画「シェーン」あらすじと感想【ネタバレあり】むやみに銃を礼賛しない西部劇
ラストシーンの印象深さが心に残る西部劇の名作です。
ロケ地であるワイオミング州の雄大な自然の風景に思わずため息が漏れました。
この地で実際にあった「ジョンソン郡戦争」をモチーフに、横暴な大手畜産農家と開拓民の農夫たちの戦いを描いています。
監督は「陽のあたる場所」のジョージ・スティーブンス。
主演のアラン・ラッドの代表作です。
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あらすじ
開拓者ジョー・スターレットの家に、ひとりの流れ者が飲み水を所望してきた。
気のいいジョーはすぐに対応するが、ふと彼に疑惑の目を向ける。
ジョーをはじめ、近隣一帯の開拓者とその家族たちは、この土地の権利を主張している横暴な畜産農場主・ライカーとその一味に日頃から陰湿な嫌がらせを受けている。
この流れ者の彼もライカーの回し者ではないかとジョーは疑っているのだ。
しかしすぐにライカー一味がジョーの家にやって来た時、その流れ者・シェーンはジョーの味方につき、ライカーたちを追い払う。
ジョーは感銘を受け、ジョーの息子ジョーイも妻のマリアンも、すっかりシェーンに魅了された。
行くあてのないシェーンは、そのままジョーに雇われる。
買い物のついでに自分の作業着も購入するように言われたシェーンは、離れた場所にある雑貨屋兼バーに行く。
そこで昼間から飲んだくれているライカーと、その手下がシェーンに因縁をつけてきた。
シェーンは相手にせず、買い物を済ませるとさっさと帰る。
臆病者と見られ、噂を広げられた。
ライカーに対抗しようとジョーの家に集まった開拓者仲間たちも、シェーンがこちら側の味方と聞いても、戦力にならないのではないかと、複雑な表情を浮かべる。
後日、今度はスターレット一家と一緒に訪れると、やはりライカーたちはまた入り浸っており、またもシェーンに絡んできた。
シェーンも今回はそのケンカを買い、手下と激しく殴り合う。
手下を叩きのめすと、シェーンを気に入ったライカーは、ジョーのところを辞めて自分のところに来るようリクルートしてきた。
しかしシェーンは頑なに拒む。
腹を立てたライカーは、店中の手下に命令して大勢で取り囲んだ。
雑貨を見ていたジョーも騒ぎに気づき、シェーンに加勢する。
ふたりで大人数を向こうに回して善戦するが、オーナーの鶴の一声で解散となった。
シェーンたちはジョーの家に帰って手当てを受けるが、腹の虫が治まらないライカーは悪名高い殺し屋・ウィルソンを雇う。
ウィルソンに仲間のひとりトーレーが殺され、他の仲間たちは次々とこの土地から去っていこうとする。
ジョーは単身でライカーたちと戦おうとするが、シェーンに力づくで止められた。
シェーンは愛銃を下げてひとり、ウィルソンとの対決に向かう。
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感想
水をもらうためフラリと立ち寄ったことが縁でスターレット一家にお世話になるシェーン。
夕食をご馳走になったあと、誰に言われるでもなく薪割りを始めます。
お世話になったお礼に自分にできる範囲でのお手伝いをすること。
しかもそれが相手にとっても有り難い行動であると、人としての信頼度が上がります。
農家のスターレット一家にとって、力仕事は大変助かります。
礼節をわきまえているからこそ取れる行動であり、やはりマナーについては誰しも一通り学んでおいたほうがいいものなのかもしれません。
シェーンは、行くあてのない中ライカーたちとの闘いの助っ人として頼られている、というジョーの思惑もあるのでしょうが、食事と寝床を用意してもらいました。
なのでお手伝いをするのは当然なのですが、ここまで手厚くもてなされなくても、普段から手を貸してもらいたがっている人はいないか目を配るのは大切なことですね。
ジョーの妻・マリアンは貞淑な妻なのですが、シェーンが現れたことで彼のカッコよさに一目惚れしてしまいます。
しかしジョーを裏切れないし、ジョーイにとって良き母でもいたい彼女は苦悩します。
何も分からないジョーイは無邪気にシェーンが大好きだと声に出しますが、マリアンは「あまりシェーンを好きにならないように」と言い聞かせます。
本当は自分に言い聞かせている言葉です。
彼はいずれ去って行ってしまうのだから、と念を押して自分の気持ちを断ち切ろうとしました。
そしてジョーに、抱きしめて、と頼みます。
ともすればシェーンの元に行ってしまいそうな自分を繋ぎ止めて欲しかったのかもしれません。
ときにジョーイに銃の撃ち方を教えるシェーンを見咎めたり、殴り合いをする姿に怯えたりしますが、やはり惹かれていく気持ちはどうにもなりません。
そしてシェーンもまたマリアンに惹かれていることが分かるので、もしかして逃避行しちゃう~? という一抹の期待もあったように見受けます。
しかし最後は、別れを告げるシェーンに未練を残しながらも、ジョーと共にこの土地に残ります。
結婚しても子どもがいても、イケメンと巡り合えば自然と胸がときめきます。
分かります。
浮気心がムクムクと湧く人もいることでしょう。
だけど本気の不倫に走る人は少ないのではないかと思います。
まあ夢見ることはあるでしょうけどね。
でも実際にその行動に移すにはリスクが大きすぎるわけなので、そこまでして恋に溺れたいか、というと遠慮したい人がほとんどではないでしょうか。
それにしても全編通してマリアンは女ごころがユラユラと揺れまくって、まったく安定してません。
しかし枷のある恋愛となると、はっきりした解決策が欲しいわけではない女性心理も鑑みると安定しないのは当たり前かもしれません。
家庭をとるか、恋愛をとるか。
ジョーがDVをしているわけでも浮気をしているわけでもない以上、どちらを取るのが賢明なのかは明白なのですが、イケメンの魅力の吸引力はなかなか人妻を苦しめます。
結婚した後は、イケメンは鑑賞用、と割り切って、穏やかな家庭を築くことに専心したほうがいいです。
女ごころの揺れは頑張って定位置に固定させておきましょう。
約2時間の中に情報がてんこ盛りの映画なので、どこをどうまとめるか結構悩ましいところです。
銃社会への皮肉ともとれる銃に関しての議論やセリフ。
悪役であるはずのライカー側にも言い分があること。
殺し屋ウィルソン役のジャック・パランスの存在感。
本当に痛そうな、リアル感がある乱闘シーン。
対決シーンでの早撃ち。
そしてラスト、馬に乗るシェーンの生死の分かりづらさ。
どれもこの映画が名作となるのに必要だった場面だと思います。
この中であえて言及するなら、銃かなぁ。
実は友人に、実際に銃で撃たれたことがある人がいるんです。
アメリカ育ちの彼は、ある日ストリート・ギャングと揉めて、左肩を撃たれました。
撃たれたのは肩のはずなのに、脳が沸騰しているかのように頭の中が熱く、心に渦巻いたのは「痛い痛い痛い…」という言葉だけ。
それ以外は何も考えられず、自分が悲鳴を上げたのか呻いたのか、のたうち回ったのかも覚えていられなかったそうです。
未だ彼の左肩には弾丸の痕があり、肩より上に腕を上げることができず (つまりバンザイができない) 障碍者手帳を持っています。
このリアルな体験談を聞いた後、とても銃をカッコいいものだとは思えなくなりました。
銃を嫌悪するマリアンと同じ気持ちになっています。
正直、シェーンが銃を手放さない理由を聞いたとき、アメリカは銃社会だものね、とガッカリした気持ちになりましたが、ラストで銃を否定するセリフが出てホッとしました。
西部劇でありながら、むやみに銃を礼賛しない作品であることに驚きつつ、やっぱり名作と呼ばれるものは作品に温かいものが流れているのだな、と感じました。
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他ジョージ・スティーブンス監督作品
他ジャック・パランス出演作品
他ジーン・アーサー出演作品
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