映画「ベニスに死す」あらすじと感想【ネタバレあり】哀しきオジサンの美少年愛
ルキノ・ヴィスコンティ監督による文芸ロマンの名作です。
主演はダーク・ボガード。
彼が恋焦がれる美少年を演じたビョルン・アンドレセンの美しさは、ほうぼうから目を付けられました。
そして主題曲となったマーラーの交響曲第5番も話題になったことでも有名です。
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あらすじ
心臓を悪くしており、静養のためミュンヘンからひとりベニスのリドにやってきた老作曲家グスタフ。
出発前、友人のアルフレッドから “美と芸術” についての彼の持論を熱弁された。
その考えと相容れないグスタフは、そのやり取りを思い出しても、とくに感情は動かない。
海を臨む高級ホテルに滞在するグスタフは、さっそくドレスコードに沿ったタキシードを着てホテル内のレストランに向かう。
テーブルが用意されるまで皆ロビーで待つ。
グスタフは手近のソファに座り新聞を広げながらも、周囲の人間たちを観察していた。
そこで独特の雰囲気を持った美少年を見つけ、グスタフは目を奪われる。
少年の名前はタージオ。
彼の姿を求めてグスタフは、彼の行く先々に後をつけていくけれど、声をかける勇気がない。
海で友人たちと屈託なく笑い、自分のことは気にもかけないタージオの姿に
グスタフは寂しさと悲しさを覚え、突発的にミュンヘンに帰ることにした。
しかし駅までついたところで、荷物が手違いでコモに送られてしまったと報告される。
グスタフは文句を言いながらも、まだベニスに滞在してタージオを見ることが出来ることへの嬉しさを隠せなかった。
ホテルに戻るため船の手配をする間、駅の片隅で、明らかに感染症に罹っている男性が床に座りこんでいるのを見て不安になる。
海外の新聞では、ベニスでコレラが流行している、と報じられているのに、ここ地元の新聞には一切記事が載っていないのだ。
気づくと街は悪臭に満ち、消毒液が撒かれている。
地元民たちはみな口を閉ざすが、ようやく両替に行った先の銀行員が重い口を開いてグスタフに真実を伝えた。
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感想
えー……
身も蓋もない言い方すると、変態ストーカーの話です。
でもね、わかる!!
この美少年はずっと見ていられる!!
これはもう “イケメン” なんてレベルじゃない。
完ぺきな美の究極生命体! (んな大げさな…)
顔が美しいだけじゃない。
ちょっとした動きやポーズですら美しいんだから、こりゃオジさんたまらんわ。
美しすぎる高嶺の花のせいか、何十歳も年下の子供なのに、オジさんモジモジして話しかけられません。
後ろからついていくのが精いっぱい。
たまに目が合ったりしたら、もうドッキドキ。
ただでさえ心臓が悪いのに。
タージオは、目元は醒めてるのに口角は上がっているから、誘惑されてると勘違いしちゃいそうな顔立ちなんですよね。
だからオジさんは断ち切れません。
(もうグスタフのことはオジさん呼び…)
もともとオジさんは、すぐ人に対してシッシッ とかやっちゃう人です。
これだけでもう、人間関係作りがヘタなことが見て取れます。
タージオと仲良くなりたくても、どうしていいか分からないのでしょうね。
しかし折しも、コレラが蔓延している危険な状況。
美少年を守りたいオジさんは、勇気を出してコレラのことを告げます。
ただし彼の母親に。
本人には恥ずかしくて話しかけられない (*ノωノ)
でも母親が彼を傍に呼んで、話す機会をくれました。
感無量すぎて言葉が出てこないオジさんは、代わりに彼の髪に触れます。
もうこれは、不憫なオジさんに神様がくれた冥途の土産。
オジさんの命の灯は消えかかっていました。
美少年一家が今日で帰ってしまうと聞いた日、オジさんはタージオを求めて海に行きます。
デッキに座り、友達と喧嘩する彼の仲裁に入りたいのに、病魔に蝕まれた体は動いてくれません。
そしてオジさんの最期の時間。
逆光を受けて海に入っていくタージオの神々しさ。
左腕を伸ばして水平線を指す姿に、オジさんは「待って…」と追おうとするけれど、体は崩れ落ちます。
若く見えるようにと施した化粧も白髪染めも垂れて落ちていき、死にかけている老人であること、そしてこの恋は成就しないことを思い知らされます。
一言も言葉すら交わせなかった愛するタージオの美しさを堪能しながらオジさんは旅立ちました。
タージオが優しく黄泉へと導いたような、そんな幻想的な最期です。
とても印象に残る映画でした。
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