映画「メアリーの総て」あらすじと感想【ネタバレあり】フランケンはこうして誕生した
「フランケンシュタイン」の作者メアリー・シェリーの、16歳から出版までの2年間を描いた作品です。
子役から活躍しているエル・ファニングが主人公メアリーを演じます。
「ゲーム・オブ・スローンズ」のアリア役で有名なメイジー・ウィリアムスも前半だけ顔を出しています。
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あらすじ
思想家の父が営む本屋で、本に囲まれて暮らしているメアリーは、怪奇小説が大好きな少女だった。
よく墓地に出向いては怪奇小説を執筆していた。
母は産褥により、メアリーを産み落とすと同時に亡くなっている。
父と同様、思想家でフェミニストだった母は、女性の権利向上を謳う著書を一冊遺していた。
この母の本もメアリーの大切な愛読書である。
しかし家事も店番もサボッて外出しているメアリーのことを、義母は嫌っている。
ある日、義母と大きく衝突したため、父はメアリーを知人のバクスター氏に預けることにした。
場所はスコットランド。
ロンドンから遠く離れメアリーは落胆するが、バクスター氏の娘イザベラと気が合い、スコットランドでの生活は楽しかった。
バクスター邸で読書会が開かれ、新進気鋭の若手詩人パーシー・シェリーと出会った。
初恋に胸をときめかせるメアリーだったが、実家から連絡が入り、義妹のクレアが病気で臥せっている、と知らされる。
メアリーは後ろ髪を引かれる思いでロンドンに帰郷した。
実はメアリーがいなくて寂しかったクレアは、仮病を使って彼女を呼び戻していたのだ。
真相を知って呆気にとられたメアリーだが、懐いているクレアを無下には出来ず、また実家で暮らし始めた。
ある日、父に教えを乞いたいと願う青年がやってくる、と聞かされる。
夕食を準備して待っていると、やって来たのはパーシーだった。
驚くメアリーに、パーシーは彼女に会いたくて来たことを告げる。
両想いとなり、嬉しさに舞い上がるメアリーだったが、パーシーの妻と名乗るハリエットという女性が、彼との娘の手を引いて真っ向から対峙してきた。
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感想
メアリー16歳とパーシー21歳の爽やかカップル誕生ね♡ なんてヌルい目で見ていたのですが、実はパーシー妻子持ちと分かってから、加速度的にゲス野郎度が上がります。
いや、こっちが穿った見方に変わったわけではなく、明らかに演出側のほうで演技を変えてきて、分かりやすくゲスに見えるようにしてきているんです。
それまでの爽やかさと、打って変わって。
これは… 不幸街道まっしぐら☆ と観ているこちらは分かりますが、恋情にたぎる16歳は止まれません。
妻子がいようがお構いなし。
「私も連れてって」と頼むクレアも連れてレッツゴー駆け落ち。
駆け落ち前夜、お父さんが言った「子供を捨てる男だぞ」がすべてを語っています。
うん、配偶者を捨てるのは「互いに上手くいかなかったんだなぁ」と受け入れることはできますが (それでも捨て方次第だけど) 子供を捨てるとは「お前はゲスだ!カスだ!ゴミだ!」と心の中で罵倒一辺倒になりますね。
いろんな事情があって致し方なく、という人達はいますが、パーシーはどう考えてもそういうのじゃない。
そんなクズ男パーシーとの暮らしは、身の丈に合わない贅沢とも相まって、どんどん苦しくなります。
しかも借金取りから逃げて、その際に子供を亡くすし。
一途なメアリーを尻目にパーシーは「自由恋愛」を標榜して、クレアともイチャつきだし…
こんな男やめとけ、と言われる相手は本当にやめておいたほうがいいんです。
突き進んだ結果はコレですからね~…
だけど、メアリーには不幸のままでは終わらない運と胆力がありました。
クレアの伝手で縁ができた詩人・バイロン卿。
ジュネーブの彼の別荘に滞在し、長雨の退屈しのぎで始まった怪奇小説執筆大会 (ティオダティ荘の怪奇談義)
メアリーはこれまでに温めていた「科学力で死者が生き返る」のネタを執筆することにします。
ここに、これまでパーシーから受けた仕打ちや、バイロン卿に手酷く捨てられたクレアの悔しさを受け取り、残酷な男たちをキャラクターの中に吹き込みました。
こうして生まれた「フランケンシュタイン」は、何度も断られたり、屈辱的な条件下での出版になりつつも、傑作として版を重ねます。
ずっと書き続けていたこと、そして辛く苦しかった心情を作品の中にぶつけたこと。
それらがメアリーの心と生活を救います。
傑作として今なお読み継がれ、派生やインスパイアされたものも数多く出ている「フランケンシュタイン」には、18歳の少女の当時の苦悩が集約されていました。
その生活と心の機微を余すところなく描いた映画です。
無駄がなく面白い作品でした。
ただ邦題が…
たった2年の出来事を「メアリーの総て」と言い切ってしまうのって、ちょっとなんか…
メアリーに失礼じゃないか? と思ってしまいました。
53年間のメアリー・シェリーの生涯で、確かに彼女の人生で一番激動の2年ではあるけど、他の51年間は「無いも同然」と暗にほのめかしているような、なんだかデリカシーに欠けた邦題だな、と。
観終わった後にそんな感想が湧いてきました。
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