映画「列車に乗った男」あらすじと感想【ネタバレあり】人の人生は羨ましい
「髪結いの亭主」他、多くの作品でタッグを組んでいるパトリス・ルコント監督とジャン・ロシュフォールのコンビ。
そこにフランスの人気歌手ジョニー・アリディが加わって、抒情性あふれる男同士の友情を描いています。
中古価格 |
あらすじ
列車に乗って小さな町に降り立った男ミラン。
暗くなりかけた町に、店のシャッターは次々と下りていく。
まだ開店しているドラッグストアに立ち寄ると、紳士的な雰囲気を持った老人マネスキエがいた。
店の奥から顔を出した店主はマネスキエに、狭心症の薬は切れていることを伝える。
返事をしようとするマネスキエに気づかず、ミランは店主にアスピリンを所望した。
支払いを済ませて店を出るミランに、なぜか興味を持ったマネスキエは彼の後を追うように店を出る。
アスピリンを確認すると発泡錠だったのでミランは歯噛みした。
水がないと飲めない。
そこでマネスキエは、すぐ近くにある自分の家にミランを招いた。
先祖代々から受け継がれてきたものが残された古い屋敷だった。
おしゃべり好きのマネスキエは、飾られている絵画のことや先祖の話などをミランに話して聞かせる。
ミランは面倒くささを感じるが、周辺のホテルは休業していたため、土曜日まで滞在させてもらうことにした。
ミランがこの町に来た理由は、ここにいる仲間と一緒に銀行強盗をするためだ。
その決行日が次の土曜日。
そしてマネスキエも、次の土曜日は手術のために入院する日なのだった。
こうして、まったく違う人生を歩んできた男たちは短い日数を共に過ごし、会話を重ねて友情を育んでいく。
感想
サーカスに在籍していたこともあり、各地を転々とする生活をずっと送ってきたミラン。
いいかげん一つの所に落ち着いて静かな生活を送りたいと考えています。
対してマネスキエは国語教師を定年退職し、先祖代々続く屋敷で一人暮らし。
この小さな町で淡々と過ごす日々を抜け出して、人生に刺激を求めたくなっていました。
まったく正反対の人生を送ってきた彼らが求めるものは、相手がこれまで送ってきた人生でした。
袖振り合うも他生の縁、と言いますが、彼らは晩年になって運命の相手と出会ったのでしょうね。
基本的にこの映画、会話劇で話が進んでいきます。
他愛無い話から、互いの人となりが分かる深い話まで、会話を重ねていくことで信頼関係が築かれていく様子を淡々と見せてます。
エスプリの効いたフランス映画らしい作品です。
もっとも、ルコント監督は「リディキュール」という作品でエスプリをバカにしていますが (;^ω^)
だけど信頼関係を築いても、人生も性格も正反対の二人は袂を分かつしかありませんでした。
手術を受けることで死を漠然と覚悟しているマネスキエは、一緒に銀行強盗をやりたがります。
でもそれはミランが許しませんでした。
ミラン自身もマネスキエとの出会いで、今回の仕事を辞めたくなっているのです。
ずっと真っ当に生きてきたから羽目を外したいマネスキエの気持ちも分かりますが、真っ当な生き方が一番いいんですよね。
はみ出してばかりだったミランだからこそ、そう感じたのだと思います。
ラストは少し不思議な終わり方です。
ミランが警官隊に撃たれた時とマネスキエが手術中に息を引き取ったのは同時刻でした。
死んだと思われたふたりとも、目を開き、指を動かし…
場面は転換し、刑務所から出てきたミランを待っていたマネスキエは自宅の鍵を渡します。
そして二人は反対方向に歩きだし、マネスキエは列車に乗ってどこかへ、ミランはマネスキエの家でピアノを弾く静かな生活を…
死の淵を彷徨っている二人の魂が同時に観た光景だったのかもしれません。
「列車に乗った男」は、最初はミランで、最後はマネスキエになります。
二人の人生は逆転し、友情が芽生えたけれど結局すれ違うことになるんですね。
ベッタリではない。
どんなにすれ違っても友情はそこに在る。
そんな少し淡泊だけど確実な男同士の友情を感じました。
他パトリス・ルコント監督作品
「橋の上の娘」あらすじと感想【ネタバレあり】ツキは呼ぶより掴み取れ
他ジョニー・アリディ出演作品
他ジャン・ロシュフォール出演作品
「プロヴァンス物語 マルセルのお城」あらすじと感想【ネタバレあり】
「美しき運命の傷痕」あらすじと感想【ネタバレあり】面白いけど目に優しくはない
他ジャン = フランソワ・ステヴナン出演作品
映画「北の橋」あらすじと感想【ネタバレあり】京都は碁盤 パリはすごろく
中古価格 |