フランス映画「恐怖の報酬」あらすじと感想【ネタバレあり】脳裏にチラつくリンダの…
1952年に製作されたサスペンス映画です。
監督のアンリ=ジョルジュ・クルーゾー、主演のイヴ・モンタン共に代表作に挙げられる傑作。
トラックを目的地まで走らせる。
ただそれだけなのに “載せているものがニトロ” & “悪路” という付加をつけることで生み出す緊張感。
ハラハラします。
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あらすじ
ウルグアイ南部の町ラス・ピエドラスには職にあぶれた者たちが集まっていた。
アメリカの石油会社の現地法人があるため、そこでの仕事を求めていろんな国からやってきた人間がほとんどだった。
しかしすぐクビになったりして故郷に帰るお金も作れず仕方なく留まっている失業者たち。
彼らは酒場に集まってグチをこぼす。
コルシカ島から来たフランス人マリオも帰るに帰れず燻っているが、彼は酒場の下働きの娘リンダと付き合い、彼女からタバコなどをもらっている。
飛行機が飛んできて、また新たに職を求めてやってきた者が現れた。
その中の一人ジョーという男が、同郷フランスからということでマリオと意気投合。
威勢のいいジョーのことをマリオはすっかり気に入った。
しかし以前からのマリオの友人ルイジはジョーが気に入らない。
ルイジは安給料の仕事をコツコツと続けているが、帰郷の費用がまだ貯まらず鬱屈している上、じん肺に罹り余命半年から一年と医者に診断される。
ある日、石油会社が持っている油田で火災が起きた。
場所は5千キロも先の山の上であり、未だ火の勢いが収まらず延焼し続けている。
そこで会社側はニトログリセリンの爆風で消火することを思いついた。
トラック二台分のニトロを現場まで運ぶのは、そこら中にいる無職の人間たちから選ぶことにした。
2000ドルという破格の報酬に釣られて大勢の失業者が応募してきた。
死ぬ前に帰郷するお金がほしいルイジも参加する。
運転技術を見られ、受かったのはマリオ、ルイジ、そしてビンバという青年とスメロフという中年男性だった。
落選となったジョーは納得がいかず会社の代表に抗議する。
代表は「誰かが辞退すれば交代させる」と言ったので、ジョーは一計を案じた。
出発当日、集合場所にスメロフが現れない。
そこへジョーが「見送りに来た」と言って現れた。
出発時間が差し迫ったため、会社側はスメロフの代わりにジョーをその場で採用した。
マリオとジョー、ルイジとビンバの二組に分かれて二台のトラックを運転する。
荷台に積み込まれていくニトロのタンクを見ていくうち、4人の顔からは余裕がなくなっていった。
そして困難の連続となる恐怖のドライブに出発する。
感想
この作品はカンヌ映画祭でグランプリと、ジョー役のシャルル・ヴァネルが男優賞を受賞しています。
実は作品内でジョーが一番人格の変化が激しい人物なんですね。
登場したときは羽振りも良さそうで堂々とした、頼もしさを感じさせます。
そして勢い込んでトラックに乗るときには、不安を口にするマリオを励ますように「大丈夫だ。俺がついている」と兄貴風を吹かせていました。
しかしいざニトロが載せられると、なんだかんだイチャモンつけて乗ろうとしません。
走り出しても亀の歩み。
これを皮切りにどんどんビビりまくりの情けない人物丸出しになっていくのです。
当然マリオは怒り、軽蔑し、リードする立場も逆転します。
いじめられるし、自業自得なんだけれど可哀想にも思えてくるほど最初の印象とガラリと変わって哀れな老人に見えました。
でもこれ俳優さんからすると演じ甲斐のある人物かもしれません。
肉体的にキツい撮影だったと思うけど (走らされるしビンタされるし油まみれにさせられるし) 役者冥利に尽きる役だったんじゃないかと思えるのです。
ひとつの作品でここまで性格が変わる役ってそうそうないですからね~。
腕の見せ所だったと思います。
実際、徐々に変貌していく姿がリアルでしたもん。
映画撮影が時系列に沿った順撮りだったとは限らないし。
それでこの演技のメタモルフォーゼをやってのけるとは、すごい役者さんだなと思いました。
ジョー役の俳優さんのすごさを語りましたが、でもキャラとして一番好みだったのはビンバです。
落石で道をふさいだ巨岩をニトロで破壊することにしたのですが、このときのビンバの動きのひとつひとつがカッコいいんですよ。
キビキビ動いてスタイリッシュ。
スタイルがいいからめっちゃ映える (*´Д`)
そして穴にニトロを流し込むときの慎重さ。
見ているこっちも緊張する。
そんな頼り甲斐を感じさせるビンバ… それなのに…ああ、それなのに… ( ;∀;)
…まあストーリー上しょうがないってことで (立ち直り早ッ)
何しろラストもブラックだしね、この映画。
この作品、観るのは3度目なんですが、実は初見で一番印象に残ったシーンは、リンダのわき毛でした。
ノースリーブのボーダーカットソーを着て、店主に殴られそうになってパッと腕を上げた瞬間に
ワホッ!!と目に飛び込んできて仰天。
その後ストーリーに身が入らなかったことをよく覚えています。
2度目のときはわき毛に惑わされずちゃんとストーリーを追いかけて「面白かった」と満足できました。
そして今回、「あれ?こんなもんだったっけ?」とわき毛の衝撃が薄れていました。
というか、わき毛があるか無いか微妙な薄さになっている気がする。
最初のときの黒々としたわき毛の衝撃は、記憶が改ざんされたものだったのだろうか。それともデジタル処理とかがされたのか。
初見のときとは別の意味でまたわき毛が気になってしまいました。
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