映画「愛人 ラマン」あらすじと感想【ネタバレあり】哀しい愛の気づき
マルグリット・デュラスの自伝的小説を、ジャン = ジャック・アノー監督が映画化しました。
主演はこの作品で銀幕デビューを飾ったジェーン・マーチ。
そして香港スターのレオン・カーフェイです。
ふたりとも役の名前は出てきません。
ナレーションおよび成長した主人公をジャンヌ・モローが務めました。
あらすじ
1929年。仏領インドシナ (現在のベトナム)。
サイゴンの寄宿学校に在籍しているフランス人少女は、休暇を利用してヴィンロンで暮らす家族に会ってきた。
教師の母が働く小学校官舎には、ふたりの兄たちも住んでいる。
上の兄ピエールは横暴で、阿片窟にも出入りしているチンピラである。
母や使用人のお金を盗むのを常習にしているのに、母の愛情はこの長兄にだけ向けられている。
下の兄ポーロは泣き虫で、ピエールの横暴にも黙って耐え忍んでいた。
少女はいつも彼を心配している。
貧乏で恐怖に支配されている場所。
彼女はここが嫌いだった。
休暇が終わり、サイゴンに戻る船の中、少女は甲板に出て汚れたメコン川の流れや景色を眺める。
物流で溢れる船の上で、黒塗りの高級車が乗船していることに彼女は気づかなかった。
その車の後部座席から下りてきた身なりのいい中国人青年は、少女に興味を持って話しかけてくる。
寮まで送る、という彼の誘いに彼女は乗った。
青年は華僑の富豪で32歳。
財産で暮らしていけるため無職だと自己紹介した。
少女は彼に年齢を聞かれ、17歳と答えた。
本当は15歳である。
車の中で手を握られて少女は目をつぶる。
寮に着くころには内ももに手を置かれていた。
官能を振り切って彼女は車を下りた。
この学校で白人は彼女ともうひとりの少女エレーヌだけである。
そのため二人は仲が良く、その夜エレーヌから売春をしている生徒がいることを聞いた。
見ず知らずの男と関係を持つことに、少女は憧れに似た感情を持つのだった。
翌日、寮の前に見覚えのある高級車が停まっていた。
少女は自分からその車に近づいていった。
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感想
この映画の官能性は、公開当時も話題になりましたね。
ジェーン・マーチが本当に華奢で小柄で15歳に見えるから、純真そうな女の子が大胆な濡れ場を… と興味を惹きつけたものです。
貧しい設定なので、一張羅は使い回しです。
少女らしい三つ編みのおさげ髪にシンプルな生成りのワンピース、ビジュー付きの少し大人びた靴、そして男性用の帽子を被っているアンバランスな恰好なのですが、これが素敵に見えるから不思議です。
折れそうなほど細い腕と足が出ていて、彼女のロリータ的な魅力を際立たせています。
そんな少女に近づく、華僑の富豪青年。
働かなくてもいいので暇を持て余しています。
彼女と関係を持った後、自分には婚約者がいると言い、少女とは結婚できない、と繰り返し伝えます。
こういうズルい男いるんだよな~ (# ̄皿 ̄)
カラダ目当てだから、目的を達成したらそういうこと言って牽制してくるんですよね。
でも相手が本気になることは、自分のプライドが保たれるからウェルカム。
クソ男めが… ドブ川に蹴り落としてもいいですかー!?
(メコン川はドブ川じゃねー( ・`ω・)⊂彡☆))Д´) パーン)
とまあ、そんな牽制をされるのですが、少女は何も言わずご馳走してもらってる食事にがっつきます。
「遊びだから結婚できると思うな」と伝えてる相手に「お金目当てだからどうでもいい」と態度で出してるんですね。
お金だけが目当てだったかは、実は少女自身にも分からなかったのですが、彼女には青年にはないハングリー精神があります。
彼女は父を亡くした後、母が騙されて使い道のない土地を買わされ、それで貧乏に転落した経緯がありました。
母はその後、周囲から「うそつき」など、さんざん詰られて失意の底から未だに抜け出せずにいます。
ピエールは嫌いだけれど、母とポーロは助けたい。
その気持ちが彼女の芯となってました。
青年と家柄が合うお嬢さんにはない部分だと思います。
彼は結婚できないにも関わらず、彼女に本気になっていきました。
身分違いの恋というには刹那的すぎます。
まだ人種差別もあった時代。
少女が中国人の愛人になっていることは、家族には屈辱でした。
それでもお金の力を見せつけられると、母は娘の行為を後押しする行動にも出ます。
力のない母は、札束の前にひれ伏すしかなかったんでしょうね。
中国人というだけで見下していたのですが、長兄の借金返済や生活費などを助けられて、自分のことを恥じるのです。
そして学校でも、少女は誰からも話しかけてもらえなくなりました。
ボールをぶつけられても、他の生徒たちは謝りもせず、むしろ彼女に触れたボールにバイ菌が移ったかのように嫌悪感を表に出します。
中国人と関係を持ったことで、彼女の環境は変化しました。
彼が結婚し、自身がフランスに帰ることになり、もう会わなくなった彼らの関係はゼロに戻ったといえます。
だけど帰国の船の中でショパンが聞こえたとき、少女は青年を愛していたのだと気づいて嗚咽しました。
性愛から始まったがゆえに、それとも若さゆえにだったのでしょうか。
遅すぎた愛の気づきを、彼女はこれから昇華することになります。
儚げで、胸に迫る美しい雰囲気が全編に流れている良作です。
身分違いの恋愛でありながら、シンデレラストーリーではない切なさが沁みました。
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