映画「めぐり逢い」あらすじと感想【ネタバレあり】明日という希望があるから
1957年公開。
レオ・マッケリー監督が1939年に製作した作品「邂逅」をセルフ・リメイクした作品です。
主演はケーリー・グラントとデボラ・カー。
メロドラマの名作として、1994年にはウォーレン・ベイティ&アネット・ベニング夫妻で再リメイクされ、1993年のトム・ハンクス&メグ・ライアン主演作「めぐり逢えたら」ではモチーフに使われています。
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あらすじ
稀代のプレイボーイとして名を馳せているニッキーが、ついに結婚する。
お相手は、自身でも6億円の資産を所有する富豪令嬢のロイス・クラーク。
婚約者が待つニューヨークに向けて豪華客船に乗船した彼は、時の人として他の乗客からも注目の的だった。
しかしこの結婚のニュースに、弄ばれた女性ガブリエラは船まで電話をかけてニッキーを責めるが、彼は電話が混線しているフリをしてさっさと切ってしまう。
部屋を出ると、いつの間にか落としていたガブリエラからプレゼントされたシガレットケースを手に持っている女性が通りかかり、話しかけた。
女性が、このシガレットケースが本当にニッキーのものか疑うので、ニッキーは裏蓋に書かれたガブリエラからの愛のメッセージを示す。
彼女はシガレットケースをニッキーに返すが、プレイボーイぶりに呆れる。
しかし彼女を気に入ったニッキーは、自分の船室に誘うがそれは断られて彼女の船室にお邪魔した。
女性はテリーといい、彼女もまたケンという婚約者がいるのだが、大きな仕事を任されている彼から一人旅に出るように言われて、その帰国の足に選んだのがこの船だった。
共に一人旅のふたりは一緒に夕食をとることにするが、ダイニングに出向くと、ニッキーが有名人のため他の乗客たちから好奇の目を向けられる。
翌日、デッキで二人が話していると、写真家が勝手にツーショット写真を撮影する。
ネガは捨てるが、それぞれ別に婚約者がいるふたりは、これ以上誤解を受ける行動はしないほうがいい、とこの先は一緒に行動しないことにした。
しかし狭い船内。
行動も似通っているふたり。
プールに行けば水中で頭をぶつけるし、夕食をとりに行けば背中合わせの席になって周りから笑われる。
船は途中で南フランスの町ヴィルフランシュ=シュル=メールに寄港する。
そこに祖母が住んでいるニッキーは立ち寄ることにして、テリーも誘う。
人目を気にするテリーも、そこなら安全と見て了承した。
ニッキーの祖母ジャヌーは高台の邸宅にひとり暮らしだった。
使用人が身の回りの世話をしてくれるが、この場所の庭園を整え、亡き夫を偲ぶ小さなチャペルを建て毎日祈りを捧げて、ささやかに暮らしている。
テリーはこの場所の美しさに感銘をうけ、ずっとここにいたくなる、と言って周囲を見渡す。
ジャヌーからニッキーに絵の才能がある話を聞かされ、今の遊び人ぶりのツケがいずれやってくることを危惧する彼女から、ずっと傍にいてほしいと頼まれてテリーは困惑する。
短い逢瀬だがジャヌーとお互いに好印象を持ったテリーは、別れを惜しみながらまたニッキーと一緒に船に戻っていった。
最後の夜。
プールで額を抑えて見つめ合う二人の盗撮写真が、売店で売り出されていることを知りニッキーたちは開き直った。
ダンスパーティーでパートナーチェンジすることなく二人は終始一緒にいる。
会場を抜け出した二人は、お互いがかけがえのない存在になっていることを確かめる。
お互いの婚約者のこと、この先の仕事のこと…
二人が結婚するには乗り越えなければならないことがある。
ニッキーは、デッキから見えるエンパイア・ステートビルの最上階で半年後の7月1日午後5時に落ちあって結婚しようと提案した。
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感想
ジャヌーの庭園、そしてその中にある手作りのチャペル。
このささやかながら美しく静謐な場所に神聖さを感じ、天国のようだと感じたテリーはジャヌーに「ずっとここにいたい」と言います。
しかしジャヌーは、ここは思い出に浸るための場所であって、若い人は思い出を作らなければいけない、と窘めます。
テリーはどこか天国へ行くことに憧れを持っている女性です。
ニッキーとの約束の場所がエンパイア・ステートビルの102階にある展望台と決まったときも、高い位置にあるから天国に近い場所だと興奮します。
天国のイメージというと、わりと似たようなイメージを誰でも持っているのではないかと思います。
争いも悲しみも憎しみもない恒久の平和が約束されている世界。
「びっくりするほどユートピア!びっくりするほどユートピア!(尻パンパン)」というくらい理想的すぎる理想郷という感じでしょうか。(違うし…しかも古いし)
まだ若いテリーですが、心のどこかで疲れを感じているのかもしれないですね。
天国を求めるときって、心の平穏もしくは解放を求めているときではないかと思うのです。
ジャヌーの庭園のような静謐な場所。
空に近い高い場所。
いずれも時の流れが止まったような感覚が湧き出る場所だと思います。
でもそれは感覚なだけで、実際には容赦なく時間は流れます。
ジャヌーの言う通り、若いうちはまだ思い出作りに動き回り、もうやりたいことをやりつくしてから天国のような場所を目指していいのではないでしょうか。
天国に近い場所は、自分の内から作り出すことができると思うのです。
それは存分に何かをやった後に出てくるはずです。
天国を求めるより天国を作る。
生きている人間は、その気持ちでいていいんじゃないかと思います。
エンパイア・ステートビルに向かう途中で事故に遭い約束を果たせなかったテリーは、歩けなくなってしまいます。
待ちぼうけを食ったニッキーはそのことを知らず失意の日々に。
彼に心配かけたくないテリーは、歩けるようになるまでニッキーに会わないつもりでした。
神父さんの紹介で、子供だけの聖歌隊を教会で指導する仕事を紹介してもらいます。
しかしクリスマス・コンサートではドクター・ストップがかかり、テリーは指揮を執ることができません。
ベッドにいる彼女に子供たちがお見舞いにやってきて、コンサートで歌う曲を披露します。
“明日の国” トゥモローランドに行けばイヤなことは忘れられる。
ただ祈って眠ればそこに行ける。
明日という日には希望がある、という意味合いの曲でした。
おそらくテリーの選曲です。
彼女の足はまた歩けるようになるか分かりません。
それでも彼女は治ると信じています。
ラストシーンで、全ての誤解が解けてニッキーと抱き合ったとき、テリーは泣きながら「絶対に歩けるようになる」と宣言します。
明日という未来がある以上、希望は捨てないという彼女の意志の強さが現れた良いシーンです。
今日がダメでも明日がある。
明日は明日の風が吹く。
“明日” を使った慣用句には、希望が込められています。
今日は何か上手くいかなかったり、失敗したとしても、明日は何かいいことが待っているかもしれない、と思いながら日々を過ごしていきたいですね。
そんな希望が湧いてくる映画でした。
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