映画「溺れるナイフ」あらすじと感想【ネタバレあり】音楽の使い方は大事
2016年公開。
小松菜奈さんと菅田将暉さんがW主演の、ナイフのような痛みを伴う青春映画です。
ながら見をしながら観ようと思っていたのですが、主演ふたりの魅力と瑞々しい心情描写や自然豊かな風景などに目を奪われて、最初から最後まで集中して見入ってしまいました。
今さらながら菅田さん、あんなに色気がある人とは… ヤバイ (;´Д`)ハアハア
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あらすじ
東京でティーンモデルをやっていた中学三年生の望月夏芽。
旅館を経営している祖父の年齢を考慮した父が後を継ぐことになり、夏芽は一家そろって浮雲町というところに引っ越してきた。
刺激的なことが何もない田舎町。
芸能界にいたかった夏芽は不貞腐れる。
宴会場の喧騒を避けて夜の海に足を延ばし、立ち入り禁止の看板を無視して鳥居がある浜辺へと向かう。
自分だけと思っていたが、少年がひとり海の中に入っているのをみて思わずそちらに近づいていった。
夏芽に気づいた少年は海から上がり彼女に向き合う。
威圧感に驚いて腰を抜かすと、彼は夏芽を見下ろして「誰にも言うな」と言って去っていった。
翌日、転校先の学校で、夏芽はすでに有名人だった。
夏芽が出ている雑誌をみんなで見せあっていて、芸能人が来る、と噂になっていたからだ。
教卓の前で初日の挨拶をすると、元から夏芽のファンだった女子をはじめ、皆が歓声をあげて注目する。
その中で、ひとりだけ夏芽にまったく興味を示さない生徒がいた。
昨夜の少年だった。
彼は長谷川航一朗という名で、通称はコウ。
地元の有力者である神主一家の跡取り息子だ。
二人が出会った浜辺は「神さんの海」といわれている場所で、入水すると災いが降りかかるという伝説が残されている。
だからあの場所は立ち入り禁止なのだ。
神の存在を肯定しつつも、そんな伝説を歯牙にもかけずに禁忌を平気で冒すコウに、夏芽はコウ自身を神のように万能な存在と錯覚し、急速に惹かれていく。
しかしコウの態度はいつも素っ気なかった。
ある日、引退同然だった夏芽に写真集のオファーが舞い込んでくる。
有名カメラマンの広能が夏芽に興味津々と聞いて、俄然やる気になった。
撮影当日。
浮雲町にある林の中で撮影していると、ファインダーを覗く広能に小石がぶつけられた。
投げたのはコウ。
「この町にあるものは全部オレのものじゃ!」と叫び、夏芽を指さして「そいつもオレのものじゃ!」と怒鳴って駆け出していった。
夏芽は咄嗟にコウを追うが、スルスルと木立をぬって逃げていくコウに追いつくことはできなかった。
後を追ってきた広能に夏芽は泣きながら、コウに勝ちたくてオファーを受けたのだと告げた。
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感想
広能にコウへの対抗心で写真集を出すことを決めたのだと白状した夏芽ですが、その対抗心とは、自分がコウに憧れているのに対し、コウからはまったく興味を持たれていないから振り向かせたい、ということだったのだと思います。
そして思いがけず「オレのもの」という言葉を聞けて、真意を確かめたくて追いかけるけれどコウは逃げてしまい、やはり夏芽の手からすり抜けていってしまいました。
写真集が出来上がったあと、二人は付き合い始めますが、舞い上がって一途になる夏芽に対し、コウは彼一筋になっている夏芽への興味がなくなってきています。
しかしコウは夏芽を、ときに冷たく突き放し、ときに積極的に接近してくる…
どこまでも真意を悟らせてくれず、夏芽の存在がどこまで彼の中に食い込んでいるのか、と翻弄させます。
この余裕のある態度…
自分だけを見て欲しい、と切に願う10代女子には結構キツい思いをさせます。
おかげで夏芽は、気持ちが上げられては落とされ、落とされては上げられるので、泣き叫んで地団駄ふんだり、海に突き落とされても幸せを感じたり、と見ていても痛々しいほど感情がアップダウンします。
気になる人には振り向いてほしいですよねぇ。
だけど、あの手この手でアプローチを仕掛け、自分がどれほど相手を好きなのかを伝え続けても、相手にはなかなか響きません。
重いんです…
「あなたになら自分の全てを捧げたいと思っている」
「あなたが言うのなら、自分はその通りに実行してみせる」
夏芽は事あるごとにコウに伝えますが、コウからは突き放されます。
10代の多感でまっすぐな時期は、計算やテクニックがないため相手にこういう重量感たっぷりの言葉をぶつけてしまいますが…
人によっては、年齢を重ねてもピュアなまま自分の強い思いを相手にぶつけて自爆することがあります。
真剣さは伝わるのですが、やはり早いうちに恋愛にもルールがあることを知り、自分の思いの “重量” を相手には軽く見せるコツを身に着けることをオススメします。
有力者の息子でこの町にあるものはすべて自分のものだと言い切り、欲しいものも全てその手で掴んできたコウは常に自信に満ちています。
自分にできないことなど何もない、という万能感。
自らそのオーラを出しているため、夏芽もコウのことを密かに「わたしの神さん」と呼んで崇め、慕います。
地元の風習・火つけ祭りの夜、コウは面をつけて演舞を行う行列に参加。
夏芽は浴衣姿でコウの雄姿を見学していましたが、旅館に泊まっている男・蓮目のウソに騙されて連れ出されます。
コウは目撃した同級生たちから聞き出して夏芽のピンチにすぐに駆け出していきました。
車で山奥まで連れてこられた夏芽は車から逃げることはできましたが、土地勘のない山の中で沢のほうまで下りてしまいます。
追いついたコウが丘から手を伸ばして引っ張り上げようとしますが、背後をとられてしまい、蓮目に痛めつけられて動けなくなります。
蓮目は沢に降りてふたたび夏芽を襲いました。
同級生の通報により警察や地元消防団の人たちが駆けつけて未遂となりましたが、恐ろしい目に遭った夏芽より、コウのほうが絶望感で声をあげて泣いていました。
大人の力に太刀打ちできず、無力な中学生でしかなかったことを思い知らされ夏芽を助けることができなかった。
それまで自信満々で持っていた万能感は幻でしかなかったことをコウも、そして夏芽も思い知った瞬間でした。
助かったあと、大人にしがみついてわあわあ泣いているコウを、夏芽は冷めた瞳で見つめます。
これがきっかけで二人は別れました。
「自分はすごい」「自分が好きになった人はすごい」
そう思って満足している人は大人でもいます。
さすがにある程度の年齢なら、失敗したり上手くいかなかったことも経験しているので “万能感” まで持っている人は少ないと思いますが…(;^ω^)
自分やパートナーがすごい人だと思うのはいいですが、他人にも知ってほしいと思って自慢したりマウンティングするのはやはり違います。
思い上がりだと取られて、聞かされたほうからあまりいい印象を持たれなくなります。
二人だけの世界ではすごい人でも、そこから離れると普通の人です。
周囲からすごいと思われたがっていると一線引かれてしまいます。
そう見られたい気持ちは理解できますが、安っぽい人だ、と逆に見られてしまうので承認欲求はほどほどに。
話は引き込まれましたが、気になったところが多々ある作品です。
蓮目が夏芽を襲うシーンなんて、(小松さんの事務所に肌の露出はここまで、って言われてんだな) という裏事情が丸わかりで、蓮目役の俳優さんが気の毒になりました。
「早くカットかけてやれよ」と。
そんな気になる中で一番「やり直してくれ」と思ったのは、音楽の使い方。
雰囲気のあるシーンで、できれば音楽なしかスローなインストゥルメンタルが合いそうなところを、妙にポップで歌いりの音楽を流してMVみたいにしてしまっている箇所が多数。特に後半。
「いや、ここ歌いらねーし、って2番まで歌うんかーーい!」とひっくり返りました。
抒情性だいなし。
心に残るはずのシーンが、別の意味で印象に残ってしまいます。
音楽の力は偉大です。
だから使いどころを間違えるととんでもないことになる、と教えられました。
他 菅田将暉 出演作品
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