映画「大いなる幻影」あらすじと感想【ネタバレあり】平和な世が “幻影” だった時代
ジャン・ルノワール監督の代表作に挙げられる反戦映画です。
捕虜収容所を舞台にした作品が、これ以降、数多く作られるきっかけになりました。
フランスを代表する俳優ジャン・ギャバンを主役に配し、名優エリッヒ・フォン・シュトロハイムも印象深い演技を披露します。
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あらすじ
第一次世界大戦下。
フランス空軍部隊所属のマレシャル中尉は、彼が撮った航空写真に写っていたものが気になっている、というド・ボアルデュー大尉と共に偵察飛行に出た。
運悪く敵ドイツ軍に撃墜され、マレシャルもド・ボアルデューも捕虜になってしまう。
収容所に移送される前にマレシャルは腕の負傷を手当てしてもらい、ふたりとも昼食の席に招かれる。
もてなしたのはドイツ軍将校のラウフェンシュタイン大尉だった。
貴族階級出身で、軍人にありがちな粗野な振る舞いを嫌う彼は、自身と同じく貴族階級のド・ボアルデューに親しみと敬意を払っていた。
すぐに迎えの者が来て、ふたりは将校捕虜収容所に送られた。
そこでは、禁止事項は数多くあったが比較的自由な雰囲気があり、ロシアやイギリスの将校たちも捕虜になっていた。
そして同じフランス軍中尉のローゼンタールもいる。
彼らは家族からの仕送りを分け合ったり、演芸会を開いたり、制約がある中で楽しみを見つけるが、それでも監視のドイツ兵たちの傲慢さに腹を立てていた。
演芸会のステージで、マレシャルはフランス軍による砦攻略の勝利を祝って国歌斉唱を促した。
その大合唱はドイツ側将校たちの不興を買い、マレシャルは独房に入れられる。
脱走を試みるがアッサリ捕まってまた独房に戻された。
数日後、抜け殻のようになったマレシャルが団体部屋に戻されると、同房の皆が脱走用の穴を掘っていたことを知る。
ここでも楽しむことはできる。
だけどやっぱり故郷に帰りたい。
マレシャルも脱走計画に一枚噛むことにした。
もうすぐ実行に移そうとしていた頃、マレシャルもド・ボアルデューも別の収容所に移されることになってしまった。
ふたりはその後数カ所の収容所を転々とするが、度重なる脱走未遂により、ついにはスイス国境に近い一番監視が厳しい古城の収容所に回される。
そこには、以前もてなしてくれたラウフェンシュタイン大尉が所長としてふたりを待っていた。
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感想
第一次世界大戦が舞台なので「西部戦線異状なし」と同じ時期ですね。
あの作品の飢餓感と見比べてしまうと、こちらは将校たちが入れられる捕虜収容所のためか、のどかな感じに見えてしまいます。
どちらの作品もリアルなんでしょうけれど、お優雅な雰囲気のせいで、ちょっと冗長にも感じてしまいました。
互いに幹部クラスであり、貴族階級であるからこそ丁重に扱い、友情を感じているラウフェンシュタインに対し、彼に慕われているド・ボアルデューはむしろ自分の部下たちの方を気にかけている。
そのことがはっきりと伝わる、マレシャルたちの脱走を手助けするために自分が囮になるシーンは印象に残ります。
撃ちたくないのに撃ってしまったラウフェンシュタインの焦燥。
いい演技です。
終盤はマレシャルとローゼンタールの逃避行にスポットが当たります。
喧嘩したり仲直りしたり、未亡人に助けられて恋仲になったり…
やっぱりあまり大変そうな感じがしない( ̄▽ ̄)
ラストでピンチを思わせますが、国境を超えて雪山をノッソノッソ歩くところで終わります。
無事に山を越えられたのでしょうか。
戦争が終結し平和な世界がやってきて、約束通り未亡人をマレシャルが迎えに行けることは、そのときの彼らにとっては幻影です。
現実にその夢が叶ったとき、それはもう幻影ではなくなるのですが、彼女を本当に迎えに行くか行かないかで変わってくるだろうな、と思いました。
迎えに行けば未来を作る “現実” 、行かなければ「遠い過去のこと」で片づけてしまう夢の中の出来事と変わらない “幻影” 。
そんなふうに変化するのかもしれません。
監督が適当につけた題名だそうなので、意味合いを考察するのも無駄のような気もしますが…(;´∀`)
まあそんな風に思いついてしまったので、たわ言として流していただければ幸いです。
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