映画「友だちのうちはどこ?」あらすじと感想【ネタバレあり】思いやりがある小さな冒険
イランのアッバス・キアロスタミ監督が描く、コケール村を舞台にした三部作の第一作目です。
この後に「そして人生はつづく」「オリーブの林をぬけて」と続きます。
プロの俳優は起用せず、出演者は全員、現地の住人たちです。
家屋や街並み、学校などもそのまま撮影しています。
あらすじ
コケール村の小学校に通う8歳のアハマッド。
授業が始まる前に同級生たちが騒いでいたから、先生はすこぶる機嫌が悪い。
隣村のポシュテからやってきている生徒の遅刻や、背中が痛いと言っている生徒にも当たりがキツかった。
そんな中、アハマッドの隣の席に座るモハメッドは、宿題をノートに書いてこなかったことで怒られる。
注意を受けたのがもう3回目だったこともあり、先生はモハメッドに「次にノートに書いてこなかったら退学にする」と宣言。
モハメッドは泣いて机に突っ伏した。
先生は生徒全員に向かって、まず宿題をし、それから遊びに出かけたり家の手伝いをすること、と指導する。
下校時、ふたりで並んで歩いているときにモハメッドが転んだので、アハマッドは彼を水場に連れて行って、ズボンの汚れを落としてあげた。
帰宅したアハマッドは、すぐに宿題に取り掛かろうとするが、母からいろいろと用事を言いつけられる。
ようやく宿題をする時間ができて鞄を開けると、自分のものと一緒に、モハメッドのノートまで入っていた。
宿題ができないとモハメッドは退学になってしまう。
アハマッドは、ポシュテに住むモハメッドの家に行ってノートを返さなきゃ、と言うが、母から叱られる。
アハマッドは母の目を盗んで家を抜け出し、ポシュテに向かった。
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感想
ジグザグ道の丘を登って隣村まで行くアハマッドですが、実はモハメッドの家を知りません。
出会った人たちに聞いて回るのですが、誰も「知らない」と言うばかり。
つ… 冷たい。
貧すれば鈍する、というか、みんな自分たちの仕事に忙しくて、アハマッドの相手をする心の余裕を感じないんですね。
一応「あっち」とか指を指してくれることもあるのですが、着いた先でも「うちじゃないよ」のひと言でプイ。
意地悪なのは知らない大人ばかりではありません。
モハメッドの家に行くことを禁止するお母さん、そこまで怒らなくても、と思うくらい鬼ババ。
そして何故か町中で寛いでいる爺ちゃんは、タバコを持ってくるように強制。
礼儀を教えるために体罰は必須という考え方のクソジジイ。
ドア売り商人は、ノートの紙を1枚よこせ、と自分の要求をするときはしつこいのに、アハマッドの質問はガン無視するロクデナシ。
周囲が酷すぎるからアハマッドの優しさが光ります。
宿題ができなくて困るのはモハメッドであって、正直アハマッドに得することはありません。
それでも、モハメッドのために必死に駆けずり回ってノートを返そうとする。
ものすごく良い子です。
終盤、モハメッドの家まで連れて行ってくれるお爺さんが登場。
花を一輪くれて、それをノートに挟んでおくようにアハマッドに言います。
優しい人もいて良かった、と思うのですが、彼が案内してくれたのは、同じ苗字の違う家。
あのドア売り商人の家でした。
ガッカリしつつも、優しいアハマッドはノートを服の下に入れて隠します。
ちゃんと渡せた、と思わせるための気遣いです。
夜も遅くなり、帰宅したアハマッドは夕食も食べられないほど落ち込みました。
人のためにここまで落ち込めるアハマッドたん、マジ天使。
鬼ババ母さんの声すらも優しくなっています。
翌日、登校したモハメッドは宿題ができなかったことで俯いていました。
遅刻してきたアハマッドでしたが、モハメッドに「宿題やってきたからね」とノートを渡します。
夜のうちに二人分の宿題をこなしていたのでした。
最初からこうすれば良かった、などと野暮なことはいいません。
誰かのために頑張れるアハマッドの小さな冒険は、薄汚れた大人の私にも「世の中捨てたものじゃない」と思わせます。
モハメッドのノートには、お爺さんからもらった一輪の花。
思いやりが繋ぐ、素敵なお話でした。
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