映画「ポセイドン・アドベンチャー」あらすじと感想【ネタバレあり】
1972年公開。
元祖・災害パニック映画の傑作です。
この作品の特殊撮影技術を利用して、のちに超高層ホテルを舞台にしたパニック大作「タワーリング・インフェルノ」が作られました。
この二大作品でデザスター (災害) ムービーというジャンルが定着しましたね。
まさに爆誕という感じで、後年の作品群にも多大な影響を与えています。
数年後には続編が、そしてさらに数年後にリブートも制作されました。
ジーン・ハックマンが型破りな牧師役でタフガイぶりを見せています。
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あらすじ
ニューヨークからアテネに向かう豪華客船ポセイドン号は、嵐の真っ只中にいた。
乗船して何かとイチャモンをつけてくる船主代理人の要求のせいで、寄港先から燃料を補給できずにバラストが不足しているため、船は大きく揺れる。
緊迫しているブリッジに、好奇心旺盛な10歳の少年・ロビンがやってきて船長は驚く。
いつでも来ていいとは言ったが、このタイミングで…
船長は困惑してロビンに隅にいるよう指示するが、ロビンはこの船の情報を仕入れていく。
一夜明け、嵐から抜けることができた。
乗客たちも穏やかな朝を迎える。
船酔いから回復した妻リンダに安堵する刑事のロゴ。
両親からの電報を受け取って喜ぶロビンと姉のスーザン。
甲板では、これから孫に会いに行くのを楽しみにしているマーニーとベルのローゼン夫妻がデッキチェアで寛いでいるところへ、ふたりと仲良くなったマーティンが挨拶していく。
少し離れた場所では、保守的な考えから外れているスコット牧師が年配の牧師に持論を展開して呆れさせていた。
ダイニングでは、今日の大晦日から新年にかけて夜にパーティーが行われるため、ジブラルタルから乗船してきたバンドが船賃代わりにステージで歌うことになっており、リハーサル中である。
ボーカルのノニーの歌声に、給仕のエイカーズはパーティー準備の手を止めて聞き惚れていた。
夜になり、上記の人たちもパーティー会場に集まった。
船長やパーサーも乗客たちとテーブルを囲んで和やかに談笑する。
しかしブリッジから連絡が入って船長は中座した。
海底地震が発生する、という情報を受け、なんとか回避しようとするが、地震に伴う大津波が船を直撃する。
船長や機関士らはそれにより死亡。
バラストの不足により船底が軽いので、船はあっという間に真っ逆さまにひっくり返った。
パーティー会場にいた人たちもその衝撃で何人か亡くなる。
会場に残っていたパーサーは生き残った人たちに、救助が来るのでこのまま動かないように指示。
しかしスコット牧師は、今や船の最上階になった船底に向かうべきだと主張し、意見は真っ二つに分かれた。
横倒しになった巨大なクリスマスツリーを、上階で取り残されているエイカーズがいる足場にかけて、スコット牧師を含めた9人が登っていく。
会場に留まることにした人たちは、爆発によって水が入り込んでしまい全員死亡した。
こうしてエイカーズも含めた10人は、ロビンの知識とスコット牧師の行動力を軸にして、救助隊が来るはずのプロペラシャフトに向かっていく。
だがその道のりは困難の連続だった。
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感想
兄と一緒にバンドを組んで歌っていたノニーですが、兄は最初の転覆で機材の下敷きになって亡くなりました。
ショックで泣き崩れ、その場に留まろうとした彼女をマーティンが励ましてツリーに登らせます。
その後もノニーは「ひとりじゃ何もできない」としゃがみ込んで泣いたり、押し寄せる水の恐怖に悲鳴をあげて身を強張らせたり、梯子の途中で完全に動けなくなってしまったり、と何度も恐怖心に打ちのめされそうになりました。
しかしマーティンがずっと彼女の傍から離れず、声をかけて勇気づけます。
ずっと仕事が忙しくて独身で恋人もいない彼は、ひとりでこなすことに慣れています。
だから弱音を吐くノニーに「ひとりでも出来る。大丈夫だ」と伝えました。
とはいえ、ノニーはずっと兄に頼ってきた甘えん坊の妹だったのでしょう。
いきなり“ひとりでも大丈夫だ”と言われても、急に自立できるものではありません。
だからマーティンは、兄代わりとして彼女を見守り、導いていきます。
ノニーのように怖くて固まってしまうのは、危機的状況になったときの普通の状態だと思います。
「後ろがつかえるから早くしろ」と怒鳴る気持ちも分かりますし、実際うしろの人は死んでしまう状況になるのだから、焦りもします。
だからこそ、ひとりにはさせられないんですよね。
誰かの支えがあれば、どんなに怖がっている人でも勇気を出せます。
見捨てられたら、それこそその人は終わりです。
支えてあげましょう。
人は一人では生きていけないのだから。
面倒見がいいローゼン夫妻のベル夫人。
独身者を見ると放っとけない、と言って、何組ものご成婚カップルを誕生させてきた模様。
もちろんマーティンのことも、いい人を紹介してあげよう、と考えているようです。
そんなベルさん、ぽっちゃり体型のためツリーを登れないんじゃないか、通路を塞いでしまうんじゃないかと気にして、何度かシャフトまで行くことを諦めようとする素振りを見せます。
自分のことより他人のことを常に気に掛ける性格で、自分より未来がある若い人たちが助かるべき、と言って先に行かせようとします。
道のりもだいぶ後半になってきたところで、水に潜らなければ進めないルートに差し掛かりました。
ここでもスコット牧師が先頭に立って、息が出来るところまでロープを繋げるといって潜ろうとします。
そのときベルは、自分が女子水泳協会会員であり、潜水の記録ホルダーであることを告げて、その役目を自分にやらせてほしい、と申し出ました。
スコット牧師は疲れ切っているはずだし、この状況で自分も何か皆の役に立ちたい、と言って説得しようとします。
困難の克服には協力は不可欠な要素です。
その中でひとりひとりが自分に出来ることをやっていくことがベストですね。
ベルのように、いつも他人のことを思っている人は、みんなを助けるための役割を与えられることが嬉しいはず。
お金持ちの口癖は“Is there anything I can do to help? ”(何かお手伝いできることはありますか?) なのだそうです。
人の役に立とうとする気持ちが、身も心も裕福にするのでしょうね。
牧師であり神の存在も信じているスコット牧師ですが、「苦しい時に神頼みなんかするな!自分の力で切り拓け!」と言って、自分自身もそのように実行します。
絶望的な状況で神に祈りたくなる人間の弱さを否定する型破りな彼は、弱い人たちにこそ信仰が必要と説く年配の牧師とは正反対です。
スコット牧師の強さは少々エゴイスティックでもありますが、努力をしない人間に神の救いの手が伸びるはずがない、というのも真理だと思います。
天は自ら助くる者を助く、というのはこういうことなんじゃないか、と解釈しているので。
知恵を絞って手を尽くして、それでもダメだったときの最後にくるのが“祈り”という行為ではないでしょうか。
神様に頼む前にまずは自分、そして協力してくれる人たちで手を尽くす。
スコット牧師の教えは、厳しいけど大事ですね。
長々と書きましたが、実は「ポセイドン・アドベンチャー」に関しては、岡田あーみん先生が「ルナティック雑技団」の3巻において1ページで紹介しています。
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この紹介の文章と絵が俊逸!
初めてテレビ放映された時のテレビ局の不謹慎な盛り上がりっぷりや、スコット牧師のお笑いキャラぶりを的確かつ面白く伝えています。
もうぜひこっちも読んで、とオススメします。
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