映画「ルージュの手紙」あらすじと感想【ネタバレあり】真逆のふたりが直面する“生と死”
カトリーヌ・ドヌーヴとカトリーヌ・フロの二大女優が初共演したヒューマンドラマです。
「セラフィーヌの庭」のマルタン・プロボが監督・脚本を務めました。
共演はオリヴィエ・グルメ。
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あらすじ
ベテラン助産婦のクレールは、今夜も立て続けに赤ちゃんを取り上げ、忙しい夜勤をこなしていた。
だがこの産院はもうすぐ閉鎖される。
同僚たちは最新技術が進んでいる大規模産院に移るが、クレールはそこで働くつもりはなかった。
夜勤を終え、一人暮らしのアパートに戻ると留守番電話が入っている。
ひとりは大学生の息子シモンからで、近況報告だった。
そしてもうひとりは、父アントワーヌのかつての後妻で、30年前に突然いなくなった元義母のベアトリス。
実に30年ぶりの連絡にクレールは驚く。
そして「会いたい」というメッセージを聞いて、クレールはベアトリスと会うことにした。
急に連絡を寄越してきた理由を尋ねると、脳腫瘍を患い、ふとアントワーヌに会いたくなったのだという。
30年前と変わらず派手好きで享楽的なベアトリスに嫌悪しながら、クレールはアントワーヌが死んだことを告げた。
ベアトリスが出ていってすぐに自殺していたのだ。
思いがけない言葉に絶句したベアトリスだったが、お詫びの気持ちとしてクレールにお金を渡そうとする。
クレールは拒否するが、せめてもと、エメラルド入りの指輪を渡してきた。
かつてアントワーヌがベアトリスにくれたものだから、ということだった。
翌日の勤務後、病院の受付に花束が届いていた。
ベアトリスからのもので、メッセージカードには「許して」と書いてある。
クレールは自身が持っている菜園に向かい、花束は父の遺灰を撒いたセーヌ川に流した。
育てている作物の世話をしていると、隣の菜園を持っている男性ポールに声をかけられる。
あまり話したい気分ではなく、黙々と作業を続けるクレールだった。
一方、手術することになったベアトリスは、死の恐怖に怯えていた。
身よりもなく友人もいない彼女はクレールを頼ってくる。
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感想
真面目に生きているクレールと、いつまでも根無し草のように奔放なベアトリス。
まったく正反対のふたりの交流から「生と死」を見つめる作品です。
自殺した父親を最初に発見したのはクレールでした。
それ以来ベアトリスのことを恨んでいます。
ですが、毎日お産を助け命の誕生を目にしている彼女は、人一倍「命」を大切に考えている人に思えます。
だから一度は見捨てようとしたベアトリスのことも、結局ほっておけなくて面倒を見ます。
大病に罹り、手術後の大幅な体力低下に弱音を吐きながらも、借金してまで生活レベルを維持しようとするベアトリスとは何度も衝突しますが。
ベアトリスは、事あるごとにクレールにお金を渡そうとします。
お礼、お詫び、大変そうだから、未来のために…
名目はいろいろです。
おそらくベアトリスは「お金があれば幸せ」と考えて生きてきた人だったのでしょう。
借金や質入れ、ギャンブルなどもしながら、ちょっといいレストランやカフェで食事したり、タクシーで移動し、タバコもやめない。
クレールのコートにも「ダサいから捨てなさい」と言う始末。
“倹約” なんてものは一度も考えたことがないような人でした。
だから「他の人も “一番の幸せはお金” だろう」と思い込んでいたように見受けます。
少し、人の気持ちが分からないところがありました。
クレールがお金を受け取らないことも、大変な病気に罹っている自分に素っ気ないことも、ベアトリスには理解ができません。
だけどクレールから「ベアトリスはキスで人を幸せにする人だ」とアントワーヌが言っていた、と聞いて、幸せはお金ではないのだと気づきます。
そしてクレールに、突き返されたエメラルドの指輪とキスマークをつけた手紙を残してベアトリスは消えました。
猫のような人だな、という印象です。
身勝手で気ままで、でも可愛げもあって自由で、そして自分の死を人に見せない。
ベアトリスとの交流は、クレールにも変化を与えます。
彼女の口紅を塗ってポールに微笑みかけ、仲が進展しました。
これまで封印してきた家族写真のスライドも、ベアトリスと一緒に見ます。
そして産院が閉鎖する前日。
夜中に駆け込んできたのは、28年前に取り上げた女性でした。
難産の末、助けるためにクレールは自分の血を彼女に輸血していたため覚えていたのです。
あの時の赤ちゃんがいま大人になって妊娠し、その子もまた自分が取り上げたことにクレールは感慨深いものを感じます。
そして女性がいま産んだ赤ちゃんの名前をアントワーヌにする、と聞いて固まりました。
縁のある女性から生まれたアントワーヌに、父の輪廻転生を感じたのかもしれません。
この出来事から、ベアトリスへの恨みは昇華されたように思いました。
いろいろ考えながらもテンポよく、興味深い作品でした。
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