映画「反撥」あらすじと感想【ネタバレあり】ドヌーヴの右目に宿る狂気
ロマン・ポランスキー監督、カトリーヌ・ドヌーヴ主演のサイコ・ホラーです。
1965年公開。
「シェルブールの雨傘」と同時期で、まったく違うタイプのヒロインを21歳の若さで演じ分けています。
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あらすじ
姉ヘレンと一緒にアパートで暮らしているキャロル。
気力に乏しい彼女は、エステシャンの仕事中でも顧客から「寝ているの?」と訊かれるくらい口数も少なく内気な女性だ。
対してヘレンは活動的。
キャロルが帰宅すると、ヘレンの不倫の彼氏マイケルが来ており、ふたりはこれからデートだという。
夕食もいらない、と言われてキャロルは寂しさを募らせる。
洗面台には、キャロルのコップにマイケルの歯ブラシが差されていて嫌悪感が走った。
もともと男性は苦手だが、マイケルはとりわけ苦手だった。
そんなキャロルに言い寄ってくる男性コリンがいる。
ある日、デートのことを忘れていたキャロルに怒りをぶつけるが、縮こまって謝る彼女に怒りは鎮まり、車で家まで送る。
別れ際にキスするが、帰宅したキャロルは一目散に洗面所に駆け込んで口をすすいだ。
気持ち悪くて仕方がなかった。
同僚のブリジットが彼氏にフラれて、泣きながら男の不誠実さを訴えるのを聞いて、ますます男性への嫌悪が増した。
男嫌いに拍車がかかったキャロルに、ヘレンはマイケルとイタリアにしばらく旅行に出かける、と告げる。
頼りの姉がいなくなり、男性への恐怖と憧れの相反する心を持っているキャロルに、孤独感から生まれる妄想が襲い掛かる。
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感想
性的な妄想に悩まされるドヌーヴというと「昼顔」のセヴリーヌもそうでしたが、セヴリーヌが欲求不満から来ているのに対し、キャロルは恐怖心から来ている、という違いがあります。
欲求不満の解消のためにセヴリーヌは娼婦になりましたが、キャロルの恐怖心は簡単に解消できるものではありません。
解消できないまま孤独に入り込んだ彼女は狂気に陥り、生活自体も荒れていきました。
元々、生活能力も… 無能とまではいかなくても足りない人だったように見て取れます。
いつも姉にくっついて、頼っていたのでしょう。
用意されていた朝食も、コーヒーに角砂糖をたくさん入れて、それだけで済ませていました。
靴をポイポイ脱ぎ捨て、髪も下ろしたままなので職場の店長から「なんとかしなさい」と注意をされるくらい。
ただでさえこういう生活だったのが、孤独と恐怖で引きこもりになりました。
身なりも構わず、ずっとネグリジェ姿で過ごし、食事もついに角砂糖だけとかビスケットになります。
冷蔵庫に入っていたウサギ肉の照り焼きは手つかずのまま放置されて腐っていき、ジャガイモも芽が出放題。
そして話し合いたい、とやってきたコリンを、キャロルは撲殺してしまいます。
殺人鬼ドヌーヴ! なんか、珍しいものを観たような…
さらには家賃を受け取りに来た大家のこともカミソリで惨殺。
この映画、現在のキャロルの右目のアップから始まり (あまり瞬きしてはダメと言われていたようで、ちょっと辛そうにも見えましたw) ラストは写真に写る子供の頃のキャロルの右目で終わります。
よく意味が分からなかったのですが、コリンを何度も何度も殴るとき、大家を何度も何度も切り裂くとき、キャロルの左目は髪に隠れ、右目に宿る狂気が印象に残ります。
キャロルの本性がそこにある、というのを示唆しているのかな、と思いました。
ドヌーヴが魅せる猟奇美の世界に、怖いながらも惹きこまれるものがありました。
若い頃の彼女の美しさを最初から最後まで堪能できる映画です。
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