映画「プリデスティネーション」あらすじと感想【ネタバレあり】時空を超えた独り相撲

SF小説の大家ロバート・A・ハインラインの短編小説「輪廻の蛇」を原作にしたタイムスリップ作品です。
オーストラリアのスピエリック兄弟が監督。
主演のイーサン・ホークの他、「ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷」でもスピエリック兄弟作品に起用されたサラ・スヌーク、「チャーリーとチョコレート工場」で主人公の父親を演じたノア・テイラーなど、少数の俳優たちで回しています。
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あらすじ
ある建物の地下に仕掛けられている爆弾を処理しようとした男は、背後からの銃撃に遭い、その対処をしたせいで爆発の直撃を受けた。
苦しみながら手探りする男に、襲撃者は男の持ち物の楽器ケースを渡す。
それを抱え込んだ男は、気づくと全身を包帯で巻かれて医療設備がある施設で目覚めた。
男は時空を異動しながら犯罪を阻止する組織のエージェントだった。
彼が追っているのは「フィズル・ボマー」と呼ばれている連続爆弾魔である。
フィズル・ボマーの一大計画は、1975年3月に起こる。
ニューヨークの一区画が焼け野原になり、死者の数は1万人を超す。
未だに阻止できていないことが悔しいが、次が最後の仕事だと上司のロバートソンに言い渡されているため、残り一度きりのチャンスに賭けることにした。
人より多く時空移動をしていることで、カルテには「精神病初期段階」と記述されていることを彼は知らない。
しかしリスクは知っていた。
包帯を解くと、これまでとは全く違う顔が現れた。まるで別人だ。
最後に任務に向かう前、7年前の自分にメッセージを残す。
最初と最後の任務は重要であり、すべての任務が終点への道標となる、と。
そして彼は楽器ケースを受け取り、1970年11月6日に飛んだ。
ニューヨークの酒場で働く彼は、カウンターに座った青年と会話する。
フィズル・ボマーのせいで客はまばらだ。
青年の話が面白いかどうか賭けをして、男は青年の話に耳を傾けた。
そして青年は、自分がまだジェーンという名の少女だった頃の話から始める。
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感想
………【ネタバレあり】にしていますが、この映画、絶対ネタバレを見ずに鑑賞したほうがいいです!
すごく上手い構成で、かなり面白かった!
旬な俳優が出ているわけでもなく、話題作というわけでもない作品には、こういう掘り出し物がときどき出てきますよね~。
前半はこの元ジェーンとバーテンダー (エージェント) との会話で物語は進みます。
回想のシーンが続きますが、伏線が多いので、気づくと会話が結構長いことにびっくりしました。
興味深い話なので集中して観ていたんだけど、ふと「あれ? これ連続爆弾魔を追うSFサスペンスじゃなかったっけ?」と、サスペンスの “らしくない” 展開に戸惑いつつ、「まあ面白いからいいか」と流してしまえる。
そのくらい引きが強いです。
赤ん坊の頃に施設の前で捨てられたジェーンは、優秀だけれど周囲からは浮いてしまい、ケンカも頻繁に起こす問題児でした。
宇宙への憧れを持っていた頃に、ロバートソンのスカウトにより「スペースコープ」という場所で宇宙滞在の訓練を受けます。
同じ服装の女性たちが、昔の美容院にあった「オカマ」と呼ばれていたパーマ器みたいなゴーグルを着けて整然と立っている姿が、レプリカントのようで、レトロなSF作品のオマージュに見えます。
時代も60年代。その雰囲気が出てました。
結局、身体検査によりジェーンは脱落させられ、その後ある男性と出会って妊娠。
彼は急に姿を消してしまい、ひとりで出産しますが子供は誘拐され、実は両性具有だったジェーンの身体は出産により女性の機能を消失。
男性として生きることを余儀なくされます。
この辺がちょっと無理やり感のある部分ですが…
女性として生きてもいいんじゃないかと思うんですけど、60年代だとジェンダーフリーにあまり寛容ではなかったのでしょうか。
そんなわけで男性になったジェーンは、自分の人生を破壊した元カレを恨んでいます。
そこでバーテンダーは「何をしてもお咎めなしなら、元カレを殺すか?」と問いかけ、イエスと答えたジェーンを、二人が出会った日時まで一緒にタイムスリップ。
そこからあれよあれよと話は進み…
※この後、盛大なネタバレします。ご注意ください。
元カレも、バーテンダーも、生まれた子供も、それを誘拐したのも、さらにはフィズル・ボマーも、全員ジェーンでした。
たった一人の壮大な物語だったわけです。
タイムスリップものではよく言われる「過去を変えてはいけない。過去の自分に干渉してはいけない」というセオリーを破りまくった結果が、時空を超えた独り相撲の世界になってしまいました。
恋愛対象が自分自身というのは「究極の自愛」ではありますが… 個人的にはちょっと気持ち悪いな、と思いました (;´∀`)
そこまでナルシストに成りきれん
しかしこのオチには驚きました。
未来の自分だと分かっても「俺はお前にはならない」と言ってフィズル・ボマーを撃ち殺したバーテンダー。
しかし度重なる時空移動で精神に影響が出ている彼は、目を見開きながら頭を抱えます。
見えているものはフィズル・ボマーと同じものなのかもしれません。
より多くを救うために爆弾を仕掛ける救世主の妄想。
救いはないのですが、大どんでん返しがすごい作品でした。
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