映画「オルフェ」(1950年) あらすじと感想【ネタバレあり】
ギリシャ神話のオルフェウス物語をベースにした、ジャン・コクトー監督・脚本作です。
舞台を1950年のパリに変え、ジャン・マレーを主演に据えた現代劇になっています。
他出演者は「天井桟敷の人々」のマリア・カザレス、「居酒屋」のフランソワ・ペリエ、「悪魔が夜来る」のマリー・デアなど。
シャンソン歌手のジュリエット・グレコや、コクトー原作の「恐るべき子供たち」を監督したジャン = ピエール・メルヴィルらも顔を見せています。
あらすじ
名前のとおり「詩人のカフェ」にやってきた詩人のオルフェ。
しかし周囲となじめなくて帰ろうとしたところ、外で一台の高級車が停車した。
降りてきたのは、泥酔した若い詩人セジェストと “女王” と呼ばれている女性。
入れ違いで外に出ると、テラス席にいるカフェ支配人に声をかけられて同席する。
その頃、店内ではセジェストが暴れて乱闘になり、彼らを乗せてきた運転手ウルトビーズが警察に通報した。
警察官たちがなだれ込み、オルフェも身分証を提示する。
なおも暴れるセジェストは、警官たちの腕を振りほどいて道路に飛び出し、二台のオートバイに轢かれてしまう。
女王は警官たちにセジェストを自分の車に乗せるように要請。
そして何故かオルフェにも同乗するように言ってきた。
戸惑いながら車に乗り込むオルフェ。
病院に行くと思っていたがセジェストはすでに死んでおり、車は不可解な道を進む。
ラジオからも暗号のような、不思議な散文が流れた。
やがて広大な敷地にある館に到着。
そこで待っていたのは、ひき逃げ犯たちだった。
彼らは女王の命令に従ってセジェストの死体を運び入れる。
女王はオルフェを別室で待機させ、セジェストを起き上がらせた。
死者として蘇ったセジェストは、女王 = 死神の下僕となり服従を誓う。
そして死神とセジェスト、ひき逃げ犯たちは鏡の中に入り、その光景を見たオルフェは自分も入ろうとするが叶わなかった。
気づくと眠っていたオルフェが起きると館は無くなっており、少し離れたところにウルトビーズが乗っている車を見つける。
自宅まで送ってもらうが、心配して待っていた妻ユリディスが警察署長や気に入らない女友達と一緒にいたことでオルフェは不機嫌になる。
その後も死神に魅入られているオルフェはユリディスにつらく当たり、死神を恋い慕う一方、ウルトビーズもまたユリディスに恋をする。
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感想
オルフェウス物語からさらに話を膨らませて、四角関係に持っていっています。
オルフェと死神は両想い、ユリディスはオルフェをまだ愛し、ウルトビーズはユリディスに片思い。
死神は鏡を通って何度もオルフェの元にやってきて付きまとい、オルフェもまたカーラジオから流れる暗号に頻繁に耳を傾けて死神を恋います。
オルフェに死が近づいているようですが、亡くなるのはユリディス。
ウルトビーズが彼女の危篤を知らせても、狂言だろうと言って取り合わず、亡くなってからも特に気持ちも動いてない様子のオルフェに薄情さを感じます。
しかし本来死ぬはずだったのはオルフェでした。
手違いを起こした死神は、向こうの世界での裁判にかけられて罰せられます。
それを知ったオルフェは、ウルトビーズの案内で鏡の向こうの世界へゴー。
…ユリディスのためではないところが (; ̄▽ ̄)
向こうの世界に行ったユリディスもまた死神に服従を誓いますが、裁判官たちのほうが死神より偉いので、彼らの指示に従います。
死神とウルトビーズは執行猶予。
ユリディスは生き返りを許され、オルフェも戻れますがユリディスの姿を見てはいけない、と言われます。
元の世界に戻る案内はまたもやウルトビーズ。
ギリシャ神話や日本神話のイザナギは、黄泉の道を歩いている間だけ妻の姿を見てはいけない、だったと思うけど…
(どちらも途中で振り返って見ちゃうから真相は分からない)
オルフェたちは無事に家に辿り着いた後も、見てはいけない、という無茶ぶりになっています。
一緒に暮らしていて、そんなん無理ですわ~ (;´Д`)
この仕打ち、オルフェよりもユリディスのほうが音を上げました。
バックミラー越しに姿を見てしまったことで結局ユリディスは消え、セジェスト殺害の疑いをかけられたオルフェは、家に暴徒が押し寄せて亡くなります。
そして再び歩く黄泉の道。
死神との再会を喜び合いますが、死神はウルトビーズに頼んで時間を戻してもらいました。
オルフェもユリディスも生き返り、死神と関わった記憶を無くして夫婦として慈しみあう未来に進んでいきます。
オルフェを本気で愛したからこそ彼を送り返した死神は、涙を浮かべながらウルトビーズと共に連行されて行って終わりです。
オルフェの身勝手な態度に好感が持てませんでしたが、ロマンティックな終わり方だと思いました。
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