映画「夜の騎士道」あらすじと感想【ネタバレあり】恋の駆け引き・基本編
軽いタッチのコメディを得意とするルネ・クレール監督が、「悪魔の美しさ」「夜ごとの美女」に続いて往年の美青年ジェラール・フィリップと三度目のタッグを組んだラブコメディ作品です。
ヒロインは「霧の波止場」「落ちた偶像」などで知られるミシェル・モルガン。
ぐいぐいアプローチしてくるフィリップを軽くいなしたかと思えば、心をザワつかせて思い悩んだり…
揺れる女性心理を巧みに演じています。
それと「素直な悪女」に出る前で、まだ無名の頃のブリジット・バルドーが端役で出ています。
黒髪でまだ20歳そこそこの、あどけない顔立ちをしています。
露出度の少ない衣装なので、この後すぐセクシーボンバーとして名を馳せるとは思わなかった、という人が多かったんじゃないでしょうかね。
でもBBのセクシーさは健康的でいやらしさを感じないので個人的には好きです。
新品価格 |
あらすじ
田舎町に駐屯している竜騎兵のアルマン・ド・ラ・ベルヌ中尉は無類の女好きで知られているイケメン将校。
恋愛スキャンダルをまき散らしているけれど、誰にも本気になったことはなし。
その捉えどころのなさがまた女性たちの興味を引いて、町中の娘たちが彼に恋い焦がれ、袖にされた貴婦人たちも怒りながらも彼から目を離せない。
しかし本当は心の奥で運命の恋に巡り合うことを望んでいるアルマン。
仲間の将校たちに、自分はこれから出会う女性の心を射止める、と宣言する。
面白がる仲間たちは、1か月後に行われる大演習の前日までに達成できるか賭けをすることにした。
賭けに乗ったアルマンはさっそく行動を開始する。
赤十字主催のパーティーが催されており、仲間たちと一緒に出向いていった。
ビンゴゲームで次の景品が当たった女性を運命の相手にする、と決めて、二羽の鳥が入った鳥かごを当てた34番の女性を探す。
バルコニーにいた女性が34番の札を持っていた。
うまい具合に美女!
もう運命の相手に違いない、とアルマンは彼女に話しかけ、景品の鳥かごを取ってきてあげる、と申し出て接点を持った。
女性の名はマリ=ルイーズ・リビエール。
この町に越してきたばかりのよそ者だった。
そしてアルマンが鳥かごを取りに行っている間に、資産家のデュベルジェが彼女に近づいた。
デュベルジェはマリ=ルイーズにずっと言いよっており、結婚したいと考えている。
鳥かごを持ってきたアルマンは割って入るがデュベルジェも負けていない。
マリ=ルイーズをめぐって二人の男は火花をバチバチ散らして、周りの将校たちは面白がっていた。
一人で帰ろうとするマリ=ルイーズに、自宅まで送ると申し出るが断られる。
しかし諦めずにずっと声をかけながらついていき、帽子屋の店舗が自宅を兼ねていることが分かった。
中に入りたがるが断られてしまい外でグズグズしていると、デュベルジェが訪問して中に入っていってしまう。
アルマンは仲間に協力してもらってマリ=ルイーズの自宅に入り込むことに成功。
運よくデュベルジェも帰っていき、彼女の私室で対面し、さっそくありったけの口説き文句を炸裂させる。
中古価格 |
感想
見た目もよく女性の扱いにも長けているスマートな超絶イケメンのアルマン。
町中で行なわれる騎兵隊の行進が始まると、子供から年配まであらゆる年代の女性たちが、彼を一目見ようと通りに出たり窓から顔を出したりと、アイドル並みの人気者です。
アルマンの仲間のお屋敷で働くメイドさんも、お仕事中だけれど外が見たくてソワソワ。
先輩メイドさんが「窓からたっぷり見るといいよ」と許可してくれて、喜んで一緒に見ます。
しかし「間近では見ないほうが身のためだよ」と釘も刺されました。
そしてその夜、アルマンを含めた将校たちがそのお屋敷に集まり、お酒を飲んで陽気に騒ぎます。
メイドさんも料理やお酒を出したり下げたり忙しい。
一生懸命働いているメイドさんにアルマンは声をかけます。
いかにも男性に免疫のない純朴そうな彼女に「ここの男たちは優しいけれど、特に優しくしてくる男には気をつけるんだよ」とアドバイスしました。
お前じゃ、お前!
ともあれ、一日のうちに二つも恋愛アドバイスをもらったメイドさん。
その後恋愛上手になったのかは分かりませんが、身持ちは固くなったかもしれませんね。
どっちの言うことも正解です。
アイドルにはむやみに近づかない方がいいと思います。
ガッカリすることもあるかもしれないし、偶像視しているうちは恋愛関係になることはありません。
そして過剰に優しくする男性はたいてい下心があります。
カラダだけとは限らず、お金をもらいたいとか優遇されて美味しい思いができるかも…とか様々です。
付き合っていないのに「人として普通に持っている親切心」以上のものが見えたら少し疑ってみたほうがいいんでしょうね。
アルマンに自宅で言い寄られて困るマリ=ルイーズですが、デュベルジェが再びドアベルを鳴らして訪問してきたとき、咄嗟に窓から顔を出し、ウソをついて彼を追い返しました。
それを見たアルマンは「ウソつきは嫌いだ」とマリ=ルイーズを責めて、テーブルの上のティーカップを床に叩きつけて怒って帰って行きました。
器物損壊――!!( ゚Д゚)
しかしこれはアルマンの芝居。
翌日には新しいティーカップセットに詫び状をつけてマリ=ルイーズの元に届けていました。
まあウソつかれた当人ならともかく、見ているだけで激怒するとか、計算でやっているなと分かりましたよ。
ティーカップを贈る、も見抜けましたよ。
しかしこれ、DV男と同じじゃないですか…
思うままに怒りを発散させて女性をビビらせ悲しませ、そして優しくすることで女性を懐柔して支配する。
女性のみなさん、ワケわかめなことですぐ怒る男には気を付けてください。
大演習前に、デュベルジェの策略で2週間の遠征に行く羽目になったアルマン。
彼に本気になってきているマリ=ルイーズは、その間彼を忘れようとしたり悲しみに沈んだり、心が揺れていました。
そんなとき、デュベルジェの誘いで音楽鑑賞に来ていたのですが、終了後にシンガーや将校たちが、アルマンが女性を口説いているときの真似しているのを見てしまいます。
彼女たちの口から出るのとまったく同じ口説き文句は、全部マリ=ルイーズもアルマンから聞いたものでした。
シンガーたちはゲラゲラ笑っていますが、マリ=ルイーズはショックを受けます。
完全にアルマンの大失策です。
同じ口説き文句をテンプレとして使い回していたとは、この手抜き野郎めー!
女性も男性も、当然ひとりひとり個性がある別の人間です。
人に合わせて口説く言葉は変えるものだし、てか、変わるのが当たり前。
その人の長所を見ずに、なんとなく誰にでも言うことが出来るテキトーそのものの言葉には何の深みもありません。
それにほだされるマリ=ルイーズもバカだな~、と思いますが…
教訓です。
テンプレな口説き文句は捨てて、目の前の人のステキなところをどう相手に伝えるかに力を注いでください。
口説かれる側も、誰にでも当てはめられることを言っているのか、自分の内面をきちんと見ているのかを考えてから答えを出してください。
その誠実さが恋愛を成就させると思います。
マリ=ルイーズがアルマンを好きになるのが唐突な感じだったり、ちょっと分かりづらいところもありましたが、テンポも良くてなかなか面白い映画でした。
昔ながらの恋の駆け引き、というのを知るのにもいいかと思いますし、ラストは意外なオチになっています。
新品価格 |
他ルネ・クレール監督作品
「そして誰もいなくなった」(1945年版)あらすじと感想【ネタバレあり】
他ジェラール・フィリップ出演作品
映画「肉体の悪魔」 (1947年) あらすじと感想【ネタバレあり】
他ブリジット・バルドー出演作品
映画「世にも怪奇な物語」あらすじと感想【ネタバレあり】名監督たちの三者三葉ホラー
新品価格 |