映画「肉体の悪魔」 (1947年) あらすじと感想【ネタバレあり】
20歳で夭逝した作家レイモン・ラディゲの処女小説を、ジェラール・フィリップ主演で映画化。
フィリップの代表作にあたります。
クロード・オータン = ララが監督しました。
共演はミシュリーヌ・プレール。
ジャック・タチも端役で出ています。
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あらすじ
1918年。
休戦を喜ぶ人たちで溢れかえる雑踏の中、高校生のフランソワは思いつめた顔で人波をかきわけて馴染みのあるアパートに入る。
室内はがらんとしており、かつてこの部屋の主だった女性との思い出が浮かぶ。
戦時下でフランソワの通う高校は、校舎の一部が病院になっていた。
そこにマルトという、彼より少し年上の女性が臨時看護師としてやってくる。
彼女の母がここで働いているのだ。
着任してすぐに負傷兵が運ばれてきた。
ひとりの負傷兵の両脇をマルトとフランソワが抱えて校舎に入れようとしたが、マルトが気絶してしまう。
いきなり失敗して、母に怒られることを怖がるマルトにフランソワは明るく声をかけた。
ある日、登校中のフランソワは、パリ行きの水上バスに向かうマルトを見つける。
買い物に行くという彼女についていく。
マルトは困り顔で、実は婚約者がいることをフランソワに告げた。
ショックを受けるフランソワだが、彼女が婚約者を愛していないことは見抜いていた。
パリで楽しい時間を過ごし戻ってくると、桟橋にはマルトの母と婚約者のジャックが彼女を待っていた。
マルトの母はフランソワを睨んで牽制する。
翌日、仕事中のマルトに詰め寄ったフランソワは病院から追い出されるが、その際マルトから今夜10時に桟橋で待っている、と告げられる。
煩悶するフランソワに、事情を知った父は桟橋が見える場所まで同行。
1時間も遅れている彼をまだ待っているマルトの姿を見たフランソワだが、父に「できるだけ遠くまで連れて行って」と頼んで引き返した。
半年後、いなかで過ごしていたフランソワが新学期で戻ってくると、マルトはジャックと結婚していた。
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感想
田舎に引っ込んだ意味も甲斐もなく、結局不倫関係になる二人。
感情で突き進む姿に「若いのぉ」という枯れた感想が出てきます。
17歳のフランソワに、それよりちょっとだけ年上のマルトでは、二人とも自己制御できなくて当然か。
ジャックは軍人のため、戦地に行っていて不在です。
だから不倫し放題。
どんなに互いの父母やアパートの管理人夫婦が咎めても、激情に燃えるふたり、特にフランソワはお構いなし。
愛し合ってるのに何が悪い! という態度で… 何もかもが悪いんだよ、と諭しても絶対聞き入れないよな~。
本来若い二人の恋には「あらあら」と微笑ましく観れるものですが、不倫ではさすがに「もう会うんじゃありません!」となる周囲の大人の気持ちのほうが今となっては共感します。
そうして反対されるからより盛り上がるけど…
意地を張った姿が痛々しく、荒々しい態度を取るほどに繊細さを感じさせるジェラール・フィリップの佇まいは、彼独自の魅力になっているとも感じました。
マルトが妊娠して喜ぶ二人ですが、この先の生活基盤など現実的なことが何も見えていない危うさもあり、観ていてハラハラするカップルです。
いずれにしろ先行きが不幸でしかない彼らが迎える最後は、マルトの死でした。
彼女がお腹に宿していた子は、本当は誰の子だったのかは分からないままですが、妊娠に起因した病が死因のため、表面では見せていなかった彼女の罪悪感も遠因としてあったのかもしれません。
冒頭でアパートに入ったフランソワが次に向かった先は教会。
マルトの葬儀でした。
「平和になって最初の葬儀は女か」と失礼なことをほざく教会関係者を一喝して、静かに彼女を見送るフランソワが次に恋をするのはどんな人なのか。
ひとり残された彼の空虚な心を感じながら、なんとなくフランソワのこの先の人生は… と考えてしまいました。
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