映画「ふくろうの叫び」あらすじと感想【ネタバレあり】死を呼ぶ運命
名作映画「太陽がいっぱい」の原作者パトリシア・ハイスミスが1962年に発表したサスペンス小説の映画化です。
「いとこ同士」「美しきセルジュ」で知られるクロード・シャブロル監督がメガホンをとりました。
主演は「ボヴァリー夫人」のクリストフ・マラヴォフ、ヒロインに「スペースヴァンパイア」のマチルダ・メイが配役されています。
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あらすじ
パリでの結婚生活に傷つき、地方都市ヴィシーに移り住んだロベール。
幸い勤めている会社はヴィシーにも支社がある。
しかし元々うつ病を患っているロベールは、なかなか立ち直れずにいた。
鬱々とした日々のなか、若くて美しい女性ジュリエットの姿に心の癒しを感じるようになる。
うら寂しい一軒家に一人で暮らす彼女の庭に忍び込み、夜な夜な覗き見に精を出す。
彼女に婚約者がいることも分かった。
ある日、庭で焚き火をする彼女の前に姿を現し、ずっとストーキングしていたことを告白した。
驚くジュリエットだが、警戒心はすぐに解き、ロベールを自宅に招く。
ずっと彼女を見てきて、声も掛けたが、ロベールは彼女と付き合いたいとは思っていなかった。
婚約中の幸せを壊す気は毛頭ない。
しかしジュリエットは結婚に迷いがある上、ロベールに好意を持った。
このジュリエットの屋敷で、そして翌日のレストランで、ふたりはいろいろな打ち明け話をする。
ジュリエットは子供の頃に“死”を象徴する人物と出会った。
なぜそう感じたのかは分からない。
だけど直感で「この人に近寄ると死んでしまう」と思った。
そして翌日に弟が死んだのだそうだ。
自分で自分のことを“おかしい”と考えており、実際に先妻のヴェロニクにもそう言われているロベールは、ジュリエットのその奇妙な話を聞いて共通するものを感じた。
だが恋愛感情は湧かない。
そんなロベールの気持ちに関係なく、ジュリエットは婚約者のポールに婚約解消を告げる。
激昂したポールはヴェロニクに連絡を取ってロベールの性格や精神面などを聞き出して二人を責め立てた。
それでも現状が動かないことに腹を立てたポールは、夜の川辺でロベールを襲撃する。
返り討ちにしたロベールは、川に頭を突っ込んで気絶しているポールを引っ張りあげてからジュリエットと約束しているレストランに向かった。
そして翌朝、新聞でポールが行方不明になっていることを知る。
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感想
ロベールのような男には絶対近づいちゃいけないです。
自分からジュリエットに近づいてきたのに、彼女が本気の恋愛感情をむき出しにすると(愚か)「もう会わないほうがいい」と言って逃げようとします。
なのにポール殺害の容疑をかけられてジュリエットから「もう会わないほうがいい」と言われると、たかが一週間でまた彼女の前に現れます。
うわ~、自分勝手。いるいるこういう人(;´Д`)ウヘァ…
加えてロベールには「ひとりダチョウ俱楽部グセ」があります。
どういうことかって言うと、心の中で「やっちゃダメだ」と思っていることを、逆にやってしまうんですね。
ジュリエットに声を掛けたのも、そう。
そしてラストでは、ポールとヴェロニクを死に至らしめたナイフに手を伸ばすんです。
血まみれの手で。
「触っちゃダメだ」と言いながら、もう止まらない。
握るか?握らないか? というところで映画は終わります。
も~、完全に熱湯風呂の淵に足を掛けて「押すなよ!押すなよ!絶対押すなよ!」と言っている上島竜兵さんじゃないですか~(´Д`)
でもなんかね、分からなくもないんですよ、この心理。
やっちゃいけない、ということを、なんだかやってみたくなる。
後で厄介なことになると分かり切っているのに、堪え切れずについ…、となんだか失敗することで安心するみたいな奇妙な心理。
本当になぜこんなふうに考えてしまうのか、我ながら不思議です。
このおかしな精神がなければもうちょっと上手く人生を歩めたと思うと切なくなります。
ジュリエットが子供のときに巡り合った“死”の象徴。
ファンタジーの“死神”という存在ではなく、実際の生きた人間をそう見ています。
次第にジュリエットはロベールもそうだと思うようになりました。
そして最後はジュリエットが見抜いたとおり、ロベールは本人が意識していないところで“死”をまき散らしていました。
ロベールへの想いに苦しんだジュリエットは自殺。
嫉妬に狂ったポールからの銃撃で、無関係の医者や隣家の犬が殺される。
ロベールを殺そうとナイフを振り上げ、誤って止めようとしたヴェロニクと自分を切りつけて絶命したポール。
ヴェロニクも助かりませんでした。
なんだろう。
こういう運命の人なのかもしれません。
この点も近づいちゃいけない理由になりますが、結局ロベールが身勝手で自己中だからこういう運命になったんだと思います。
つまりやっぱり、ロベールみたいな人とは距離を置いたほうがいいってことですね。
向こうから近づいてきても、すぐに懐に飛び込むのではなく、ヤバい雰囲気を感じたらすぐに逃げられる距離を保っておきましょう。
あとこの映画、小物や装飾が何気にセンス良くて素敵です。
ロベールの家も、うつ病の人とは思えないほど綺麗。
白を基調にしていて余計なものが少ないシンプルさがオシャンテイー♪
ジュリエットの屋敷は古風な感じのものが随所に置いてあり、ヴェロニクの部屋は都会風。
ヴェロニクが持っているスケルトンの固定電話機が、レトロおしゃれ感があって気に入りました
(´▽`*)可愛い♡
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