映画「自転車泥棒」あらすじと感想【ネタバレあり】富める者と貧する者の余裕の差
ヴィットリオ・デ・シーカ監督の代表作に挙げられる名作映画です。
出演者は、主人公も含めて俳優経験のない人たちだけに絞って、リアリティのある社会派のドラマになっています。
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あらすじ
失業中のアントニオに仕事の話が舞い込んだ。
市役所が募集しているポスター貼りの仕事である。
ようやく就職できると喜ぶアントニオだが、この仕事は自転車を持っていることが絶対条件だった。
先日質屋に入れてしまいアントニオは焦るが、妻のマリアに相談すると彼女はシーツを新たに質に入れてそのお金で自転車を買い戻すことが出来た。
ポスター貼りは給料も良く手当てもいろいろつく。
家族を養えることに安堵するアントニオに、マリアは買い戻したばかりの自転車で寄り道をお願いした。
二人乗りで向かった先は、占い師のところだった。
仕事が決まったお礼としてお布施を払おうとするマリアに、アントニオは詐欺まがいのものにお金を無駄遣いすることを非難。
強引に連れ帰った。
翌日。
息子のブルーノと一緒に家を出て、路面電車の停車場で下ろした。
夜はまたここで待ち合わせて一緒に帰る約束をする。
そして初仕事なので先輩について行って仕事のやり方を教えてもらった。
一度だけやり方を見せてもらった後は別行動である。
アントニオは自分の担当場所に行き、教えてもらったとおり丁寧にポスターを貼っていく。
慣れない作業に手間取っていると、横に立てかけていた自転車を見知らぬ男に盗まれてしまう。
慌てて追いかけるが見失ってしまった。
自転車がなければ仕事ができない。
アントニオはすぐに警察に届け出をし、友人のバイオッコに頼んで一緒に探してもらう。
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感想
・・・鬱です。
世間の風はアントニオに冷たすぎます。
たかが自転車。されど自転車。
アントニオにとっては死活問題なのですが、他人にはそうではない。
必死な彼は、被害者にも関わらず、その必死さゆえに他人から攻撃され疎まれてしまいます。
警察も、自転車泥棒では「自転車てwww」とまともに取り合ってくれず、結局自分で探すしかない、とアントニオを絶望させました。
バイオッコや仲間たちと市場にいくも空振り。
すごい自転車の数…
あれだけ自転車がありながら、あの当時って鍵とかチェーンとかなかったんだろうか。
もしあったんだとしたら、盗まれたときに鍵をかけなかったアントニオも悪いのよね。
そう考えると、容疑者や容疑者のことを知っていそうなジイさんを糾弾するのは強引すぎるかも。
どんどん悪い状況になっていくアントニオですが、そうなるのは本人の振る舞いも関係しています。
この父親の姿はブルーノにも悲しく映り、彼が傍にいることで哀切が高まります。
最後には自分自身が自転車泥棒になるアントニオ。
しかしすぐに捕まり警察に突き出されそうになりますが、被害にあった男性が、泣いて縋るブルーノを見て許してやるのです。
富める者と貧する者の心持ちの差が表れています。
余裕が違う。
それを見せつけられ、仕事の継続も困難になったアントニオは涙を流します。
救いのなさに、こちらの精神もガクーーーッと落ちました。
切ない… この家族にいいことがありますように。
でもメタい話しちゃうと、アントニオが盗んですぐに追跡が始まったので「これ、この建物の中で待機しているように言われたんだろうな」と、裏側の演出プランが透けて見えてしまいました。
不自然すぎるほど出てくるのが早いんだもんw
そのおかげで少しだけ鬱から抜けられました。
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